これはどう見ても体が歪んでいる…「骨折絵」
「骨折絵」(こっせつえ) とは、デッサンが狂って キャラ などの人物の体が歪んでいる、体がねじれていたり、手足がありえない方向に向いているような 絵、下手くそな イラスト などを罵倒する意味の言葉です。 単に 「骨折」 とも、より酷いものは 「複雑骨折」 などとも呼びます。
正確なデッサン、安定したデッサンのためには、描写する対象が人間にせよ動物にせよ何にせよ、きちんと 「実物」 を見て、その骨格から構造を考えて描かなければなりません。 例えば手足の曲げも、腕はどこまで曲がるのか、足はどこまで曲げられるのかを考えれば、おのずと破綻しづらくなるでしょう。 また体をひねる時、背骨を中心として主に腰で回転するとわかっていれば、軟体生物のような変形した曲がり方はしないでしょう。
そしてこれらを念頭に置きながら、ひたすら地道な練習をする必要があります。 逆に云えば、デッサンは 「技術」 なので、地道に訓練をすればある程度の レベル には誰でも到達し、一旦身につくと安定してくるものだったりもします。 パターンが体 (腕) に染み込んで、勝手に描けるようになったりもします。
また練習以外にも、「手の長さはまっすぐ下に伸ばすと股下あたりに手首か手のひらの中心がくる」「目と耳の高さはほぼ同じ」「耳の位置は頭を真横から見て首の直上、真ん中」 などなど、人体を描く時に基礎となる体の形やパーツの位置関係のセオリーを知識としてしっかり押さえ、要所要所でチェックしておけば、そうそう破綻もしないでしょう。
しかし マンガ や アニメ の真似絵を描いているだけの人、実物ではなく、デフォルメされた他人の絵の輪郭線を表面的に真似ているだけですと、同じパターンのデッサンや構図はなんとかそれらしく描けても、ちょっとアレンジする (手足を動かす、見る角度を変える、など) と途端に破綻し、変形した体を描くことになってしまいます。
「骨折絵」 にならないためには…真似絵をやめ、地味 な訓練が大事
筆者 もまともな訓練を受けずに自我流の真似絵から入ったクチなので、描くキャラは年中複雑骨折していますが、上達しないまま癖が固定し、もういい年齢に到達した今となっては、「基礎的な訓練は大事だ…」「あの時やっておけば…」 と思うことしきりです。
この解説をお読みのまだ若い人で、「イラストやマンガ描きを 一生 の 趣味、あるいはできれば仕事にしたい」 と思われる方は、変な癖が付く前に、地道で基礎的な訓練はした方が、その後の上達がものすごく早く楽に、そしてなにより絵を描くのが楽しくなると思います。 自分の思った通りの絵が自由に描けるのは、本当に本当に楽しく、そして幸せです。
確かに 萌え っぽい画風のキャラや、いかにも 二次元 っぽい造形のキャラなどは、極端なデフォルメがされ、実物の人間の体のバランスから大きく外れている場合も多いのですが (例えば目の大きさとか)、基礎があってそれを崩してアレンジするのと、基礎がなく最初から崩したものしか描けないのとでは、雲泥の差があります。 ただし基礎的な訓練はいかにも訓練や練習といった モチーフ ばかりになりがちですし、それで絵を描くモチベーションが下がっては本末転倒です。 好きな作家の真似絵やアレンジが楽しければ、行き詰るまでそれを続けるという方法だってあります。
ともあれ、絵がうまくなりたいと本気で思うなら、筆者のように 判子絵 しか描けなくなる前に、急がば回れで頑張ってみてください ><。