同じネタ、似たような展開が何度も続く… 「天丼」
「天丼」 あるいは 「天丼展開」(ストーリー) とは、同じような内容の話が何度も続くことです。 元々はお笑い用語の 「天丼」 から来ており、料理の天丼に同じ海老天が2つ載っていることから、同じ ボケ やギャグ、それに対する同じ ツッコミ などを二度三度と時に畳みかけるように続けることを指します。
これが転じて、マンガ や アニメ などで同じようなギャグ展開を繰り返すさまを天丼と呼ぶのはもちろん、広く 物語 全体に対して、同一展開が何度も続くパターンを天丼展開とか天丼ストーリーと呼ぶようになっています。 例えば バトルもの の 作品 であれば、敵が現れ戦う → 主人公 が倒して敵が仲間になる → また新しい敵が現れる → また主人公が倒して… を延々と繰り返すような流れのイメージです。
これはこれでバトルものの作品としては 王道 というか 鉄板 というか お約束 な流れですが、短編作品ならともかく、長く連載が続く作品であればやむを得ない部分もありますから (途中でバトルものから全く別の ジャンル に変えるわけにもいきませんし)、同じ流れでも敵となる キャラ に個別の個性をつけたり、主人公の成長や葛藤などを描くことで、同じことの繰り返し感を薄める努力がなされることが多いでしょう。
なおひな形に沿った物語だとして、テンプレート を当てはめてテンプレ展開とか、マンネリ、ワンパターン、VSOP (ベリースペシャルワンパターン)、金太郎飴、お約束展開、ルーティーンなどと呼ぶこともあります。
意表を突く天丼展開には賛否も両論?
一方、お笑いネタの天丼同様、あえて全く同じパターンを繰り返して 読者 や視聴者らに 「またいつもの流れか」 と思わせておいて、どんでん返しのように意表を突いた別展開に持ち込むこともあります。 前述のバトルものの例で云えば、それまで戦った敵はみんな仲間になったのに、途中で仲間になるふりをして裏切るキャラを設定する、あるいはそれまで仲間になったと思っていた元敵のキャラたちが次々に裏切り始めるといった展開などです。
こうした意表を突く物語は驚きや新鮮味もあり面白いと感じる ファン もいますが、一方で予定調和やいつもの流れを期待し、物語というよりは キャラ萌え で気楽に作品を楽しんでいた読者や視聴者に強いストレスを与える結果にもなります。 その後の物語にも過度な緊張を強いてしまい 「見ていて疲れる」「見るのに覚悟が必要になる」 ような状況にもなりがちです。
人気作品で連載が長期にわたるほど陥る天丼化
作品にハラハラドキドキの驚きや緊張感を求める人もいれば、マンネリ展開の作品を安心してだらだらと 環境 映像のように見続けて癒しを得たいという人もいます。 また敵キャラに人気が出て 推し ているファンもいますから、作中の説明不足によっていつもの展開から外れ、途中で性格が豹変したような描写となって戸惑ったり怒りを感じてしまう場合もあります。
どちらが優れている劣っているという訳ではありませんが、天丼にせよ変則的な天丼にせよ、伏線などによって十分な説明を試みるとか、作風や テーマ にあった展開にしないと、途中で 「追うのが疲れる」「裏切られて不快」「推しを悪者にした」 との ネガティブ なイメージを持たれてしまう諸刃の剣のような物語進行と云えるかもしれません。 まぁ最後がきれいにまとまって全体として上手く 回収 されていれば、途中はどうあれ構わないという人も結構いますけど。
「擦る」 といった言い換えも
なお同じお笑い用語から転じたもので、「擦る」(こする) という云い方もあります。 こちらも同じ話を何度もする、繰り返し同じことをするといった意味で、2020年以降あたりからお笑い以外の言葉としても使われるようになっています。 例えば同じアニメを何度も観たり、その話を繰り返すことを 「また〇〇を擦った」「〇〇ばかり擦ってすまん」 といった言い方で表したりします。