一般人とはまるで違う価値観…「我々の業界ではご褒美です」
「我々の業界ではご褒美です」 とは、一般的な人にとっては苦痛の原因だったり嫌悪する対象だったりするものが、別の特定の 趣味、嗜好、あるいは 性癖 を持つ人、マニアにとっては、無上の喜びや愉悦の対象だったり、好物、ご馳走、嗜好品となることです。
例えば非常に分かりやすい例ですと、誰だって人から暴力を振るわれたり罵詈雑言を浴びせ掛けられるのは嫌なものでしょうが、SM におけるマゾ気質のある人にとっては、それが快感や喜びとなります。 ある人にとっては受けたくないきつい 「お仕置き」 であっても、それが別の人にとっては喜んで受けたい 「ご褒美」 になるわけですね。
また一般の人なら見たくもないグロテスクなもの、例えば排泄物などといったものや、普通は興味の対象とならない些細でどうでもよい物に異常な関心と興味を示す人 (スカトロ や フェティシズム など) も、自らの趣味や性癖を、ちょっと薄気味悪く ネタ として他人に話す場合に、「我々の業界ではご褒美です」 なんてフレーズで表現したりします。
ネット 上の 掲示板 などで使われるフレーズとしては、萌え要素 なども近い ニュアンス となりますが、「俺」 や 「自分」 などの一人称ではなく、「我々の業界」 という妙に大掛かりで信憑性があるような言いまわしで、しかも 「ご褒美」 という妙にやわらかい遠まわしの言葉遣いが、変態的 で 自虐的 でもあり、ちょっと面白いフレーズです。
2000年代中ごろから、同人誌ネタを発端としてネット上で流行語に
ネット上で使われるこの言い回しの直接の 元ネタ や発祥、発端としては、2004年に アニメ 化もした人気 マンガ、「マシュマロ通信」(山本ルンルン/ 朝日小学生新聞/ 2004年1月〜2006年1月/ アニメ放送/ 2004年4月4日〜2005年3月27日/ TXN系列) を扱った サークル 「サマーギフトくらぶ」(俊俊氏 運営) の 同人作品 の作中フレーズにあります。
この作品では、登場人物の 主人公 「サンディ」 が、おしゃべりするぬいぐるみの 「クラウド」 にお仕置きや いじめ を行うのですが、その際、それを受けるクラウドが自虐的にしゃべるセリフがこの 「我々の業界ではご褒美です」 でした。 ネットでネタとして扱われるようになったのは、この人気同人作品の登場とそれが話題になってからで、クラウドがサンディから 「電気あんま」 を食らっている時にしゃべったことから、「我々の業界ではご褒美です」 が 「電気あんま」 とセットで使われる場合もあります。
一方、似たような表現については、お笑い芸人のタモリさんが、深夜の怪番組 「タモリ倶楽部 〜FOR THE SOPHISTICATED PEOPLE〜」(1982年10月8日〜) などで、一般人が理解不能な奇妙な趣味のポイントや様式、パターンを面白おかしく解説したり強調する表現の中で、同じような言いまわしを番組中で度々行なっています (色々なパターンがあります)。
ネットで広がる 「我々の業界ではご褒美です」 フレーズの直接の生みの親・元ネタは、前述した同人作品からとなりますが、偶然似たようなフレーズがこちらでも出ていたのは、この言い回しがマニアックな世界を表現するフレーズとしてあまりにも的確だったからなのかも知れません。
派生語に 「我々の業界でも拷問です」 なども
なおこの他に似たような言いまわし、派生した言い回しとしては、「我々の世界では出世頭です」(犯罪者などを罵倒目的で擁護)、「我々の陣営では 大勝利 です」(負け続けの陣営を自称し、失敗した人を罵倒目的で賞賛)、あるいは、「我々の業界ではご褒美です」 の対義用語としての 「我々の業界でも拷問です」 などもあります。 あんまり一般的ではありませんが。