ケンカするほど仲が良い… ケンカップル
「ケンカップル」 とは、常日頃からケンカばかりしているカップル、お互いに罵詈雑言を浴びせ合い嫌っているように見えるカップル、あるいはそうした傾向を持つ キャラクター 同士の組み合わせ、カップリング をあらわす言葉です。
言葉としては ケンカ + カップル の造語、あるいは 嫌カップル といった ニュアンス になりますが、当然ながら本心からお互いを嫌い反発しているという訳ではなく、むしろ仲が良く互いに心から信頼しあっているからこそ憎まれ口を叩き合う、ケンカばかりしていながら決して離れることがない絶対的な絆で結ばれた悪友や戦友、あるいは兄弟・家族のような強い関係性をあらわすものとなります。
また一方もしくは両方に、かなり強めの ツンデレ傾向 を持つ場合や、どれほどひどい仕打ちを受けても離れない動機付けとして、腐れ縁となるような過去のエピソード、あるいは 幼馴染 の 設定 などがつく場合もあります。
自分以外の人間が批判するとキレたり…
こうした組み合わせが輝くのは、何かのキッカケで互いの相手に対する思いやりや愛情がほとばしる瞬間でしょう。 日頃は相手をアホだバカだと罵ったり、時には殴り合いのケンカまでするのに、片方がピンチに陥ると自分の身の危険も顧みず助けに向かったり、自分以外のキャラが相手の悪口をいうと怒りをあらわにし、「あいつの悪口を言っていいのは俺だけだ」 的な反応で返したり。
またこうしたカップリングでは、当人に 「憎まれ口を叩きながらも、内心では相手が好きだ」「信頼している、慕っている」 との 「自覚がないケース」 と 「自覚があるケース」 とに別れますが (途中で変わる場合もあります)、盛り上がるのはやっぱり、本人にその自覚が全くなく、エピソードを重ねるにつれて徐々にその気持ちに気がついてゆく、自覚してゆく…という形でしょう。
その際、本人以外 (それを見ている ファン や 読者 なども含む) には、お互いに好きである、惹かれ合っているというのが明確にわかるようになっているのもポイントです。 例えばケンカする時に、相手のことを常に見ていないと出てこないセリフがでてくる、相手の性格などを完全に把握してないとわからない文句が出てくる、などです。 あるいは相手が自分に向けてくる自己犠牲を伴う好意を、こちらも相手を思って拒否し憎まれ役を買う場合もあります。 周囲や相手からどれだけ誤解されても、相手が幸せになってくれればそれでいいという究極の自己犠牲を躊躇なくできてしまうのもケンカップル特有の特徴かも知れません。
ケンカップルが輝くシーンは色々あるのでしょうが、強敵に2人で立ち向かい、「てめえ、足手まといになるなよ」「そりゃこっちのセリフだ、死んだら墓の前で笑ってやるよ」 などと互いに憎まれ口を叩く姿などは、こうした描写が好きな人ならグッとくることこの上ないでしょう。
DISり愛、殴り愛… 男の友情と愛情はケンカから生まれる?
俗に 「仲が良いほどケンカする」 とも言われますし、日常生活でも当てはまる状況はたくさんありますが、いつもベタベタとくっついているより物語にメリハリもつき、創作物に登場するキャラクターの関係性の中では、もっとも普遍的で 王道的 な設定、悪く云えばありふれた形となるでしょう。
そしてこうした関係性が マンガ や アニメ でことさら多用されるのは、ケンカップルに面白みや汎用性、勢いの良さ、あるいはそれを見るファンの 「自分もあの関係性の輪に入りたい」「それでは自分が邪魔者になるから、傍らの壁や天井になってずっと見守りたい」 との気持ちを喚起するものあるからなのでしょう。
なお他人を批判することを ディスる (DIS) などと呼びますが、これが転じてこうしたカップリングを 「ディスり愛」(ディスり合いの意図的な 誤変換)、あるいは殴りあうことから転じた 「殴り愛」「ボコり 愛」、相手のミスや ボケ に ツッコミ しまくることから転じた 「ツッコミ愛」 などと呼ぶ場合もあります。
ただしこうした言葉は、通常はファンが自分の好きな作品やキャラに容赦無いツッコミを入れること、悪口や誹謗中傷めいた言葉を投げかける場合に使うケースも多いでしょう。 この手の言葉は人や場所、時期によって様々な意味を持つので、使う場合は注意が必要かも知れません (普通は、こちらの意味で使いますので)。