たった一人を大勢で…「輪姦」
「輪姦」 とは、一人を複数人によって性的に犯すことです。 「まわし」 と呼ぶこともあります。 例えば対象が女性なら、1人の女性を複数の男性が寄ってたかって順番に性行為の対象とすることになります。 性行為の形は様々ではあるものの、一般的には 「まともな性行為の形ではない」 と認識されており、例えば英語で同様の行為を 「Gangbang」(ならず者撃ち) と呼ぶように、強制的あるいは半ば強制的なもの、1人に対する多人数によるレイプ・強姦 (凌辱) のひとつとされることも多いでしょう。
似たような言葉に乱交があります。 こちらは同じ多人数プレイでもより範囲が広く、複数の男女が入り乱れ、挿れつ挿れられつつを繰り返すような形も含んだものになります。 英語では 「Group sex」 であり、1人もしくは複数の女性と1人あるいは複数の男性が入り乱れての性行為ということになります。 その中には女性同士、男性同士の性行為なども含まれることがあります。 参加者がそれぞれパートナーを帯同しての参加の場合、パートナーを入れ替えるといったスワッピングの要素が入ることもあります。
輪姦に関連する表現は様々あり、例えば女性に対する輪姦の場合、男性側の全員が一通り性行為を終えることを1周目、その後また繰り返すことは2周目、3周目と呼びます。 まわす順番を決めるのはジャンケンが多く、原則1人ずつ交代で性行為に及びますが、2人とか3人、あるいはそれ以上が同時に性行為に及ぶ場合は多人数プレイの他、2穴責め (性器と肛門、あるいは口に同時に挿入する) や3穴責め (性器と肛門と口)と呼んだりします。
女性が画面正面に向かって M字開脚 した状態で挿入され、かつ両手で左右に立った男性の性器を手で握る、手コキ するような描写は WM みたいに表現することもあります。 このWMは、AV (アダルトビデオ) や 成人向け の マンガ などでは、輪姦における お約束 のようなポーズともなっています。
創作物では非常によく見られる輪姦
現実世界では性的暴行といった性犯罪とか、そういったプレイが楽しめる風俗店などのサービスに留まり、「参加者全員の合意の下」 で行われることが極めて少ない性的プレイの代表でしょう。 1対1の性的プレイならたいていのことはやったことがあるという人でも、さすがに輪姦をやったことがあるという人は稀ですし、それを例え酒の席であったとしてもあけすけに話せる人も少ないでしょう。 「変態 行為」 というより、無理やりやった、弱者をいたぶった、性犯罪といったイメージが強すぎ、笑える部分が皆無だからです。
一方で、創作物 (AVも含む) の世界では、輪姦はありふれた存在です。 女性の意に反して集団で犯すといったものから、女性が淫乱で誰の性行為でも受け入れる、さらには逆ハーレム状態で男どもを従えるといった描写の場合もあります。
輪姦から恋愛感情といったものを感じることは難しく、あくまで性行為のためだけの関係、相手を性的欲求のはけ口としてのみ使ってモノ扱いしているという印象から逃れられません。 創作物としてならまだ楽しめる余地があるかもしれません (例えば男性なら、作中の男性にではなく大勢に犯される女性の側に 感情移入 して被虐的な快感を覚えたり)。 しかし現実世界においてはドン引きだしおおむね嫌悪や軽蔑、胸糞 の対象でしょう。
というか、男性の場合、仮に女性側との合意があり、むしろ女性側がそれを求めているのだとしても、目に見える性交の結果である射精や 精液 の存在は大きく、「他人の精液がついた穴に自分のあれを挿れたくない」「触れたくもない」 という人がたぶん圧倒的に多いでしょう。 これは目の前で他の男のアレでフェラチオをしたり口内射精や ごっくん をした女性とキスはできないのも同じでしょう。 というより、自分のアレを口でしてもらった後にキスするのも嫌悪感があるという男性は少なくないです。 なお口内射精した後にキスをして、自分の精液を女性の口づてに飲むことは逆ごっくんと呼んだりします。 このあたりは例え創作物であっても キモイ、生理的に無理 という人が多いでしょう。
性的欲求の発散というより、仲間内でのマウント的な
現実世界における性犯罪としてのそれも、不良やヤンキー、ヤリサーといった同質性の高いならず者の集まりの中で、自分はこんなに酷いことを平然とやってのける男なのだといった虚勢を仲間に対して張ったり、同じ悪事を共犯として 共有 することで仲間意識を高めるなど、性行為でありながら実際は女性の身体を利用して仲間同士の序列争いや絆を深めるのが目的となっているようなケースが少なくありません。
この場合、むしろ男性の間でためらう男性に女性とのセックスを強要するようなケースさえあります。 「俺たちみたいにその女をヤって仲間の証を見せろ」 という訳です。 こうした人間関係はホモソーシャル (同質性の高い集団) あるいは身も蓋もないドライな云い方ですが、「同じ穴の狢」「目くそ鼻くそ」 ということになるのでしょう。
輪姦は、まわされる女性も嫌でしょうが、まわす男性も前述の通り強い抵抗感があって嫌だと感じることが多いものです。 それでも輪姦に参加するのは、こうしたならず者の仲間がいたり、その集まりに参加していることを意味します。 性の形は個人の自由ではありますし、合意があればその形に上や下はありませんが、被害者になるにせよ加害者になるにせよ、人生で一度でもそうした状況にはならないようにしたいものです。
個々人の尊厳や民族的な誇りを踏みにじるための輪姦
現代にあっても言葉の裏に暗く悲惨なものを感じる輪姦ですが、歴史上の出来事を振り返ると、その残虐性や規模は想像を絶するものがあります。 戦時には老若男女問わず尊厳や人権は踏みにじられるものですが、女性の場合のそれは強姦や輪姦であり、単に戦争によって倫理観を喪失した兵士個々人の不祥事や犯罪であるだけでなく、時には軍や国家ぐるみで敵国の王朝や民族の尊厳を踏みにじり破壊するために奨励されることもあります。 これらは近現代の戦争にあっても同様の行為が多かれ少なかれ見られるものですが、とりわけ中世から近世あたりのそれは、残虐性といい規模と云い、想像を遥かに超えるものがあります。
敗れた側の女性がその場で凌辱されるのは当たり前で、さらには戦利品として連れ去られて 性奴隷 として死ぬまで慰み者にされる、それを管理するための組織が作られることもあります。 有名なのは女真族によって滅ぼされた北宋の皇族女性や女官をはじめ、平民らも含めた女性を管理するための洗衣院があります。 金王朝における官設の売春宿 (妓院) であり、1万人以上もの高貴な女性や美女が連れ去られ、女性たちは毎日悲しみの涙で髪を洗うとまで表現されています。
これは単に兵士らの娯楽として提供されるだけでなく、敗れた北宋に徹底した屈辱を与えるために行われたものでした。 もちろん男性の方にも見せしめとして残酷極まりない拷問や処刑が行われ、あるいは 奴隷 として死ぬまでこき使われ命を奪われています。
屈辱を与えるという意味では、その金王朝を滅ぼしたモンゴルによる過酷さも良く知られています。 金王朝が北宋にしたように皇族女性や女官らは連れ去られモンゴル兵によって凌辱されつくしましたが、連れ去る際に家畜用の荷車に詰め込む、滅亡前の実質的な最後の皇帝 (前皇帝) の妃であった皇后は散々凌辱されたあげく、その様子を 絵 に描かればらまかれるなど、威光や尊厳を奪うためにありとあらゆる非人道的な行為が行われています。
男性のようにその場で拷問の末に殺されるのと、女性のように性奴隷として凌辱の限りを尽くされるのとどちらがマシかと云う問いは、無意味なものでしょう。 どちらも苦しみ抜いて結局は死ぬだけで、苦しみの種類と死ぬまでの時間がほんの少し違うだけの話です。
こうした蛮行は洋の東西を問わず行われていますが、異民族によるそれは過酷なものになりがちで (民族や宗教が違う上に縁戚関係などもないので遠慮がない)、日本の戦国時代の蛮行の数々が生ぬるく感じるほどすさまじい規模や内容のものが多いです。