やさしさ、配慮がネタバレを生む… 「やさしいネタバレ」
「やさしいネタバレ」 とは、本来は避けるべき ネタバレ だけれどそこに優しさがあるもの、何らかの理由で特定の作品に手が出せない友人などに、見る前に 「心配しなくて良い」 と安心感を与えるような思いやりのあるネタバレのことです。 広義の 間接ネタバレ の一種でもあり、配慮ネタバレ、トラウマ回避・地雷回避ネタバレみたいな言い回しになることもあります。
例えばやたらとシリアスでシビア・深刻な物語なのだろうと予想される人気作品があったとします。 作中の キャラ が死んだり犯罪に巻き込まれる、事故や 病気 などで 不幸 な目に遭うと云った 鬱展開 が予想されるような作品です。 人気作だから見たいけれど 感情移入 したキャラが死ぬのは辛いと感じる人もいますから、こうした作品は 「重そうだ」 と躊躇する人もいるでしょう。 その場合に 「大丈夫、誰も死なない話だから」 と、物語の核心部分に触れない形でその友人の心配の種を取り除くようなネタバレをするのがこれに当たります。
戦争ものとか闘病もの、あるいは動物もの、感動ものなどは、時として 主人公 や重要な登場人物があっさり死んだりします。 それによって感動が得られる場合もありますし、作中でキャラが死ぬことそれ自体が必ず不幸だという訳ではないのですが、気分が落ち込んでいる時、心理的に負担がかかっている時などは、「わざわざそんなの見たくない」 という人もいるでしょう。 あるいは一般的にはそれほど不幸な描写ではなかったとしても、個人的なトラウマに運悪くぶち当たってしまうような筋書きの場合もあります。
もっとも人の死などはそれなりに重いものでもあるので、重要人物の生死をわざわざ作品で取り扱うのなら、そこに物語の核心部分と密接に関係するものがあるケースも多いでしょう。 結果的にただのネタバレになってしまうこともあり、このあたりの判断はそれなりに考えた上でのケースバイケースになるのでしょう。
東日本大震災報道を通じ、メディアでも事前の注意喚起が浸透
親しい友人同士での、お互いの性格や好み、身の上を知った上での 「やさしいネタバレ」 は 布教 などの際にも事前に 地雷 を避ける意味で考慮されて行われることはありました。 しかしその後、創作物であっても過去の記憶がよみがえって心理的に大きな負荷を与えるフラッシュバックの発端になりかねないという配慮が社会的に広がると、個人間のやり取りだけでなくメディアの側でもこうしたネタバレが一部で行われるようになっています。
フラッシュバック対策がされる表現としては、性犯罪や いじめ、罵倒や暴言の他、自動車事故やその他の犯罪、あるいは 2011年3月11日に発生した東日本大震災とその報道を発端にした地震や火災、津波の表現や映像があります。 時代を下るにつれメディアなども 「人の怒鳴り声や叫び声が流れます」「一部に遺体の映像が含まれます」「津波の映像が流れます」 といった、放映前の注意喚起がこの頃からよく行われるようになっています。