お前だけは生かしちゃおけねぇ! このド外道がぁ〜〜〜〜!!!
「ド外道」(どげどう) とは、仏教の世界で仏の道、人の道から外れ 鬼畜 の道、畜生道に落ちたものを表す 外道 の、より強調した表現です。 強調するための 「ド」 は漢字で書くと 「弩」 で、これは 「ものすごい」「これまでとは違う」「超」 といった俗な意味で使われることもある言葉ですが、元々はイギリス海軍の戦艦名からきています (それぞれ後述します)。
いずれの言葉も言葉自体に非常に歴史があり、また使い勝手も良いので昔からおなじみの表現です。 しかし 1970年代中頃から おたく な 界隈 で使われる 「外道」 やその強調表現 「ド外道」 などについては、漫画家 平松伸二さんの一連のアクション・バイオレンス マンガ作品、「ドーベルマン刑事」「ブラックエンジェルス」「マーダーライセンス牙」 などにおいて、主人公 が凶悪犯罪者に怒りを持って叫ぶ 「外道〜〜〜〜!!」「このド外道がぁ〜〜〜!!」 からでしょう。
ちなみにその後 「ドーベルマン刑事」 は2009年に 「CRドーベルマン刑事」 としてパチンコ台となり、その際に当たりや大当たりの 「ド外道ラッシュ」「ド外道ラッシュTURBO」 などのネーミングでド外道が採用。 再びファンが耳にする機会も増えることになっています。
仏教用語の 「外道」 と軍事用語の 「ド」 がドッキング
仏教で定義される本来の 「外道」 は、唯一絶対の真理である釈迦の教え、仏教の教義に反し、人心を惑わし世を混乱させる悪しき思想や教え、対立する宗教 (邪教) を指します。
歴史的には、古代インドで仏教の教えに異を唱えた思想家や宗教家6名 (アジタ・ケーサカンバリン、パクダ・カッチャーヤナ、プーラナ・カッサパ、マッカリ・ゴーサーラ、サンジャヤ・ベーラッティプッタ、マハーヴィーラ) を直接的に表し、これを称して 「六師外道」 としますが、以降は意味も 拡散 し、広く 「仏教に反する思想宗教」 を外道とする意味もあります。
「ド」 については、1906年に進水し世界中の海軍関係者の度肝を抜いたイギリス海軍の主力大型戦艦 「ドレッドノート」(HMS Dreadnought) の名に由来します。 それまでの常識を覆す単一巨砲の 装備、強力な蒸気タービン推進のエンジン搭載、さらに高い防御装甲をも施したこの戦艦は、それまでの列強各国が保有する戦艦を一気に旧式化させ、帝国主義真っ盛りの大艦巨砲時代の幕開けを告げる衝撃的な新兵器でした。
イギリス海軍の戦艦ドレッドノート |
その後はこのドレッドノートが戦艦の新しい基準となり、ドレッドノート以前のものを 「プレ・ドレッドノート (Pre Dreadnought/ 前弩級戦艦/ 前弩級艦)、同世代で同じ コンセプト と規模を持つ戦艦をドレッドノート(Dreadnought /弩級戦艦/ 弩級艦)、それよりさらに強力な戦艦を超ドレッドノート (Super Dreadnoughts/ 超弩級戦艦、超弩級艦) などと呼ぶようになりました。
当時は強大な軍事力を持つ大国が、弱小国を 侵略 の末に飲み込む弱肉強食の帝国時代でしたし、戦艦は国の強大な軍事力と威信を示す最大要因のひとつともなっていました。
欧米列強にかなり遅れて帝国主義の大国の仲間入りをした日本 (大日本帝国) にとって海軍の増強は急務でした。 単なる軍事用語である 「弩級」 が、俗語・形容詞としてこれほどまでに日本で一般化しているのは、当時の新聞報道などでこの戦艦の登場やそれに伴う影響が大きなニュースバリューを持っていたこと、それらの報道を通じて広く国民の流行語として使われていたり、数多くの創作物に取り入れられたからでしょう。