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かわいそうランキング

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メディアや行政から注目されたりされなかったり… 「かわいそうランキング」

 「かわいそうランキング」 とは、世の中から 「かわいそう」 と思ってもらえるかどうかのランキングのことです。 同じ社会的弱者・不遇の立場にありながらも、個人の 属性 によって社会的な関心や同情を集めやすい者とそうでない者とがおり、大手メディアによる報道や行政による公的支援などの格差を指す言葉として使われます。

 例えば同じ経済的困窮者でも、女性と男性なら女性の方が世間から強い関心や同情を集めやすく、メディアもこぞって報じるし、結果的に公的な支援なども受けやすいでしょう。 あるいは子供と若者と中高年と老人、障碍者と健常者、外国人と日本人でも、世間の見る目はおのずと一方に大きく偏りがちでしょう。 もちろんそこに、女性や子供らがその他の属性に比べてより困難な状況に陥りやすいという部分はあります。

 一般にかわいらしい容姿をした若い女性や女児が同情を集めやすく、外見がパッとしない中高年男性がもっとも同情を集めにくいと考えられ、前者をかわいそうランキング上位、後者を下位とする分類がされることが多いでしょう。 とりわけ前者は、揶揄を込めて 「最強弱者」 と呼ばれることもあります。

「ガラスの天井」 と 「ガラスの地下室」

 この言葉自体は著名な評論家・ネット論客の御田寺圭さんによって、2018年に言語化されました。 過酷な就労環境によって自殺 (自死) した女性と男性のメディア報道の扱いの違いなどを例に挙げ、世間から 「かわいそう」 と思ってもらえるかどうかに、男女で大きな格差があるのではないかとの問題提起となっていました。

 社会的にジェンダー問題などが話題となる中、女性差別によって生じる 「ガラスの天井」 が注目を集めています。 制度上は平等に見えていても、実際は女性というだけで一定以上の昇進や社会的進出が妨げられてしまう、見えない天井があるとの言葉です。 「かわいそうランキング」 は逆に、男性というだけで 「かわいそう」 と思ってもらえず社会からの注目や関心も薄く、結果的に公的な支援も後回しにされて 「ガラスの地下室」 に転落し這い上がれないといったものでした。 見えないキャリア障壁と見えない弱者救済障壁との対比ですね。

 その後この言葉は ネットSNS掲示板 などで流行。 ニュアンス としては、それ以前から存在する一部の社会的弱者に対する 露悪的 な批判 (女性や子供や老人や外国人は優遇されている) に用いられたり、逆に 自虐的 な愚痴や不満 (どうせ中年男性 (おっさん) の俺たちはかわいそうランキング最下層で、どんなに困っても後回しにされたり助けてももらえない) というある種の諦観も込めた形で広く使われるようになっています。

「おじさん叩き」 と 「弱者男性」

 前後してよく触れられる関連した 概念 に弱者男性 (経済的に困窮したり恋愛関係や人間関係に恵まれない中高年の男性) があります。 より辛辣な言葉で KKO (キモ くて金のないおっさん) もあります。 メディアからも注目されず、行政からの支援も薄く、年代的にはいわゆる氷河期世代に当たり、困窮していてもしばしば 「自己責任」 で片付けられてしまうような人たちです。

 これらは一般的に弱者とされる女性や子供、外国人といった属性の人たちに対する自虐的な意趣返し・ミラーリング の要素もありつつ、メディアなどが人を属性で一括りにして論じることは差別だと主張しながら、一方では権力など持ちようのない弱者男性を男性と云うだけで女性を抑圧する強者に括ることへの反発でもあります。 一部のメディアやネット論客、団体、活動家らによるフェミニズムやジェンダー観点からの 「おじさん 叩き」「おたく バッシング」 が酷すぎることも影響しています。

 こういった概念はもちろんそれ以前から存在しますし、外見が可愛らしければひいきされて優遇・保護されがちな現実を誰でも実感できているので、掲示板などでは男女論の中心としてかなり 強い言葉 であれこれ語られてきた経緯があります。 これらを 「かわいそうランキング」 という初見でも意味が分かるキャッチーなフレーズとして言語化したことは、問題を可視化する大きな意義があったと云えるでしょう。

「かわいそう」 という感情で行動すると差別が生じる

 またこれは、容姿に恵まれずコミュニケーション能力にも乏しい中高年女性の厳しさをも、相対的に浮き彫りにするものでもあります。 ほんの一部のかわいそうランキング上位者だけが注目され、あるいはそれへの利益誘導が著名な有識者や市民団体、メディアによって積極的になされる一方、同じような弱者たる目立たない中高年女性はしばしば無視され、中高年男性に至っては敵だと見なされ激しい攻撃にさえ晒される。 あまりに不条理であり、かつ不自然でもあります。 誰が見ても思わず助けたくなる分かりやすい弱者を客寄せパンダに利用した政治活動、弱者救済以外の何らかの目的が別にあるのではないかと邪推されるゆえんです。

 困った人を見て 「かわいそう」 という感情が生じるのは人間なら自然なものですし、「力を貸したい」「助けてあげたい」 と思ったり手を差し伸べるのは 尊い ものです。 しかし感情を絶対視し過ぎてしまっては、おのずと 「かわいそうに見えない弱者」 は無視され、取り残されたり切り捨てられてしまって不平等や格差が生じてしまいます。 ネットで弱者に寄り添うと公言する人たちへの反論に 「主観的な お気持ち ではなく統計に基づく具体的な数字を出せ」「根拠を示せ」 があります。 それは都合の悪い数字を隠すなという意味だけでなく、そもそも客観的な数字を元に話をしないと議論が偏った不公平で誤ったものになってしまうからです。

 統計に基づく合理的で冷静な判断というと何やら人の感情を無視した冷たいもののように感じられる人もいますが、実際は人の感情こそが時に冷酷で残酷な振る舞いを招いたり正当化するものなのでしょう。 数字には人情も温かみもありませんが、逆に憎しみや冷たさもありません。 何らかの 党派性 を持つ慈善事業や寄付ならともかく、行政の弱者支援対象の選別に 「かわいそう」 あるいは 「かわいそうに見える」 などという情緒的な理由は本来あってはならないと思います (それでも人間は感情の動物なので、どうしても一定の範囲で含まれてしまうことまで否定はしませんが)。

 また困っている人は誰に恥じることなく 「助けて欲しい」 と声を上げられる世の中になって欲しいと思います。 それは今現在困っている人だけでなく、今は何不自由ない境遇にあっても、事故や 病気、不景気による失業など、ちょっとした 不運 で誰でも救済対象になりかねない現代において、将来の困窮者を救うことにもなるからです。 誰にとっても、明日は我が身の話なのです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2019年4月17日)
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