無法行為をしても責任は取りたくない… 「運営さん大好き」
「運営さん大好き」 とは、ネット における一部の創作投稿系サービスにおいて、作品を 投稿 する利用者が、自作品などに識別用に 設定 する タグ のことです。 ほとんど同じ用途で使われるタグ用語に 「運営さん消さないで」 などもあります。
これは要するに、著作権 や 18歳未満禁止 といった法律や規約に反した自分の作品や投稿を 運営側 が消したり、そうした投稿を繰り返す自分の アカウント を BAN するなどの対策を、運営側に 「しないで欲しい」「見逃して欲しい」 と懇願するためのものとなります。
運営に対するメッセージのようなタグや言い回しは、純粋なサービスの ファン が好意的な ニュアンス でつけたり、逆に嫌味や皮肉、当てこすりでつけたりするケースが昔からあります。 しかし2022年中頃あたりから一部サービスなどで利用者らによるタグ利用が頻繁にみられるようになり、ある種の ネットスラング や 同人用語 のような扱いがされることもあります。
一方、これとは全く異なる使い方もあります。 たとえば TikTok において 「おすすめ」 に掲載されると大幅な閲覧数アップが見込めるため、自分の動画をおすすめに載せて欲しいと運営側にお願いをするためのタグとして使われることもあります。 この場合、おすすめの英語表記 「For You Page」 を略した 「fyp」(#fyp) が使われることもあります。 目的や意味はおおむね同じです (もっと直接的に 「#おすすめのりたい」 みたいなタグになることもあります)。
他者作品の無断転載、自作発言、年齢詐称、何でもありの子供たち
著作権違反を見逃して欲しいといった用途で 「運営さん大好き」 タグがネットで話題になったのは、文字ベースの 二次創作 などが中心となっている投稿サイトです。 とりわけ名前が挙がるものに小説投稿アプリ 「テラーノベル (Teller Novel/ 旧テラー/ TELLER)」 があります。
Web・ケータイ小説や SS といった カテゴリ の作品を投稿できるこのサービスでは、年齢制限などがなかったため数多くの子供たち (キッズ・厨房) が参加していました。 しかしサービス側の規約がゆるく、かつ適切な対応や確認などが取られていなかったため、一部では 「地獄」「最悪の 治安」「コンテンツの墓場」 だなどと呼ばれる状態に。
具体的には他人が書いた作品を無断転載する、無断転載どころか自分で書いたと嘘の 自作発言 をしたり勝手に改変したり 拡散 したりする (コンテンツ乗っ取り)、18禁の ナマモノ といったデリケートな ジャンル で自分が未成年者であるのを明示した上で 鍵 もなく芸能事務所が使う 公式 のタグを用いたり公式側に何らかの直接的なアプローチをする、さらにはアカウントの アイコン などに他人が描いた イラスト や転載禁止の公式絵、アイドルの写真などをそのまま使うなどなど、ほとんど何でもありの無法地帯のような状態となっていました。
無法行為を放置しつつ、TikTok を使った大キャンペーンを実施
テラー側はこれらの状況をさほど問題視せず、他の利用者や作品を盗まれた本来の 作者 からの通報や申し立ても 無視 かそれに近い扱いで放置。 さらに利用者の増加を図ろうと、簡単な操作で動画が作れる機能をつけ、TikTok (ティックトック) といった若年層向けで極めて 拡散力 の高い SNS への投稿を促すキャンペーンを プロモーション として行いました。 これにより、無断転載された文章やイラストを使った無数の違法動画が TikTok にあふれ、利用者らはそれらにも芸能事務所などが使う公式タグをつけて拡散するに至り、「テラーが ヤバイ」 などと問題視されて ツイッター などでは 炎上 の状態に (2022年7月)。
その後あまりに批判が高まったことからテラーノベル側も公式に声明を発表し、対応を宣言。 しばらくはあまり状況は変わりませんでしたが、徐々に管理がされるようになり、あからさまな規約違反投稿の削除や年齢確認の厳格化などの対応を少しずつ実施するようになりました。 こうした中で一部の無法な利用者らが苦し紛れに使い始めたのが 「運営さん大好き」「運営さん消さないで」 といった 「見逃してくれ」 と懇願するようなタグなのでした。
相手は子供ですし、社会常識に欠けるのは仕方がない部分もあるので、当事者をあまり強く批判しても仕方がありません (この状況を強く問題視している人も、個別のユーザーを名指しで批判したりやり玉に挙げたりはしていません)。 しかし作品を奪われた被害者が泣き寝入りする必要などありませんし、サービス側で何らかの対応をすべきなのは当然でしょう。 ともあれこの問題が大きく広がるにつれ、運営さんがらみのタグや コメント も揶揄や ネタ として使われるようになったのでした。