同人用語の基礎知識

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様々に転用される便利な言葉… 「モンスター」

 「モンスター」(Monster) とは、英語で怪物、化け物、怪獣といった意味の言葉です。 ごく普通の英語ですが、日本においては海外製のホラーや ファンタジー といった ジャンル の映画や小説など、様々な創作物・コンテンツ のタイトル名や作中表現などで広がり、定着したもののようです。

 当初はもっぱら欧米の怪物・化け物を指す言葉であり、日本やアジア圏 (中国など) の怪物や化け物、妖怪、怪獣、怪人などに使うケースはあまりありませんでしたが、時代を経るごとに少しずつ浸透。 ゲーム などにおいては日本古来の妖怪を和風モンスターなどと呼んだり、単に 人外 を広くモンスターと呼ぶケースなども増えています。 なおゲームにおいては、人間が操作することはなく NPC (ノンプレイヤーキャラクター/ Non Player Character) として プレイヤー が戦う敵といった扱いがほとんどでしたが、なかには仲間になってくれたり、プレイヤーが操作したり指示を与えて動かすタイプも増えています。

 語源となる 「monstrum」 は不吉な前兆や警告といった意味であり、神話や伝承などで触れられる自然災害や疫病、戦争などに対する人々の恐怖や絶望をビジュアル化したものに、その根源が見つかりそうです。 通常は悪であり、人間が抗えない巨大な力と、見るからにおどろおどろしい姿をしているのが特徴です。

日常会話で使われる 「モンスター」

 元々は日常会話で広く使われるような言葉として 認知 されるものではありませんでしたが、人気 マンガ のキャラ名に使われたり (1956年 「鉄人28号」) 特撮番組で怪獣を指す言葉として使われたり (1971年4月 「帰ってきたウルトラマン」(MAT (マット)/ Monster Attack Team)、歌謡曲の曲名に使われたり (1978年6月)、アニメ や映画などでも触れられるなどして、昭和には一般の間でも 「妖怪・化け物」 の言い換えとして急速に普及することに。 さらに RPG などのコンピュータゲームが流行る中で、経験値 などといったゲームで使われる他の言葉とともに 概念 ごと強く認知され、見た目が変な人、乱暴な人をモンスター呼ばわりするなどの使い方も発生しています。

 また怪物・化け物や鬼といった言葉が 「恐ろしい」「巨大だ」 だけでなく、しばしば 「ものすごい」「記録破りだ」「存在感がある」 といった肯定的な意味の比喩表現として使われていることもあり、モンスターもスポーツと云った分野においては ポジティブニュアンス で使われることも増えています。

 一方、1990年代末からは、企業などに理不尽な要求をする人をクレーマーなどと呼び、そのクレーマーの中でも質の悪い人たちを 「モンスタークレーマー」 などと呼ぶように。 2000年代に入ると 「モンスター〇〇」 といった云いまわしは様々に派生し、「モンスターペイシェント」(モンスター患者/ 病院や医師などに理不尽な要求をする)、「モンスター乗客」(電車内で傍若無人にふるまう)、「モンスター住民」(行政にむちゃくちゃな要求をする)、「モンスターペアレント・チルドレン」(学校や教員に自分勝手な要求や執拗な抗議を行う保護者や子供)、「モンスター社員」(会社や上司に対して無茶な要求や傍若無人な態度を取る) などなど次々に登場、流行語のようになりました。

 なかでも 同人 の世界では 「モンスターペアレント」(モンペ) は比較的よく使われます。 例えば好きな キャラ推し のタレントが作品内において思うような扱われ方がされなかったりすると、まるでそのキャラやタレントの親・保護者かのような立場・口ぶりで苦情を言い募る人をそう呼んだりします。 これは本気の場合もあれば、単なる ネタ の場合もあります。

 一方、ネット でやたらと目立とうとしたり周囲から認めてもらおうとする考え方を 承認欲求 が強すぎると揶揄する文脈でも使われ、それらは 承認欲求モンスター と呼ばれることもあります。 欲に憑りつかれて暴れまわる化け物の扱いという訳です。 こうした考え方は 掲示板 とかネットが登場する以前にもいましたが、不特定多数からの評価が容易に可視化される ツイッター やインスタグラム、ティックトックといった SNS が広がると、より先鋭化しその存在が目立つようになってきています。

もはや訳が分からない 「モンスター」 商標への異議申し立て

 アメリカのモンスタービバレッジ (旧ハンセン・ナチュラル) が2002年から販売し、その後世界中で展開している人気エナジードリンク 「モンスターエナジー」(Monster Energy/ モンエナ/ 国内はアサヒ飲料の製造・販売)。 この名称の一部である 「モンスター」 を巡る、2020年前後からの既存商標登録に対する同社の膨大な異議申し立てが話題に。

 ゲーム 「ポケットモンスター」「モンスターハンター」「モンスターストライク」 あるいはこれらの略称はじめ、同商品発売前から存在し世界的に有名な作品の登録商標にまで 「紛らわしい」 と 「登録取消し」 を求める申立てがされ、特許庁によって全てが却下されてはいるものの、世界中のありとあらゆる 「モンスター」 に申し立てを行う異常自体ともなっています。

 使用料を目的に一般名詞や流行語・ネットミーム などの文字列で片っ端から商標登録を行う迷惑行為に スクワッター (商標ゴロ) がありますが、同社の行為は一般名詞な上に自分たちより先に登場し登録され既に広く知られた商標に 「紛らわしい」 と後から異議申し立てを続ける意味不明な行為であり、「厚かましい」「目的が分からない」 との批判や疑問の声も集まっています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年4月12日)
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