わが道を突き進む漢だ… 「△」
「△」(凵j とは、「さん、かっけー」 という意味を表す言葉 (記号) です。
例えば 「本田△」 なら、「本田さん、かっけー」 となります。 「さん、かっけー」 → 「三角形」 → 「△」 という訳ですね。 「かっけー」 とは、「かっこいい」「しびれる」 なんて意味の言葉の若者風の崩したしゃべり方ですが、この場合には強い揶揄や呆れた状態での批判の意味が強い使われ方となります (賞賛表現として使うケースも (後述します)。
若者言葉 「かっけー」 が 「△」 に…
元々 ネット の世界では、他人を揶揄する時に、わざと DQN のような軽薄な若者言葉、ヤンキー用語などを真似て、面白がってことさらに使うケースがあります。 パネェ (半端じゃねえ) なんて言葉もそうですが、頭の悪い後輩が頭の悪い先輩を賞賛するような言いまわし、言葉遣いをことさらにやって、相手を揶揄する使い方ですね。
「かっけー」 もそのひとつで、スポーツ選手の本当か嘘か分からない逸話や武勇伝を 掲示板 などに書き込んで、それを 「かっけー」 と表現したり (サッカーの三浦知良選手、キングカズに対する 「カズさんかっけー!」 と、その改変版など)、ネット上でありえない向こう見ずな行為 (違法ソフトを うp したり、犯罪予告の 書き込み をすることなど) を、こうした掛け声で茶化し煽ったり揶揄する表現がありました (「カコイイ」 などと表現もあります)。
ただし改変されたものが大量に出回って人気となっていた 「カズコピペ」 の 「カズさんかっけー!」 なども含め、初期の頃はちょっとおどけていながらも、純粋に賞賛の意味で使う場合もそれなりに多い、独特な言葉でした (区別するために 「○○さん、かっけー(棒)」 などとして、かっこいいとは思ってない、棒読み である、心がこもってないという表現をわざわざする場合もあります)。
2008年2月、「2ちゃんねる」 の犯罪予告の書き込みに対して 「△」
「本田△」が“読め”れば、ワールドカップも きっと面白い」日経ビジネスオンライン 2009年6月12日 |
王様はオレだ!本田が俊輔にカミついた! サンケイスポーツ 2009年9月8日 |
その後掲示板の 2ちゃんねる の 「ニュース速報(嫌儲)板」 の 嫌儲 にまつわる 祭り の中で、ある参加者が2008年2月26日に殺人予告の書き込みを行う騒動が勃発。
その際、その人の ハンドルネーム の末尾が 「(愛知県)」 だったことから、「愛知さん、かっけー」 が 「愛知△」 と変化 (ν速系の板では、ハンドル欄に何も記入しないと、勝手に割り振られる名無しのハンドルの他に、書き込んだ人のIPにより大まかな居住地域がついて表示されるようになっていて、この時は愛知県だった)。
その後も愛知さんや愛知さんがらみと思われる人物らの快進撃のたびに 「愛知△」 が触れられ、また使われるようになりました。 相手を揶揄する 「△」 の直接の 元ネタ はここからになります (ただし 「○○さん、かっけー」 みたいな言いまわしは、前述の通り、ずっと以前からありますし、「愛知さん」 に対するこうした掛け声も、かねてからこの掲示板などで使われていました)。
サッカー日本代表、本田圭佑選手と 「本田△」
その後 「△」 はますます各地に伝播し、上記の掲示板などと利用者の一部が重複するサッカー関係の掲示板や 実況 板 (テレビなどでサッカーを観戦しながら感想を書き込む掲示板) などでも使われるようになり、とりわけ独特な個性と唯我独尊的なふてぶてしい態度、大言壮語な言動で何かと注目を集めている本田圭佑選手 (VVVフェンロー/ MF) に対して批判の意味で多用されるように。
その後、日経ビジネスオンライン 2009年6月12日掲載の 「本田△」が“読め”れば、ワールドカップもきっと面白い」 や、サンケイスポーツ 2009年9月8日掲載の 「王様はオレだ!本田が俊輔にカミついた!」 で、この 「△」 を 「流行語」 のような扱いで紹介 (ただし愛知さん 絡み の情報には一切触れず)。 それを見たネット利用者らから 「掲示板の内容を書いてご飯食べられるマスコミ△」 などと揶揄され、さらに ネットスラング として広がることとなりました。
ちなみにその後、「□」(四角形) を使った 「氏、かっけー」(本田□ → 本田氏かっけー) などのアレンジ版も生まれています。 「(÷)」 の場合には、逆に 「カッコワル」(格好悪い) となります。 こうしたバリエーションが出てきたこと、元ネタを知らず上記マスコミ報道などから 「△」 の存在を初めて知った人たちが素直に 「カッコイイ」 との意味で使うようになったこともあり、以降は称賛表現としても良く使われるようになっています。
2010年6月、サッカーワールドカップ南アフリカ大会快進撃で
2010年6月から南アフリカで開催されたワールドカップ大会で、日本初戦となる6月14日の日本vsカメルーンにて、ミッドフィールダー本田圭佑選手がゴールを決め 勝利、W杯海外戦における初の勝ち点3をあげました。 優勝 の最有力候補オランダとの次の試合は惜敗で望みをつなぎ、6月25日、3回戦デンマーク戦は本田選手が前半17分、フリーキックで先制点を挙げる形で3−1で快勝。 一次リーグ突破、ベスト16、決勝トーナメント進出を決めました。
その後6月30日のパラグアイ戦では0−0で延長の末、PK戦で惜しくも敗退。 しかし日本チーム、岡田ジャパン快進撃の原動力として、勝ち点合計9位の立役者として大活躍。 さらに帰国後には、破格のギャラを提示したテレビのバラエティ番組や雑誌などの取材オファーをすべて蹴るなどストイックな姿勢から (一方で、地元の市役所や母校にはノーギャラで報告のための訪問)、サッカー ファン や一部 ネット住民 のみならず、広く一般人にも本田選手の存在感が高まると、「△」 も 「本田△」 として急速に 認知 されるようになっています。 「カズさん、かっけー」 から幾星霜、またサッカーに戻ってきて称賛の意味を取り戻しつつあるのは、何だか感慨深い感じです。
なおこれらの経緯の他に、それ以前から 「ネトゲ」(ネットワークゲーム) の世界で、△が似たような意味で使われていたこともあります。 ここらは住民がそれぞれの場所・コミュニティで重複している可能性も高いですし、言葉自体はそれほど複雑な構造でもないので、それぞれが影響を及ぼしあい、ルーツが一つしかないものなのか、それとも同時多発的に複数の場所で同じ言葉が生まれた、もしくは収斂進化のようにそれぞれの関わりあいがないまま同じ云いまわしが作られたものなのか、厳密には不明となっています。