サイトや作品をジャック…? 「乗っ取り」
「乗っ取り」 とは、他人の創作物やウェブサイト (ホームページ) などを文字通り乗っ取ること、あるいは自分が作ったものであるかのように振舞ったり、無断転載などにより 作者 が得るべき利益や評価を奪ったりすることです。
言葉の使い方は色々あり、「まるで乗っ取りだ」 的に比喩として使う場合もあれば、字義通りの アカウント や サークル、コミュニティの乗っ取りもあり、指し示す範囲はかなり広大です。 ただしいずれの場合も、「自分のものではない創作物・著作物」 を、何らかの自分の利益のために利用する点は同じです。
なりすまし、作者標榜としての 「乗っ取り」
もっとも多いパターンは、他人の イラスト や 絵、文章の ネタ などを無断転載するなどし、「自分がこれを描いた」 などと自称するパターンです。 また他人のウェブサイトを 「あれは自分が作ったもの、運営 更新しているもの」 と自称するケースもあります。 同人 の世界では 自作発言 とか 騙り・オフ騙り と呼ぶこともあります。
こうしたなりすましは、見る人が見れば容易に発覚しますし、作者が見たら 「ふざけるな」 ですが、場合によっては 「このイラストは私が描いたことになっているので、オリジナルのイラストは削除してください」「このサイトは私が作ったことになっているので、次はこういう更新にしてください」「これから私が更新するのでIDと パスワード を教えてください」 などと、自分のなりすましに協力するよう オリジナル の作者にお願い (もしくは命令) する場合もあり、そのあまりのぶっ飛びぶりに驚く被害者もいるようです。
これが行き過ぎると、IDとパスワードを盗みだして本当にサイトを奪い取ったり (ネットの外でも知り合いで、リアルで被害者を追い詰める場合もある)、不正アクセスによる犯罪行為に発展してしまう場合もあります。 またどうしても ログイン 情報が盗めない場合は、その作者の名前と紛らわしい名前、あるいは同じ名前でアカウントを作り、「こっちが本物のアカウントです」 などと主張する場合もあります。
ここまで強硬なものは、なりすましている人がまともな人でない可能性もあり (単に異常に自分勝手な子供の場合もあります)、被害者はその対応に疲弊し、なりすましと縁を切るために自分の作品を取り下げたり、そうした世界から消えてしまう場合もあります。 その後はなりすましがその作者に取って代わることとなってしまいます。
作者は自称せず、単に無断転載するだけの 「コンテンツ乗っ取り」
こうした 厨房 や、ある意味で 電波 チックな なりすましの乗っ取りの他に、作者は別にいることを明示しながら、しかし無断転載、限度を超えた引用などによる作品の乗っ取り行為もあります。
こちらはなりすましによる乗っ取りではなく、単なる無断転載や度が過ぎた引用ではあるのですが、無断転載によってオリジナルが本来得られていたはずの注目や評価、人気、アクセス数、場合によってはそれに伴う アフィリエイト の収入などを奪うことから、とくに 「コンテンツ乗っ取り」 などと呼ばれています。
とりわけアフィリエイト収入を目的としたコンテンツ乗っ取りの場合、個人であってもかなり大規模、場合によっては法人がそれに関与していて、いわゆるまとめサイトやキュレーション系の 大手サイト と呼ばれるようなところも行なっている点が特徴でしょう。
完全な無断転載はともかく、きちんと引用元を明記しているものもありますし、キュレーション自体は見る方にとっても便利でありがたいものだったりもしますが、そこにお金や評価の要素が加わると、心情的に許せないと考える作者や、その作者の ファン が現れるのも当然でしょう。
ただし大手サイトに取り上げられたことによってオリジナルが注目を集めることもあり、それをありがたいと感じる作者もいますから、こちらは功罪相半ばするといったところでしょうか。 ようは コンテンツ の作者に敬意を払えるかどうか、作者が嫌がっているのが分かった時点で取り下げられるか、さらにあざとい金儲けが絡んでいるかどうかが大きな要素なのでしょう。
こうした点は、2ちゃんねる などの まとめサイト (とくにコピペブログと呼ばれるようなサイト) が膨大なアクセスを稼いだり、ニコニコ動画の YouTube 転載に大きなアフィリエイト収入が発生したり、ツイッター の 非公式リツイート (パクツイ) による ふぁぼ公 の奪い合い、Tumblr や NAVERまとめ といったキュレーションサービスの人気とともに、問題が表面化しつつあります。
適切な引用に問題がないのはもとより、転載元を明示した状態の適当な範囲の転載も現在は 「ルールやマナーの範囲内」 になって来ていると思うのですが (これがだめになっては、検索サイトや ソーシャルサービス は成り立たなくなってしまいます)、インターネット がこれだけ普及し、様々な思惑で色々な人が参加している現在、著作権 や 知的財産権の問題なども含め、難しい時代に入っているといったことなのでしょう。
「サイトジャック」 とは?
一方、これら乗っ取りとは全く無関係な乗っ取りもいくつかあります。 その一つは 「サイトジャック」 と呼ばれるもので、大手サイト や ブログ などがサイト全体に特定企業の広告などを、サイトを乗っ取る形 (ヘッダやサイトデザインをその広告に合わせる) で掲載する広告方法を指します。 この場合は通常の広告宣伝活動の一環であり、何の問題も当然ながらありません。
またウェブサイトのデータやシステムが入っているサーバなどに対し、システムのプログラム的な脆弱性を悪用する形でを悪意を持って不正な攻撃で乗っ取る場合もあります。 この場合、サイト内容の改竄や、サイトの利用者に対して ウィルス をばらまくなど、完全な犯罪行為となります。