ニフティと覇を競ったパソ通時代の巨大ホスト局 PC-VAN
「PC-VAN」 とは、NEC (日本電気) が 運営 母体となっていた パソコン通信 時代の通信ホスト局のことです。 1996年に インターネット 大手プロバイダ 「BIGLOBE」 と経営統合し、現在はサービスを終了しています。
アスキーネット (ASCII net)、ニフティサーブ (NiftY-Serve) と共に、パソ通時代を強力に推進した大手商用ホスト局で、掲示板 (電子掲示板/ BBS) や 電子メール (E-メール/ メール)、パソコン用各種ソフトウェアのデータライブラリや、テーマ ごとに分かれて情報や意見交換、会員同士の交流などを図る 「SIG」(シグ/ ニフティにおけるフォーラム)、チャット (OLT/ Online Talk) や各種データベース提供などのサービスを行っていました。
1995年まで、日本最大の会員数を誇るパソコン通信ネットワークとして活躍
開設は1986年の4月。 1985年5月の 「アスキーネット」、1987年4月の 「ニフティサーブ」 開局のちょうど真ん中での開局で (同年9月には 「日経MIX」 も試験運用開始)、アスキーネット同様、当初はサービス利用は無料で時間も限られたスタートでした (1987年4月より有料化/ ニフティは最初から有料)。
SIG 第1号となる 「グローバル・ビレッジ」 が設置されたのがやや遅れて7月でしたが、この SIG はパソコン通信が先に始まっていたアメリカなどでは大変人気があり、まさに真打サービスの登場といった感じでした。 以降、様々な情報サービスと、ネット をはじめたら、まず誰でも一度は ハマる チャット などで人気を得ながら会員数を増やしてゆきました。
1990年代に入り、そもそもパソコン市場で NEC と シェア を争っていた富士通系のニフティとの事実上の一騎打ち、まさに2強の争いとなり、会員数1位のまま1995年にニフティと揃って会員数 100万人を突破。 その後ニフティに会員数を抜かれ2位となりましたが、ネットの世界で強い影響力を持ち続ける存在となっていました。
ただし1995年の 「Windoows95」 の発売と、それに伴うパソコンブーム、その後のインターネットブームを見越し、1996年には早々とパソ通事業からインターネットプロバイダ事業に転換。 富士通系のニフティが、同じ富士通系の 「インフォウェブ」(InfoWeb / 1994年6月サービス開始) と経営統合を果たしたのが 1999年6月 (発表、実際に統合したのは同年11月) ですから、時代を先取り (その一方、パソ通ユーザを切り捨て) していたと云えます。
通信操作 環境 は昔ながらのコマンドラインからコマンドを打ちこむタイプのインターフェースでしたが、他のパソ通サービス同様、パソ通ソフトを使って通信 (ログやメールの取得) の自動運転が可能で、1994年には 公式 な専用通信ソフト 「PC-VAN ナビゲータ」 も登場。 しかし衰退しつつあるパソ通を支えることはできませんでした。
なお一部業務は BIGLOBE と統合後も続きましたが、2002年3月に公式 SIG サービスが終了、名実共に 「PC-VAN」 の時代が終わりました (一部のサービスは BIGLOBE としてウェブ上で引き継がれました)。
比較的低料金で若者に人気のあった 「PC-VAN」
パソ通全盛時は、個人や グループ が無料でボランティア的に運営している 草の根BBS という小規模なホスト局が無数にありましたが、例えばメールなどはそのホスト局の会員同士でないと利用できず、こうした草の根BBS(草ネット) を活動の拠点としながら、他の都道府県などにいる知人や友人との連絡用に、全国展開している大手商業ホスト局に会員登録しているってのが、わりとポピュラーなネットの利用法でした。
もちろんどうしても連絡が取りたければ、その草ネットに自分も会員登録すればいいのですが、数が膨大だったので、知人が利用している全ての草ネットに会員登録して定期的に巡回するのは現実的ではありませんでしたし、またパソ通はアクセスポイントに電話をかけてつなぎますが (ダイヤルアップ接続)、小規模な草ネットはアクセスポイントが1つだけ (その草ネットが存在するホストプログラム稼動中のパソコンと接続している固定電話) なので、費用的にもとても無理だったのですね (北海道のユーザが沖縄の草ネットに接続すると、長距離通話料が発生してしまいますw)。
ニフティや PC-VAN は全国各地にアクセスポイントを設けていましたから、アクセスポイントのある地域に住んでいれば市内通話料金で接続ができました。 多くは接続が有料 (1分間いくらの従量制、後に定額制に移行) でしたが、メリットの方が圧倒的に大きかったですね。
ところでこの料金、ニフティに比べて PC-VAN は価格が安く、また当初から有料としてビジネス用途を積極的にうたっていたニフティに対し、PC-VAN はどちらかと云うと 趣味 用途が強いような 雰囲気 がありましたね (利用者の年齢層も低かった印象があります)。 もちろんどちらも巨大ホスト局でしたから、ビジネス、ホビーどちらのサービスもおのおの充実していましたが、ニフティで 課金 地獄 (従量制料金がかさんで支払い不能に陥る) になって、PC-VAN に移住する人も、当時は結構いたものでした。
うちのサークルの避難所も1995年頃にありました…
ちなみにこの同人用語の基礎知識サイトの運営元である 同人サークル 喫茶《ぱらだいす☆あ〜み〜》 も、最初にネット上で アニメ 「美少女戦士セーラームーン」 の FC として立ち上がったのは NiftY-Serve においてでしたが、立ち上げた初代の 主催者 が課金問題で1995年に NiftY を去り、PC-VAN 上に 避難所 としてのサブ会議室を立ち上げていたことがあります (笑)。
PC-VAN ログイン画面再現
1992年頃
PC-VAN SERVICE FROM NEC CORPORATION COPYRIGHT (C),1992 ゼンカイ LOG OUT DATE 92-01-01 TIME 10:10:01 コンカイ LOG IN DATE 92-01-01 TIME 10:20:01
*プロファイル ヲ シュウセイ シマスカ(Y,N,GW)=N ===PC−VAN=== (MAIN)
1.今週の新サービス 4/ 7 番号またはコマンド= |
1996年頃
===PC−VAN=== (MAIN)
1.電子メール 2.索引 番号またはコマンド= |
ちなみに画面は黒バックに白抜き文字ですが、実際はいろんな 色 が使えました。 また Macintosh や Windows パソコン、後の携帯電話やスマホなどのように 画像 を 壁紙 のようにバックに表示する方法もちゃんとありました。 まぁ雰囲気ってことで…。