水戸黄門さまの若いころのご乱行…? 「ヤングもの」
「ヤング◯◯」 とは、一般的なイメージが老人だったり、あるいはオトナ、中年壮年だったりする キャラクター や実在人物などの、若いころの様子を描写した作品のことです。 ◯◯部分にはそのキャラ名などが入り、例えば 「ヤング水戸黄門」 ならテレビドラマの影響から 白髪 の老人のイメージが強い黄門様の、若かりし頃の活躍を描いた作品ということになります。 「ティーンもの」 と呼んだり、「ガキ」「ジャリ」 が使われることもあります。
こうした作品は 同人、商業 問わず、様々な モチーフ を使って作られています。 既存作品で大人のイメージがとても強いキャラ、歴史上の人物で老人のイメージが強いキャラがとくに選ばれ、それらが少年期から青年期にかけての、10歳から15〜18歳程度くらいまでを扱う場合が多いようです (それ年齢以下の場合は、ロリ や ショタ となり、ロリ・ショタ化させた作品は 幼児化 と呼ばれます)。
大人や老人のキャラなどは、考え方や性格が円熟していたり、あるいは老獪で複雑、場合によっては歪んだりひん曲がっていたりもするわけですが、「ヤング化」 した場合は、そうした傾向とはあえて逆の性格を持っていたり、将来そうした性格に至るための伏線や フラグ (ただし結果の後に作られる擬似的なもの、後付け 設定) となる事件を作って盛り上げたり、本編では触れられなかったような親子の葛藤をメインテーマに掲げるようなものもあります。
こうした 「なぜこのキャラは、今現在こうした性格や考え方になったのか」 との話は、元ネタ となる本編中に既に回顧のような形で触れられている場合がありますが、ヤング化はこの部分をクローズアップした 外伝 のような形を取る場合が多くなっています。 しかし一方で、単に若くしてみただけのキャラの再定義、あるいはそうした シチュエーション を楽しむためだけの作品もあります。
大人気となりノベライズもされた 「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」
なお 「ヤング」 とは、当然ながら英語の 「Young」(若い) の意味ですが、これがこうした意味で広く使われるようになったきっかけの一つは、1993年1月8日〜1993年3月26日までテレビ朝日系列で放送され人気を得た 「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」(ヤング・インディー・ジョーンズ/ The Young Indiana Jones Chronicles) あたりからでしょう。
1981年に公開されて大ヒットシリーズとなったハリウッド映画 「インディ・ジョーンズ」 シリーズの 主人公、インディアナ・ジョーンズ (Indiana Jones) の若いころのエピソードとして作られたこのテレビシリーズは、アメリカ同様、日本でも大ヒット。 「ヤング◯◯」 という使い方は、これ以前にももちろん存在してはいましたが、同作品を原作とする日本人作家らによる ライトノベル も人気となり、これ以降は大きな広がりを持つようになりました。
シチュエーションものとしての 「異性化」 と 「ヤング化」
ヤング化以外にも、キャラを再定義する作品には色々なものがあります。 例えば男性キャラを美少女にしてしまうような 性転換・女体化 などがおなじみですが、こうした作品の場合、キャラの性格やキャラを取り囲む 環境 などは、ほぼそのまま踏襲する場合が多いものです。
例えば水戸黄門を例にすると、水戸黄門が若い頃の話を描くとしたら、当然、助さん角さんはまだ生まれる前で登場できないことになります。 しかし年齢の設定を変えただけのような再定義の場合は、当たり前のように助さん角さんが黄門様のボディーガードやお目付け役として登場することになります。 この場合、本来の年齢構成を踏襲して若い水戸黄門よりさらに若く設定したり、逆に思いっきり大人に描いてギャップを攻める場合もあります。 ちょっと工夫を凝らし、助さん角さんの父親の若いころの姿になっている場合もありますが、作品中における役割や性格などは、元ネタと同じ状態になっている場合がほとんどです。
これに比べ、「キャラの若いころを描く」 という回顧を目指したような作品は、歴史上実在した水戸藩主・徳川光圀の若いころのエピソードを元にしたり、当時の水戸藩内部の人間模様や世相を反映した物語となります。
これらの作品は、主人公が同じ水戸黄門であっても、原典として取り扱うモチーフによって、ジャンル や カテゴリ も異なります。 既存の アニメ や マンガ、ゲーム、小説、ラノベなどの登場人物をモチーフにしたものは、それらの 二次創作 や パロディ となり (TBS系ドラマ 「水戸黄門」 をモチーフにすると、ドラマ同人・半生)、歴史を題材としたものは歴史同人や 乾き物 などになります。
ただし史実としての水戸黄門にしろ戦国武将や幕末の志士にしろ、そこに後世の創作物からの影響やイメージが多かれ少なかれ含まれるため、厳密な分類は難しいかも知れません。
もしも子供がいたら… 「if子供」
さらにひねった方法もあります。 架空の子供を設定してその子供を主人公に据える方法です。 例えば水戸黄門の場合、史実では実子に松平頼常、養子に綱方、綱條、鍋姫がいますが、これらを一切無視、あるいはそれらの兄妹といった形で架空の子供を創造し、その子供キャラに若き日の水戸黄門の姿を仮託します。 こうした作品は if ものの一種として 「if子供」 とされたり、「架空のご落胤」 などと呼ばれたりします。