便りがないのは死んだ証拠… 「生存証明」
「生存証明」 とは、ネット での 投稿 や情報・データの発信を行っていた人が、しばらくネットから離れた後、久しぶりにまた情報発信することを指す ネットスラング です。 生存報告や 浮上 とも呼びます。
ネットの世界では、リアルでもつながっている友人や知人 (リア友) はともかく、ネットでのみつながっている人物の様子をうかがう手段はネットでの情報発信しか原則ありません。 あまりに情報発信が止まったままの状況がしばらく続くと、生きているのか死んでいるのか (生物的な生死の他、ネット上のサービス利用や アカウント の利用状況も含む) もわからない状態となります。
そこで パソ通 の雑談系・コミュニケーション中心の 掲示板 などでは、しばらく 書き込み などがない利用者がいると 「おーい、○○生きてるかー」 などと呼びかけるような使い方がしばしばされ、それに応える形で 「生きてます」 などと レス をすることから、一連の動作や状況、あるいは久しぶりの書き込み自体を生存証明と呼ぶようになったのでした。 「おい生きてるか」「生きてるよ」 というやり取り自体は、ネット以前にももちろんありましたが。
日ごろあまり発信しないけれど、ちゃんと生きてます
言葉や 概念 が広がると、何かのレスの際に 「生存証明代わりにレスします」 みたいな書き出し方になったり、単に 「生存証明」 とだけ書き込むようなレスもあります。 これはある意味、スレッド の上り下がりがあるスレッドフロート型掲示板における保守書き込み (一定期間書き込みがないとスレがどんどん 落ち て過去ログ送りになって使えなくなるので、保守のためだけに書き込む行為) に近いかも知れません。 「私は生きてるし、この場を利用する意思があります」 という自分の存在に対する保守という訳です。
逆に云うと、本格的に何の反応もない場合、生物として死んでいる可能性もあります。 とくにある程度の年齢の利用者だったり、大規模な災害が起こった地域に住む利用者の場合、生存証明は比喩や冗談ではなく、切実なものだったりもします。 なお実際に本人が亡くなっているような場合は、それがアカウントなら 故人アカウント と呼ばれます。
レスが溜まり発言しづらくなった利用者を救済し引き上げる意味も
ちなみに利用の際にアカウントの登録などを必要としない匿名系の掲示板はともかく、パソ通時代の掲示板などは、システムとして利用者を会員IDで管理しており、板の 管理人 は誰がいつアクセスしているか、掲示板のどのレスまで読んでいるか (未読・既読位置) を全て把握することができます。
なのでアクセスがある限り、利用者が生物として生きているかどうかはわかるのですが、他の利用者はそれが分かりませんし、管理人も OFF の場で内々に仲間と話すだけならともかく、掲示板上で個々人の利用状況を書くなどは、個人情報云々以前にマナー (ネチケット) として行ったりはしないものでした。
その一方で、発言が途切れ途切れになりがちなのは、その利用者がその場からフェードアウトする前兆だったりしますし、活発な掲示板ではしばらく発言できないと未読やレスが溜まりますます発言しにくくなってしまうので、他の利用者がその人物をこの場につなぎ留めたいと思うなら、「おーい、生きてるかー」 が浮上あるいは 引退 寸前の利用者の 復帰 を促すきっかけとして重要な意味を持つこともあります。
一般に不特定多数が自由意思で集うネットの掲示板などは、「来るもの拒まず、去る者追わず」 がとても多いので、何度か 「おーい、生きてるかー」 を行っても浮上しない場合は、以降の呼び出しはしないのも一つのマナーでした。 もちろんその後にまたひょっこり戻って来た場合は、おかえりなさいで出迎えるパターンが多かったでしょう (筆者 が管理していたパソ通の板ではだいたいそうでした)。
ただし匿名系の掲示板、中でも 殺伐系 の情報収集や議論中心の板などでは、利用者個人のあれこれを話す生存証明などは、馴れ合い として原則禁じられるか嫌われるケースが大半でしょう。