死者が蘇る、人々を次々に襲う… 「ゾンビ」
「ゾンビ」(Zombie) とは、死者が何らかの力や 呪い などにより蘇り、人々を襲う、しばしば食い散らかすようになった悪霊・モンスター のことです。 1980年代にホラー映画のひとつとしてゾンビ映画の世界的なブームがあり、日本でもそれらが入る形で大ブームになっています。
今日のゾンビ 概念 の 元ネタ とも云えるのは、同名で世界的にもヒットした映画 「ゾンビ」(1978年/ 日本公開1979年) でしょう。 その後も 「死霊のはらわた」 (1981年/ 日本公開 1985年) といった作品は若者の間で大ヒット。 ビデオ が普及し、レンタルビデオショップなどが次々に登場する中、様々な低予算・B級のホラー映画やゾンビ映画・スプラッター映画が過去の名作や海外のインディーズムービーの発掘を通じて紹介され、言葉としても広がることとなりました。
またゾンビ概念の普及に大きく貢献した コンテンツ に、マイケル・ジャクソンが制作し世界的な大ヒットとなった 「スリラー」(1987年) の存在もあります。 狼男を モチーフ とした演出やメイクをしたマイケルが、墓場から這い出したゾンビ風のダンサーと共に歌い踊る PV も人気となり、こうした折々でブームに拍車を掛けるブーストがあったのも大きかったと云えます。
死者の復活は世界中あらゆる文化圏・宗教で見られる普遍的な テーマ のひとつですが、ゾンビの場合はカリブ海、ハイチの民間信仰 「ブードゥー教」 に源を発し、何らかの力によって死者が死体のまま蘇った姿を指します。 一般的にはゾンビに噛まれたり体の一部を食われた人間もゾンビ化し、人々の間で次々に広がるという 設定 になっています。 またゾンビ化した場合に生前の人間的な感情や思考力を保持している場合もあれば、単に人間や死体を貪り食うだけの存在になることもあります。
使いやすさから、ゾンビを使う言葉も様々
ゾンビや生きる屍といった概念はとても汎用性が高く、日常会話などにも様々に当てはめて使われるようになっています。 例えば普通なら立場を追われるような レベル の失敗やルール違反行為をしても頑として認めず、自分は悪くないと開き直ったりしらばっくれている状態、あるいは一度失脚しても何度でも蘇る姿をゾンビになぞらえる使い方は非常にポピュラーでしょう。
また コンピュータウイルス やワームに感染し、ボットネット に組み込まれて外部から操作され、ユーザーが意図しない DDos攻撃 の手先に利用されてしまうようなパソコンをゾンビパソコンと呼んだり、特定のウェブサイト (ホームページ) が ネット から圧力で消されたことで、そのページを支持する人が同じページを大量に アップ すること (ミラーサイト・消したら増える) をゾンビサイトと呼んだりもします。
一方、戦闘系の ゲーム やスポーツ、とくにサバゲー (サバイバルゲーム) などで、誰かが撃った弾が当たった (ヒットした) にもかかわらずそれを故意に申請せず、あるいは当たったことすら気づかず、それを他の プレイヤー から指摘されても スルー してプレイし続ける行為を ゾンビプレイ などと批判的に呼んだりします。
東洋・アジア風ゾンビのキョンシーも人気に
なお中国 (香港版) のゾンビとなる 「キョンシー」 も映画 「霊幻道士」(1985年/ 日本公開1986年) のヒットから広がり、後には台湾のテレビドラマシリーズ (幽幻道士) もキョンシーズとして日本でビデオ販売され、そのままテレビ放映も開始。 ホラー要素はありつつもアクションやコミカルな部分を強調した作風は子供たちの間で大ブームとなり、おでこに紙を貼って両手を前に突き出しつつぴょんぴょん跳ね歩くキョンシーごっこも流行しました。
また幽幻道士でキョンシーを退治したり導く道士として登場した凛々しく可憐な女の子 テンテン (恬恬/ 劉致 (シャドウ・リュウさん) の人気も爆発し、日本語吹き替えされた決め台詞 「天罰!」「天誅!」「昇天!」 などは流行語にもなり、ちょっとした社会現象というか、キョンシーフィーバーが生じたのは特筆すべき点です。 本来キョンシーとテンテンをはじめとする道士は別物なのですが、セットで用いられることが多く、美少女キョンシーといった概念も 二次創作 を中心に盛り上がります。
これら日本におけるキョンシーブームの影響は極めて大きく、ハロウィンなどでもアジア系のホラー衣装として高い人気を得ており、その後もある種の 定番 あるいは 萌え要素 の一つとして 認知 されています。 これはある意味本場でもある中国や台湾を凌ぐほどで、こと日本においてはゾンビの一種や妖怪のひとつがキョンシーという扱いではなく、時期によってはひとつの独立した ジャンル になっているといって良いでしょう。 これはとくに女性キョンシーの場合、日本で極めて人気のあるチャイナ服との相性が抜群だとか、前述したテンテンの影響で ロリ とも親和性が高いというのも理由にあります。