螺旋状に巻き上げらえた尖ったおだんご 「ドリルヘア」
「ドリル」 あるいは 「ドリルヘア」 とは、人や キャラクター の 髪型 としては、螺旋状に巻き上げられたような 髪 の筋がついた三角柱状の おだんごヘア、あるいは先端が尖った形で顔の左右から振り下ろすような髪の房 (いわゆる 縦ロールヘア) を切削工具のドリルに喩えたものです。 菓子パンのコロネに喩えられることもあります。 一方、髪の毛の一部だけでなく、頭髪全体が螺旋状になって1つの塔のようにそびえ立っている場合は 「ヤドカリ」 とか 「巻貝」、ずっと時代を下って ギャル の世界で 「昇天ペガサスMIX盛り」 と呼ぶこともあります。
ドリルが言葉としてどのあたりから発祥したものなのかは不明ですが、個人的な感触では マンガ 「エースをねらえ!」(1973年) のお蝶夫人こと竜崎麗香の頬のあたりの縦ロールとか (後述します)、「ベルサイユのばら」 のマリーアントワネットの髪型、あるいは 鬼 の ツノ (「うる星やつら」(1978年) のラムちゃんのそれなど) からドリル呼称が広がった印象もありますが根拠は薄いです。 そもそも縦ロールは 巻き毛 呼びが多かったですし、ツノは広い意味でのヘアスタイルではあっても髪型とは云い難いですし、ちょっと弱いかなという気がします。
一方、初出や発祥はともかく おたく の世界でこれほど広く使われるようになったきっかけの一つは、マンガや アニメ で爆発的ヒットとなった 「美少女戦士セーラームーン」 シリーズの第二弾、「R」(1993年3月〜) に登場した 「ちびうさ」(セーラーちびムーン) の独特な髪型からでしょうか。
とりあえず世の男の子、とくにアニメとか特撮とかが好きな男子はドリルが大好きなので、螺旋・渦巻状の円錐は全部ドリル扱いされるものなのでしょう。 またセラムンが男性からの支持も極めて厚かったこと、ドールと特撮系のソフビ・フィギュア愛好家らの相性が良かったこともあり、かなり関わる人間が近い 属性 だったとも云えます。 ちなみにここでいうドリルは、壁に穴を空ける工作道具としてのドリルというよりは、海底戦艦とか地底戦艦とかドリルミサイルとかモグラ用途が多いかもしれません。 漢の ロマン です。
ちびうさ (セーラーちびムーン) のピンクドリル
ちびうさは、「美少女戦士セーラームーン」 シリーズに登場する主要なキャラクターの一人です。 主人公 セーラームーンこと月野うさぎと同様に ツインテール+おだんごのヘアスタイルですが、うさぎのまん丸なおだんごに比べて ちびうさのそれは尖った形をしていて表面にドリル状の筋もありました。 ファン の間ではいつの間にかみんな 普通 にドリルとかピンクドリルと呼んでいましたね。 この部分がドリルとして回転したり、ドリルミサイルとして発射するみたいな 二次創作 の 同人作品 もありました。
とりわけ当時発売されていたバンダイの着せ替えドールでは、髪の毛でありながらこのお団子部分は成形されたプラスチック製のドリルのような形状のパーツとなっていました (色はうさぎの 金髪 に対して ピンク髪)。 このあたりも髪の毛というよりは頭部に着けられたドリルみたいな印象を強める効果があったのかも知れません。
ちなみにセーラームーンのドールも途中から一般の着せ替え人形と同じようなウィッグ状の髪になりましたが、最初期のドール 「変身!セーラームーン」 は髪全体がフィギュアみたいなプラ整形のものだったりしましたね。 まぁウィッグではおだんごはもちろん、ムーンの特徴的な髪を上手く再現するのは難しかったのでしょうが。 左右のツインテールとか、細身のバナナみたいになってました。
このあたりのあれこれは、セラムンのドールシリーズが当初はリカちゃん人形やジェニーでおなじみの TOMY (現タカラトミー) に企画が持ち込まれながら 「売れるはずがない」 と蹴られてバンダイで出すことになったという経緯も関係しているかも知れません。 その後セラムンは超絶大ヒット。 ドールも売れに売れ、TOMY は女児用ドール玩具の シェア をごっそり奪われ業界トップから陥落したのは当時の語り草でした。 セラムンは海外でも大ヒットしたので、バンダイの着せ替えドールは海外版も出てバービーと戦うこととなっています。
筆者 のいる 同人サークル はセラムン放映中に パソ通 のセーラームーン会議室で生まれたサークルですので、当然のようにこのドールは仲間の何人かが手に入れ、仲間と 「どう見てもドリルだよな」「うん、ドリルだ」 みたいな話をしていたものでした。 国内版ドールはパイロット版の一部を除き全シリーズ分、海外版も主要なものはおおむね所持していたため、その他のアニメキャラドールを含めたカタログ写真集なども作って コミケ (1998年夏コミ/ C54) で 頒布 とかしてました。 発火事件があったコミケですね。
なお一度尖ったおだんごヘアやロール髪がドリルだとの認識がされると、以降はドリルっぽいというより、ドリルそのものに描かれるケースも増えています。 普通にミサイルとして発射したりもします。 ドリルミサイルというと、アニメ 「宇宙戦艦ヤマト」 でドメル将軍率いるガミラス艦隊と戦った七色星団決戦に登場するものがあまりに有名ですが、ロボット物などでもちょくちょく描かれるケースが増えたりもしています。
お嬢様ヘア定番の縦ロールもドリル
一方、顔の横からドリル状の巻き毛の房が下げられる縦ロールヘアも、ドリルと呼ばれることがあります。 いかにもお嬢様っぽいキャラに特有・定番 の髪型であり、古くは 「エースをねらえ!」(1973年) のお蝶夫人こと竜崎麗香の頬のあたりの縦ロールとか、「ベルサイユのばら」 のマリーアントワネットの髪型もそれっぽい造形です。 ウルトラシリーズに出てくるロボット怪獣のレギオノイドの手みたいな。 その後はより太く長く目立つ形に誇張されますが、こちらがどのあたりのタイミングでドリル呼ばわりされるようになったのかは不明です。 個人的には 「巻き毛 → ドリル → 縦ロール」 の順な気がするのですが、確認できません。
1980年代から1990年代にかけて、様々な美少女絵のスタイルが登場し一部が定着しますが、ツインテール部分が短めで逆円錐型の縦ロールになっているケースもあり、形状はドリルとか云いようがありません。 前述した ちびうさ あたりの影響は強そうですが、この頃はおたく・腐女子 向けの雑誌の他、パソ通 (とくに 草の根ネット とよばれる個人や小さい グループ が 運営 するホスト局) が広まったり、コミケ をはじめ 同人誌即売会 が急膨張する時期でした。
そこかしこで ローカル な おたく用語 や ネット用語 が出てきて、おおむねコミケや全国展開している商用の大規模パソ通で相互に影響を与えますが、厳密な初出や全体の流れを精密に把握するのはちょっと困難な感じがします。
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