めくるめく甘々でスイートな関係…ごっこ遊び? ガチ恋? 「お砂糖」
「お砂糖」 あるいは 「お砂糖関係」 とは、主に VRchat といったメタバース上で、それぞれが アバター と呼ばれる 3D の キャラクター の姿を身にまとった状態で他の参加者とラブラブな恋愛関係になること、あるいはそうした 「甘い関係」 のカップルのことです。 対義語は 「お塩」 で、お砂糖関係が解消した (別れた) という意味になります。
昔から ネット のコミュニティ上で異性との恋愛関係が生じるなどは別に珍しい話ではなく、パソ通 や インターネット 初期の出会い系サイトや MMO (大規模多人数同時参加型の ネトゲ) の時代から存在するものです。 ただし、いわゆる出会い厨や 囲い・直結 と呼ばれる異性との出会いが目的でコミュニティや ゲーム に参加する人の場合、あくまでネット上の場は 「入口」「出会いや ナンパ の場」 に過ぎないものです。 お砂糖関係を結んだり MMO で 結婚 するような人はそれらとは異なり、入口や出会いの場であると同時にネット上の場こそが主な交際場所となります。
基本的には チャット で会話を楽しむ、一緒に音楽を聴いたり アニメ を見たりと時間を 共有 する、メタバース上のあちこちに2人で出かける、出かけた記録 (スクショ) を写真として撮って大切にする、お互いのメタバース上の家や部屋に訪れてイチャイチャする、誕生日やバレンタイン・クリスマスに贈り物をしたり2人だけで過ごすなど、現実世界の恋愛とさほど変わらない行動を楽しみながら行います。
恋愛感情やムードが高まればそのままネット上で性行為も行われますが、もちろん身体を直接触れ合うことはできませんから、アバターを重ねてキスしたり、チャットでお互いのアバターを見ながら 抜く こともあります (オナニー する、見抜き (画面で見ながらする)・チャH (本来はアダルトサイトや出会い系にある特殊なチャットのこと、チャットでエッチ)。 これらはいずれも MMO 時代からあるものです。
他のネット上の出会いと同様にメタバースを離れ、実際にどこかで待ち合わせして対面することもあります。 VR・メタバースも比較的身近なものでは 2003年6月23日に公開された Second Life をはじめ長い歴史がありますが、いずれにせよ従来のネット恋愛と比べても根本的な違いはありません。 違いがあるのだとしたら、VR 技術の進歩によって得られる体験がより豊かになったこと、そして従来のネット恋愛以上に、人の 属性 (容姿や年齢、場合によっては性別ですらも) が、さほど重視されなくなった点でしょうか (後述します)。
恋に恋する乙女っぽさもある、相手の容姿年齢性別を問わないお砂糖関係
2014年1月16日の VRchat 登場をはじめ、2010年代中頃以降の 環境 では VR機器も入手しやすくなっています。 また肝心のアバターも画面内の世界もより進化し美しくなっています。 元々 3D 空間には強い没入感もあるため、現実世界と変わらないとまでは云いませんが、豊かな体験ができるようになっています。 足りない分は想像力で補えば良く、そもそもアバターの中にいるのは紛れもない人間なのですから、道具や環境が少々違っても、現実世界と同様の深い関係性が構築されてもなんら不思議はありません。
その結果という訳でもないのでしょうが、界隈 におけるお砂糖は相手の居住地域はもちろん容姿や年齢や性別を問わず、もっと云うと相手の性別が分からなかったり同性だとわかった上でも行われることも多く、アバターと 中の人 とが一体化した別の人格を認め合い、それに恋したり恋されたりといった形になっています。 その場合、中の人は愛する相手の核心であり、かつアバターや 設定 を含めた相手を構成する一部でしかないという独特な存在となりますが、この独特な距離感がマッチする人も少なくないということなのでしょう。
これは相手のことが好きだ、大切な存在だという部分ももちろんあるのですが、思春期の頃の少女のような、恋に恋する乙女の姿にも似ています。 恋愛そのものに対する強い憧れと、恋愛に夢中になれる自分が好きだみたいな気分です。 些細なことでドキドキしたり、イチャイチャと甘えたり拗ねたり、相手の歓心を買おうと背伸びして理想の自分を演じたり演じきれずに落ち込んだり、相手のちょっとした一言で心が塞いだり、誤解が晴れて安心したり。 日々の一喜一憂で感情が振り回されることが嬉しい、楽しい、でも時には辛い、とにかく生きている感じがする、毎日がキラキラしているみたいな感覚ですね。
これについては 「現実世界で異性に相手にされない 非モテ が代償行為をしているだけだ」「架空の世界に逃げているだけ」 との話をする人もいますが、これは半分当たっていて半分外れています。 そもそもメタバースで他者とお砂糖関係を築く人は過去に恋愛関係を持っていたり、結婚して家庭を持っている人も少なくありません。 非モテ・恋愛弱者が無意識に代償行為をしているケースももちろんありますが、単に 「これまでにない (あるいは過去にはあったけれど今はもう年齢的に手が届かない) 青春時代のような新しい恋愛」 をメタバースで発見し、パートナーと一緒にそれを育てているだけというのが実態に近いでしょう。
一般人 が文通をしてほのかな恋心を育んだり、恋愛ドラマを見たり場合によっては不倫などをして 「自分が経験しなかった形の恋愛を疑似的に追体験する」「若かった頃のトキメキを思い出す」 ように、お砂糖はそれをメタバース上でアバターとして行っているだけです。 単なる恋愛ごっこ遊びなのか、それとも ガチ恋 なのかはお砂糖カップルそれぞれで違うのでしょうが、メタバースの恋愛だけ 「現実から逃避している」「キモイ」 などと非難されていい道理はないでしょう。 そもそも他人の恋愛や生き方を、その人の人生の責任を負うつもりもないのに外野からあれこれ批判する方がどうかしています。
なお双方が女性や男性同士だった場合は同性愛となりますが、例えば中の人が男性 (おじさん) 同士の 百合・疑似的な レズ (それぞれがアバターを通じて女性になりきって恋愛する) や、数は少ないものの女性同士の BL・疑似的な ゲイ などもあります。 声はボイチェンで バ美肉 することもあれば、地声のおっさん声の場合もあります。 現実ではありえない組み合わせであり、それぞれの容姿や年齢、身体的な障碍の有無や性別すらも障害とならずに飛び越えた、ある意味で極限まで突き詰められたごっこ遊びであり、また人格に対する純粋な思いでもあるのでしょう。
このあたりは部外者が話だけを聞くと情報量が多すぎて カオス な感じが大きいかも知れませんし、分からない人には分からないものなのでしょうが、男性が女性のアバターを身にまとい女性っぽい声を出すバ美肉と並び、何かと目立つ (外から見た時のインパクトや好奇の関心を集めやすい) 存在と云えます。 メディア報道などを通じて、一般の 認知 も少しずつ上がってきています。
なおメタバース上でお砂糖関係となるだけでなく、その後 オフ会 によって直接対面し、同性であれば気の合う リア友 同士となったり、場合によってはお互いに ノンケ (異性愛者) だったのに同性愛の関係になったり、いきなりオフパコ (オフライン でパコ (性行為) する) といった肉体関係までを含むリアル恋愛状態に発展することもあります。