感情移入を妨げると嫌う人も…「メタ発言」
「メタ発言」 とは、創作物の キャラクター などが、そのキャラの立場や 設定 では本来は知り得ない事実を元に、できるはずがない作品全体の傍観者、俯瞰者、あるいは作品から飛び出した超越的、客観的な発言をすることです。 「メタ」(Meta) とは、「高次の」「超える」「後から」「含まれる」「変化する」 などといった ニュアンス を持つ言葉ですが、そうした立場 (メタポジション) からのセリフということになります。
具体的な例としては、漫画 の登場人物のキャラAが、「何よこのダサい服、手抜きじゃないの?」 と喋ったら、キャラBが 「作者 だって寝不足で大変なのよ…それに露出度高い方が 読者 も喜ぶし」 と答える、なんていった感じでしょうか。
本来その漫画に登場する人物は、その漫画で描かれる世界の中の住人のはずです。 しかしこの例では、「自分は漫画の登場人物であり、自分のいる世界の外にそれを描いている作者がいて、作品を手に取る読者もいる」 というのを知っていて、読者にセリフで語りかける内容となっています。
また煽りコピーの一種として、「応援よろしく」 とか 「来週に続く」「映画も見てくれよな」 などと、キャラが作者や雑誌編集者のようなセリフを代弁する場合や、読者から届いた ファン レターを作品中で読む場合もあります。 こうした内容のセリフは、作品の中のストーリーに影響を与えるものではなく (例外もあります)、一種の作者のお遊び、楽屋の ネタ のギャグのようなものです。
しかしタイミングや使い方を誤ると、せっかくその作品の物語に没頭し、世界観 に浸っている受け手が 「創作物である」 のを改めて強く再認識し、場合によっては 感情移入 を スポイル して覚めてしまう原因にもなります。
メタ発言をもっぱらとする役割のキャラも
作品のストーリーから離れて読者や視聴者、プレイヤー の 「道案内」 をするようなキャラクターもいます。 例えば ゲーム などで、「ここで セーブ しますか?」「操作が分からない時はAボタンを押して」 といったセリフを喋る役割のキャラです。 プレイヤーはゲームの世界観に浸って楽しんでいたのに、その登場キャラが 「セーブしますか?」 では、作りもののゲームであるのが再認識され、白けてしまう場合もあるでしょう。
こうしたことがないよう、作品によってはゲーム本編に登場するキャラとは別に、システムの案内をするだけのキャラクターが設定として別に作られたりする場合もあります。 まあ ゲームオーバー などで、作品の 主人公 (プレイヤーが操作しているキャラ) がゲーム内で死んでしまったのに、ヒロイン が悲嘆もそこそこに笑顔で 「コンティニューしますか?」 では、萎えてしまうのはわかります。
「回想」「回顧」 の場合のメタ発言
なお 「回想録」「回顧録」 のような形式の作品では、語り部となる登場人物が物語の全てを知っている形で、読者に語りかける場合もあります。 この場合も 「メタ発言」 とされる場合がありますが、こちらはあくまで 「作品世界の住人が、過去を振り帰って読者であるあなたに語りかける」 という形なので、受け手側の感情移入を妨げることもあまりなく (むしろ感情移入しやすくもなります)、無難で効果的なメタ発言ともなります。
ただし弁士や解説者のように、物語のフレーム (立ち位置や時間軸) から外れて 説明するためのセリフ を発する場合は、多くの場合でメタ発言となります。 これはナレーターや文字によるテロップ解説などと同等の扱いと云えますが、弁士や解説者の存在感を高め、本編のキャラを関りを持ったり、本編の展開に一定の影響を与えるケースもあります。