ネットとは、電話代との戦いと見つけたり…宿敵は 「みかか」
「みかか」 とは、電話事業を行う会社、「NTT」 のことです。 パソコンのキーボードの 「N」 の部分がカナキーでは 「み」「T」 が 「か」 なので、すなわち NTT → みかか となりました。
最近では定額制のつなぎ放題当たり前なので、めっきり使わなくなった言葉ですが、1990年代中ごろまでは、わりとポピュラーな隠語でしたね。 また似たようなやり方で隠語を作るパターンはその後も生き残り、例えば BASIC のコマンド 「FILES」 を 「ハニリイト」、音声・音楽データの 「mp3」 ファイルをキーボードのカナキー部分を読んで 「もせあ」 としたり、数字 (電話番号など) をカナキーで書いたりする場合もあります (「1」 は 「ぬ」「2」 は 「ふ」…なんて感じ)。
こういったものは、みかか変換 とか みかか方式暗号 などと呼ばれるケースもあります。
電話代が月にウン万円…ひもじいよう…おなかすいたよう
「NTT」 の旧名称 (旧国営組織) は 「電々公社」 ですが、1985年に電々公社が民営化しNTTが発足、大幅な 「通信の自由化」 がやっと行われ、電話機の自由な購入や取替え、パソコン通信用モデムの利用が可能となると、これを契機に、いよいよ日本でも本格的な パソコン通信 の時代が始まりました (それ以前は、音響カプラという、電話の受話器部分に物理的に接続する変換機などで実験的な運用が民間などでされていました)。
この 「パソコン通信」 の時代、あるいは黎明期の インターネット の時代には、原則的に利用者はパソコン通信ホスト局のアクセスポイントへ電話を掛けて接続 (ダイヤルアップ) することになり、当然ながら接続中は電話代がかかりました。 ニフティ や PC-VAN のような全国規模の大手商業ネットの利用者なら、市内にホスト局のアクセスポイントがあったりして3分間で10円での接続ができますが、ない場合、例えば東京から北海道や九州のホスト局につなごうとすると、遠距離通話料金がかかりました。
商業ネットならこの他に時間ごとの 課金 がかかる訳で (これもまた1分間 10円とか、時期や回線速度によっては1分30円とかしました)、ちょっとアクティブに 掲示板 を利用したり チャット で遊んだりしたら、一ヶ月に課金電話代あわせて10万円オーバーなんて、わりとよくある話でした。
定額制当たり前の現代に慣れると、ちょっと信じられない感じです
後に深夜帯の ネット 向けの特別な割引プラン 「テレホーダイ」 が登場し、幾分緩和。 さらに 2000年代中ごろからのインターネットでは、電話線を使わないものもありますし、電話線を使ったとしても、料金は定額制で常時接続しても一ヶ月数千円程度で利用が可能となりました。 しかし1990年代までは、「今月はみかかに○万円も お布施 しちまったよ…」 といった愚痴が方々から聞こえてきたものです (ネット 引退 の理由が電話代といったケースも多かったです)。
ちなみに 筆者 は最高の時で、月に 12万円くらい飛んだこともあります…(T-T)。 あと、うちは昔商売してたこともあり、固定電話の回線が3つもあるんですが、減価償却のできない無形固定資産でもある加入権を廃止するのなら、とっととお金を返してください…。
音響カプラからダイヤルアップ、ISDN、ADSL、光… 「もしもし回線」
個人が電話回線などを使ってネットに接続する方法はいくつかあります。
前述したようにもっとも古いのは音響カプラ (信号を音に変えて電話機の通話口から流して通信する) で、その次にダイヤルアップ (音響カプラ同様に信号を音に変えるモデムで電話をかけて通信する、FAX などと同じ) ですが、その後も様々な方法がありました。 時系列的には、ISDN (信号をデジタルのまま TA (ターミナルアダプタ) などを通して電話線でダイヤルアップで通信)、ADSL (モデムを使い電話線で通信、上り・下り で速度差をつけて使いやすくしたもの、ダイヤルアップではなく電話線をケーブルとして使うため通話代がかからず常時接続ができる)、光 (専用の光回線を使って通信する)、Wi-Fi (無線 (ワイヤレス) で接続) などが代表的でしょう。
日本においては2000年代初めの ADSL の急速な普及によって 「ダイヤルアップ ≒ 多額の通話料」 から解放されたのがこの頃であり、地域や利用者のネットに対する取り組み姿勢などにより温度差はあるものの、2001年から2002年あたりには、ダイヤルアップ接続は一部の モバイル 接続 (外出時のノートパソコンなど) を除けばほぼ使われなくなってきました。 一方、携帯電話 (ガラケー・フィーチャーフォン) は1990年代末から普及し始め、1999年2月からは NTTドコモによる簡易的なインターネット接続サービスである 「i-mode」 も登場します。
この頃になると、ネットの掲示板、とりわけ あめぞう や あやしいわーるど、2ちゃんねる といった場では、ダイヤルアップによる接続は 「いまだに通話料を払って遅い通信をしている」「携帯電話といった割高な方法で通信している」 という古臭いイメージや、外出先でノートや携帯電話まで使って掲示板に貼りつく 「必死なやつ」 といった認識となり、こうした接続利用を揶揄を込めて 「もしもし回線」 などと呼ぶようにもなります (言葉自体はもっと前からありましたが、そもそも当時はもしもし回線しか個人の接続方法が実質的になかったので (大学や研究機関、IT 関係の企業などは別ですが)、揶揄の意味はなかったイメージです)。
筆者はパソ通時代からネットにドはまりしていたので、いずれの接続方法にもそれなりに思い出がありますが (とくに初期のダイヤルアップと ADSL は感動しました…)、1995年から2005年あたりまでのネット接続を巡る攻防は、大河ドラマにしても十分盛り上がるような気がします。