ハイ・ホー ハイ・ホー あれ? 白雪姫はどこ…? 「7人の小人」
「7人の小人」 とは、一人の女性の周囲にいる 「その他大勢の男性」 あるいは女性アイドルの男性 ファン を、おたく用語 として 自虐的・侮蔑的に指す言葉です。 全体の状況から 「白雪姫現象」 と呼ぶこともあります。
主な使いどころとしては、何らかのコミュニティの紅一点、あるいはアイドルといった大勢の男性に支持され愛されてきた女性が、それまでずっと活動を共にしたり自分を応援してくれた大勢の男性の中の一人ではなく、その後ひょっこり現れた イケメン の男性に心を奪われ、そのまま結ばれる状態を俯瞰的、あるいは大勢の男性側の視点から見た言葉となっています。 「俺たちは王子様ではなくしょせん7人の小人の中の1人のような存在だった」 という訳です。 言葉の 元ネタ は同名のドイツ民話やグリム童話、あるいはディズニー アニメ 「白雪姫」 からです。
童話として誰でも知っているであろう 「白雪姫」
「白雪姫」 はあまりに有名な物語ですが、大雑把におさらいしてみましょう。
義理の娘である白雪姫とともにお城に住む王妃が、魔法の鏡に「世界で一番美しい女は誰だ?」 と訊ねたところ、わずか7歳の白雪姫だと答えられます。 プライドの高い王妃はこれに激怒し、白雪姫を殺せと猟師に命じます。 しかし幼い白雪姫を 不憫 に思う猟師は、森に置き去りにしただけに留めます。 白雪姫は森に住む7人の小人たち (ドワーフ/ 妖精) と出会い、家事手伝いとして家において欲しいと願うと小人側がこれを了承 (小人側が提案するパターンもある)。 白雪姫と小人たちは次第に心を通わせ、家族同様に生活を共にする中で白雪姫は文字通り白雪のように真っ白な肌を持つ美しい女性に成長します。
その後白雪姫が生きていることを知った王妃は様々な手を使って何度も殺そうとしますが、その都度小人たちに助けられ守られます。 しかし最後の毒入りリンゴによる毒殺は避けられず、ついに白雪姫は息絶えます。
小人たちが白雪姫をガラスの棺に入れて悲しんでいると、通りかかった王子が白雪姫に一目ぼれ。 棺の中の白雪姫に口づけると口から毒入りリンゴのかけらが零れ落ち、実は仮死状態だっただけの白雪姫は蘇生します。 白雪姫も王子を見るなり恋に落ち、王子の国で正式に 結婚 します。 悪巧みを知られた王妃は罰を受け、白雪姫と王子は末永く幸せにすごしましたとさ、という筋書きです。
最後に現れ、いいところ全部を持って行ってしまう王子様
民話やそれを基にした童話などは、こんにちの目から見ると無理やりだったり理不尽な流れがあったりもするものです。 また古い作品は様々な版やバージョンがあり、ディテールに違いがあったりもします。 例えば白雪姫蘇生で口づけのくだりは、ディズニーアニメ版から広まったといってよいでしょう。 しかし白雪姫が美しく、その危機を7人の小人が救い、通りがかりの王子が見染て結ばれるという流れは大きくは変わりません (魔法の鏡と毒入りリンゴといった象徴的な アイテム も同様です)。
お姫様が登場する西洋のおとぎ話としてはシンデレラ姫もありますが、いずれも美しく献身的で、かついじわるな同じ女性から いじめ や迫害を受けつつも、その美しさゆえに王子様に見染られ幸せを掴むという基本的構造は同じです。 現在これらは 「単なるルッキズム (外見重視主義) だ」「白い肌を最上とする白人優越主義だ」「結婚を女性の最大の幸せだと固定化するもの」 として大真面目に批判されるものともなっていますが、あまりに有名な作品であるため、それ以前から様々な ツッコミ が、民話の研究対象としてや、単なる ネタ としてされてもいました。
ネタとしてのツッコミで云えば、例えばシンデレラ姫なら、魔法が解けたのにガラスの靴だけはなぜ残った? とか、靴のサイズだけでどうしてわかった? などですが、白雪姫の場合は 「長年にわたってあれだけ献身的に白雪姫を助け、7人の小人の中には心を寄せる者もいたのに、最後はぽっと出の王子様が一番いいところを丸ごとさらっていくんかい」「トンビに油揚げをさらわれた」 という切なさがあります。 人によっては 寝取られ (NTR) の原型そのものではないかと唱えられることもあります。
こうした流れから、男性ばかりの おたく な サークル に紅一点として存在した女性が、長年苦楽を共にしたサークル仲間のおたくとは結ばれず、ナンパ や合コンで知り合ったばかりの 陽キャ っぽいスポーツサークルのイケメンや チャラ男 と結ばれたり、アイドルが長年支えてきた ファン やファンと同じ系統の男性ではなく、正反対のようなイケメン芸能人やスポーツ選手などと結ばれる中で、当の 「その他大勢の男性」 の側が、「俺たちまるで7人の小人だな…」 という状況になって、自虐的に自らをそう呼ぶようになったのでした。
7人の小人は妖精であり白雪姫の親代わりや家族でもあり、物語でも王子との結婚を心から祝福する存在です。 別に寝取られではないとは思うのですが、「実際この物語に俺が出るとすれば、王子様じゃなく小人としてだよな…」「良く考えてみたら見た目も小人よりだし、アニメ挿入歌の 「ハイ・ホー ハイ・ホー 仕事が好き (旧日本語版歌詞)」 も社畜の俺にぴったりや…」 という諦観めいたものがあると、かなり身につまされる話ではあります。 そもそも白雪姫をガラスの棺というかケースに入れて永久保存しようとする時点で、ちょっと俺らに感性近い?感じがしないでもないし。
で、最後に王子が口づけという性行為を同意もなしに一方的に行いながら、白雪姫はそれを咎めず 秒 で惚れてしまうのもイケメン無罪 (※ただイケ)、あるいはヤリチンが 「女なんて抵抗できなくして一回やっちまえばこっちのもの」 と高笑いをしているのを見るような不快感も、人によっては覚えてしまうのかもしれません。 ネット、とくに 2ちゃんねる といった 掲示板 では、アイドルや声優の熱愛発覚みたいなニュースが流れると、この7人の小人の話はちょくちょく出てくる状態となっています。
ちなみに 筆者 は小学生時代、クラスの文化祭の出し物 「3匹の子豚」 の舞台でオオカミ役をしたことがあります。 なので白雪姫でも猟師役くらいにはなれそうな気がしますが、ハイホーハイホー歌いながら仲間と単純労働に勤しむのも捨てがたい魅力があります。