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なんて豊かな音色…手軽に音楽が楽しめる 「MIDI」

 「MIDI」(ミディ/ みじ/ みじぃ) とは、音楽の演奏データの転送・共有 するための規格のひとつです。 電子楽器で演奏するためのデータで、MIDI規格協議会 (JMSC/ 後の 社団法人音楽電子事業協会)と MIDI Manufacturers Association (MMA) によって仕様が策定され、1981年に公開されました。

 一般に音楽のデータは容量が大きく、とくにパソコンと ネット を使って音楽データを利用・やり取りするためには、記憶媒体の容量による制限、通信速度や再生するための機器の性能など、様々な問題や課題がありました。 そこで音楽データそのものをやり取りするのではなく、音楽の演奏データの形 (シーケンスデータ/ 音源そのものではなく、いわば音符記号だけのデータ) でやり取りすることが考えられました。

 例えばコンピュータで ゲーム の音楽を鳴らす場合、小さい容量の記憶媒体に巨大な音楽データは入らないので、演奏のデータだけを記録させ、ゲームが稼働するパソコンにデータを演奏・再生する電子楽器 (アナログやデジタルの音源/ サウンドモジュール) を取り付けて鳴らすようにします。 こうすれば、同じ規格のデータであれば、異なるゲームでもほぼ同じ 環境 で手軽に、しかも一定の水準以上の品質で音楽を鳴らすことができるようになります。

 パソコンも初期の頃は音を出す機能がなかったり、あってもブザーのようなピープ音だけでした。 その後 PSG音源などが搭載されるようになり、規格に沿ったデータであればパソコンで SE (サウンドエフェクト) や音楽を楽しむことができるようになりました (ちなみに 筆者 が最初に買ったパソコンは NEC の PC-98 でしたが、音はビープ音だけで、FM音源である 86音源ボード (PC-9801-86) を挿して使っていました)。

電子楽器とリズムボックスとリズムマシンと MIDI

 なお MIDI が登場する以前にも、演奏データの形で音楽を奏でる考え方や機器は存在しています。 極論すれば人が音楽を奏でるための楽譜がそうですし、オルゴール (自鳴琴) やオルガンにも演奏データを記録した 円盤 や円筒を交換することで自由に音楽を奏でるものがたくさんあります。 MIDI はこれらアナログなデータを規格化して 電子化 したものと云えます。

 電子楽器自体も1748年に電磁石を利用したデニスドール (Denis d'or) と呼ばれる電子楽器がプロコプ・ディヴィシュによってチェコで制作されて以来、様々なものが昔から存在します。 日本では、その独特の音色と世界初の電子楽器との触れ込みで広く知られているテルミン (Терменвокс/ 1920年/ レフ・テルミン) がとくに有名でしょう。 ちなみに1960年代にエレキブームと呼ばれるほどの大流行を巻き起こした楽器にエレキギターがありますが、こちらは電子回路を使わない電気回路を使った楽器であり、あくまで電気楽器と呼ばれる楽器となります (対義語として旧来の楽器はアコースティックと呼ばれるように)。

 1964年になり、オーディオに関する技術者・研究者らによる国際組織 AES (Audio Engineering Society Inc.) のコンベンションで初めて公開されたモーグ・シンセサイザーの登場と普及により、本格的な電子楽器の時代が到来。 ドイツのクラフトワークやタンジェリン・ドリーム、イギリスのエマーソン・レイク・アンド・パーマー、イタリアのジョルジオ・モロダー、日本の冨田勲や YMO といった世界的アーティストが多数登場し、ポピュラー音楽やダンス・クラブミュージックなどと結びついたシンセポップ (テクノポップ) という新しい ジャンル を生み出すとともに、斬新で未来を感じさせるシンセサイザーとコンピュータを駆使した音楽が一世を風靡することとなりました。

 こうしたブームの中、個人でも気軽に手にできる安価なシンセサイザーなどの電子楽器も次々に登場。 なかでも1980年に発売された伝説的名機とまで呼ばれるローランド (Roland) の TR-808 (ヤオヤ) は、単に登録されたリズムパターンを選ぶだけの機器がほとんどだった時代に、自らリズムパターンをプログラミングできる電子楽器として登場、その独特な音色と15万円という比較的手軽な価格もあり、出荷数こそ少ないものの音楽シーンに絶大な影響を与え、とくダンス・クラブミュージックの世界を席巻することとなりました。

 この頃から、当初は物珍しさと 「ピコピコサウンド」 などと揶揄されることもあったシンセサイザーや電子楽器が、その他の楽器と同じ楽器のひとつ (打ち込み楽器) として一般にも広く 認知 されるようになったといって良いでしょう。 また同時期に世界的ブームとなっていたテレビゲームのサウンドなどとの相互作用も、一般への訴求に対し影響力が大きかったと思います。

 当時日本は任天堂や SEGA の存在もあり、世界のテレビゲーム市場を強力に牽引する存在でしたし、1990年代末頃から登場した電子楽器で作られる カラオケ の伴奏曲や携帯電話の着信曲 (着メロ) の存在 (いずれも日本発祥) もあり、電子楽器の音色に老若男女問わず世界でもっとも触れまくる時期でもありました。 こうした部分は、その後多少の停滞を挟みながらも、ほぼシームレス・右肩上がりに2007年の 初音ミク などボーカロイドを中心とした DTM の発展につながっていきます。

「標準音源」 とも呼ばれたローランドの SC シリーズ

 その後も、様々な音源が次々に登場。 なかでも 1991年に発売されたローランドの SC-55 は、317種類もの豊かな音色を持ち、同時に16もの音色が使用可能で (16チャンネル)、最大で24の発音ができる高性能でありながら、価格は69,800円と安価なものでした。

 また前後して発売された 「ミュージくん」「ミュージ郎」 と呼ばれる MIDI データ制作用のソフトと機器が同梱されたパッケージ製品はさらに割安感と導入しやすさがあり、データ制作者も増加。 DTM (デスクトップミュージック) の裾野を広げるとともに、「MIDI = SCシリーズ」「標準音源」 のような圧倒的な存在感を持っていました (他にも MT-32 などもありましたが、こちらもローランドの音源です)。

 パソコン通信 (パソ通) のライブラリの他、インターネット が普及し始めると ホームページ などでデータを公開したり、DTM の ファン が集うコミュニティーやライブラリ・サーチエンジンサイトなども登場。 「EternalWind」 さんや 「COMPUTER MUSIC CENTER」さん、「MUCC」(Midi Users and Composers Community) さんなどは、ファン同士の交流や情報交換の場ともなっていました。

視聴環境の多様化と、JASRAC による、いわゆる 「MIDI狩り」

 2000年代も近くなるとパソコンの性能も上がり、また記憶媒体の用量も大きくなり、データの遠隔転送についても ISDN や ADSL などの登場により通信速度の改善が図られるようになります。 特別な音源を用意しなくても音楽データを音楽データとしてやり取りできる環境が 整う とともに、MIDI データのやり取りや音源はマニアックな 趣味 のものとなりつつあります。 ただし名機と呼ばれるような特定音源の個性豊かな音色が好きで癒される人もいるなど、一定以上の 需要 をまだまだ持っているといって良いでしょう。

 その後、JASRAC による MIDI データ配布に対する様々な規制や働きかけ (いわゆる 「MIDI狩り」、ただし JASRAC のやり方に批判は多かったですが (誤請求も多かったですし)、著作権 との兼ね合いもあり、仕方がなかった部分もあります)、パソコンやハードウェアが多様化して MIDI データを求める人が減ったり、作成し発表する人の負担が大きくなったことなどもあり、徐々に衰退することとなりました。

 なおこの用語集サイトを 運営 するうちの サークル には、MIDI を作る人が何人かいて、もっぱらセーラームーンの楽曲やクラシック音楽が主でしたが、「レコンポーザ」(絶大な人気を誇った DTM 用のソフト) などを使って様々なデータを作成し、パソ通のライブラリで公開したり (バイナリデータのやり取りができなかったので、ish というバイナリ−テキスト変換ファイルにして掲示板で配布したり)、コミケ で 「MIDI集」 として、当時まだ珍しかった CD-ROM での 頒布 を行っていました。 サイトにも MIDI館 というデータライブラリのページがありましたが、JASRAC 問題などもあり、この頃削除しています。

 ちなみに筆者もサークル仲間などに影響され頑張ってデータ作成にチャレンジしたものの、全くダメで諦めました。 もっぱら友人らの作ったデータを聞いたり、ゲームで音楽を鳴らす程度の使い方しかできませんでした (いわゆる 聴き専)。 音源はサークル仲間に連行されて 秋葉原 のソフマップで云われるがままに購入させられた SC-55mkII (1993年) と、その後にこれまたサークル仲間に譲られた SC-88VL (1996年) を PC-9821 Ap3 で使ってました。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年10月21日)
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