未来的な響きになったり安っぽかったり… 「ケロケロ声」
「ケロケロ声」(ケロ声) あるいは 「ケロケロボイス」(ケロボ) とは、人の声を電気的・機械的に変調・補正して作ったロボットっぽい声や人工的な声、個性や感情があまり感じられない声、あるいはそうした音声による歌声を指す言葉です。 一般的にはやや高い音域で、音声の一部がひっくり返るようにコロコロと変化する音声をそう呼ぶことが多いでしょう。 ロボット声とかロボ声みたいな呼び方をされたこともあります。
音楽の世界で音声エフェクトのひとつとして使われたり、歌唱用の音声ソフトウェアによる歌唱や無理矢理会話させた際の声質で使われたり、あるいはボイチェン (ボイスチェンジャー) を用いた声作りで使われることもあります。 素の人声に比べると無機質でクール、あるいは音域によっては可愛らしさとか未来的な響きだと感じられます。 ポジティブ な受け取られ方もされますが、「個性がない」「声が裏返る」「安っぽい」 みたいな ネガティブ な意味で使われることもあります。 この場合は、「(声が) ケロる」「ケロった」 みたいに表現することもあります (後述します)。
電気的・機械的な音声変調は、アニメ などでロボットの音声として用いられるケースが昔からあります。 デジタル機材による電子的な変調ができない時代はアナログで音声の周波数を変えたり、録音テープの早回しなどで調整していました。 一般のお遊び用としては、カラオケ のための機材に搭載されていたり、声を変えるマイクのような商品も出ていました。 ヘリウムガスを吸い込んで声を変えるなんて方法もあります。 これらはあくまで遊びや 趣味 であり、商業 の世界では、アニソン やコミカルな楽曲、電波ソング で使われたり、せいぜい実験的な歌声変化の一部に用いられるケースが多かったでしょう。 その後新しい表現方法としても注目を集めますが、現在のようなケロケロ声が本格的に広がったのは、電子音楽が広がった比較的近い時代になってからでしょう。
なお変調した結果、声の音色が変わるものとして、ガビガビ声とかキンキン声などがあります。 いずれも素の声の特徴として使われる他、変調などをやりすぎた際の不快な音色の比喩として用いられ、それぞれ 「ガビった」「キンキンする」 みたいに表現します。 モゴモゴとこもるような聞き取りにくい声は 水中 と呼びます。
音楽の世界におけるケロケロ声
ケロケロ声の歌で、ある年代以上の日本人が真っ先に思い浮かべるのは、1967年12月にリリースされたザ・フォーク・クルセダーズの メジャー・デビューシングル 「帰って来たヨッパライ」 でしょう。 グループ解散を記念して自主制作した音源がラジオで流され話題になりメジャー発売後に大ヒットしたもので、同 グループ の代表曲であると同時にオリコンチャート史上初のミリオン・シングルにもなっています。 早回しによる独特な歌声とぶっとんだ歌詞は、日本におけるコミックソングや アングラ な楽曲がヒットしたものの代表作ともなっています。
ちなみにこの頃の音楽はその多くがレコード盤で発売されていましたが、シングルとアルバムでは回転速度が異なっていました (一般にシングル (EP) は 45回転 (45RPM)、アルバム (LP) は 33回転 (33RPM)。 ポータブルの安いレコードプレイヤーはシングルとアルバムの切り替えを手動で行うものが多く、アルバムをシングルのスピードで再生すると早回しとなりケロった声になります。 この時代に子供だった人はこのイタズラをしたことがある人が多いような気がします。 出来合いのケロ声だけでなく、子供がケロ声を作れる 環境 でした。
一方、おたく に近いところでは、1990年5月に発売された あんしんパパこと実川俊晴さんによる 「はじめてのチュウ」 があります。 オープンリールによる録音テープの速度調整などで独特のケロケロ声を作った同曲は、アニメ 「キテレツ大百科」 の4代目オープニング曲として採用され (その後 「すいみん不足」 の OP曲採用に伴いエンディング曲に移動)、当時のアニソンとしては記録的なヒットとなっています。
音楽におけるケロケロ声利用の世界的な成功例としては、アメリカのアーティスト Cher (シェール) さんが1998年に 「Believe」 で歌唱の一部で使ったのが最初の成功例とも呼ばれています。 ヨーロッパで先行リリースされた同曲は大ヒットし、アメリカをはじめ各国でヒットチャート一位を獲得。 同年には初めてのグラミー賞 (最優秀ダンス・レコーディング賞) にも輝いています。 その後 他のアーティストにも広がり、ある種のエフェクトのような扱いとして定着します。
現在の日本においてもっともよく知られる存在は、1999年に3人組の女性アイドルグループ (広島の ローカル アイドル) として結成し、2007年から2008年にかけてブレイクしたテクノポップユニット Perfume の歌声でしょう。 2005年にそれまでのアイドル路線から現在のイメージに一新してメジャーデビューし、「リニアモーターガール」「コンピューターシティ」「エレクトロ・ワールド」 の通称 「近未来3部作」 から少しずつ知名度を高め、動画サイト ニコニコ動画 (ニコ動) をはじめ一部ではカルト的な人気と ファン を獲得。 4枚目のシングルとなる2007年2月14日の 「チョコレイト・ディスコ」 が大ヒットし、未来的な PV ともども話題となり、一躍時の歌声となりました。
初音ミクの登場とバ美肉のケロケロ声
なお Perfume の大ブレイクと時期を同じくする2007年8月31日には、DTM (デスクトップ ミュージック) 用音源ソフトウェアとして 初音ミク も登場。 こちらもニコ動を中心に一気に盛り上がります。 元々初音ミクは音声合成のためケロケロしがちではあり、いかに人声っぽく調整 (調教) するかの技術的なチャレンジもされていましたが、逆にケロケロボイスを活かした楽曲も多数つくられ、人気となります。
ケロケロ声自体、聴く人によってかなりの好き嫌いがあるので一概には云えませんが、人の声、エフェクトを利かせた人の声、そして合成音声と人の声に似せた合成音声と、「歌い手」 のバリエーションが一気に増えたのはこの時代の大きな特徴でしょう。 音楽は歌のありなしで ジャンル が区別がされるものですが、人の声は最高の楽器だとも呼ばれますし、人声の調整なのか合成したものなのか、あるいはケロケロしてもしてなくても、これからの音楽には欠かせない音色のひとつとなっていくのでしょう。
なお 2017年に 2D や 3D の CG で描かれた キャラクター (アバター)を用いて 動画 の制作や 生配信 を行う VTuber が人気となると、男性がボイチェンなどを用いて女性っぽい声を出す バ美肉 も人気となります。 この際、ボイチェンの調整によってはケロケロ声になりがちなため、それを揶揄する使い方もあります。 一般的にはなるべくケロらないよう自然な声への調整を目指すことが多いのですが、いっそ可愛らしくケロらせて近未来キャラっぽい味付けにしたり、性別不詳キャラとして個性付けに用いられることもあります。
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック
