罵倒表現か、それとも最大限の称賛表現か 「変態」
「変態」 とは、動物が成長する過程でその形態を大きく変えることです。 例えばオタマジャクシがカエルに変わるなどがその代表です。 魚類や昆虫などにも見られ、単に見た目が変わるだけでなく、同じ種とは思えないほど性質ごと変化することもあります。 変態の対義語は常態 (そのまま、変わらない姿)、単に 普通 の姿と異なる場合は変体と呼びます。
一方、俗語表現としては、異常な性質や 性癖 の傾向・嗜好を持つ人といった意味で変質者や異常者、異常性癖所持者、アブノーマル、あるいは単に 18禁・エロ が好きな人、スケベな人や言動・性格を指して使うこともあります。 一般常識からかけ離れた性的な願望は変態願望や変態性欲、それに伴う行為は変態行為とか変態プレイと呼びます。
変態と変質者、あるいは異常者の違いはあってないようなものですが、前者は単に性的なことに関心があるだけでも用いられ、言葉として比較的軽く使える ニュアンス がある一方、後者はいかにも犯罪者やその予備軍だといったニュアンスが、人によってはあるかもしれません。 使いやすいのは圧倒的に前者の変態であり、日常会話でもしばしば使われるものでしょう。 強調する場合はド変態になります。
一般的にはやや ネガティブ な言葉、他者を批判したり 自虐的・露悪的 な自称で使われがちな言葉ですが、悪い言葉には 強さ があり、クソ などと同じように誉め言葉を強調するような ポジティブ な使い方もされます。 またそもそも、エロな文脈では変態はある種の尊称になると云っても良いかもしれません。
なお性的なことを軽く表現する言葉に H (エッチ) がありますが、これは変態の頭文字から来ています。 他方、変態をアルファベット表記にした HENTAI の場合、欧米では日本製のエロアニメやエロゲー、ひいては日本製のその手の コンテンツ を広く指して使うこともあります (その後 ANIME という呼び方が広まり、あまり HENTAI は使われなくなりました)。
また変態の代名詞として 紳士 があります。 これは 昭和 の時代から、変態紳士・淫乱淑女といった、相反する二つの言葉を組み合わせた言葉が作られ用いられた感覚と同じものでしょう。 同人 や ネット の世界で 「紳士向け」 と云えば、ほとんどの場合で男性の 成人向け な変態的作品、変態向けという意味になります。 とくに 露出 とか ふたなり、輪姦、ぶっかけ、スカトロ あたりの紳士率はかなりなものです。 ちなみに変態の正装は 裸ネクタイ となります。
変態と覚醒、進化と退化
ちなみに マンガ や アニメ、ゲーム などで キャラ なり モンスター なりが真の力を発揮する本当の姿になる、完全体になるといったケースを 覚醒 の他、進化と呼びます。 しかしこれらは本来は、前述のオタマジャクシとカエルの例のように変態と呼ぶべきものです。 進化は一個体中で生じるものではなく、突然変異などで生じた特定の気質が遺伝によって子孫に伝わり、環境 に適合するものとしないものとで生存競争によるふるいがかけられ、段階的に多種多様なものへ変化することだからです。
とはいえ進化も学術的なあれこれはともかく、より優れたものに変化するといった程度の意味でよく使われますし、やっぱり変態という言葉では何かとアレなのか、何らかの特殊な 設定 でもない限り、覚醒や強化といった意味で用いられるといってよいでしょう。
なお進化の対義語は退化になります。 こちらも環境に適合しない個体が淘汰される中で、その形質がその後の個体や種から長い年月を経て徐々に失われていくことを指しますが、使い勝手が良いので進化と同様に俗語表現でよく使われるでしょう。 例えば加齢などによって頭の働きが鈍くなること、能力が衰え劣化してしまうことや、何らかの窮地に追い込まれてパニックに陥り子供じみた拗ね方をする人を退化と呼ぶなどです。 この場合、退行と呼ぶ場合もあります。