時期によって異なる2つ、もしくは3つの意味で使われる 「壁ドン」
「壁ドン」 とは、部屋の中で壁に向かって 「ドン」 と、勢い良く手をつく (もしくは殴る) 様子を表す言葉です。 とてもシンプルな表現ですが、ネット の 界隈 ではよく使われる表現となっています。
ただし ネットスラング としての使いところや意味、使われる場所などによって、大きく分けて2つ、もしくは類似するものを含めて3つのパターンがあります。
萌えるシチュエーションとしての 「壁ドン」
2012年10月中頃から、ミニブログ Twitter (ツイッター) を中心に爆発的に流行した 「壁ドン」 の使い方があります。 この場合の使い方は、女性が男性に壁際に追い詰められ、男性の片腕、もしくは両腕が女性を挟むように壁につけられ、女性が身動き取れない状態となっているさま、シチュエーション をあらわす言葉となります。
こうした表現は少女漫画や恋愛ドラマなどで、素直になれない ヒロイン の女性が、自分が好きな男性に高圧的・強引にアプローチされる典型的なパターン、よくあるシーンのひとつとしておなじみでしょう (壁に女性を追い詰めて手をついた後に、男性は女性に 「黙れよ」 などとつぶやき、両者は至近距離でお互いに見つめ合い、その後でキスしたり抱擁したりする、さらに心臓の鼓動の音がドキンとか、トクントクンなどと書き文字で表される)。
Twitter ではこうした状態の様々なバリエーションの話題 (手だけではなく、肘ドンや足ドン、その他) が10月中頃から盛り上がり、なかでも4つのパターンにわけて図解した 画像 が2012年10月13日に Twitter に 投稿 されると、オチ となる蝉ドン (両手両足ドン) の面白さもあり人気が爆発。 すぐに大量の RT (リツィート) がされ (1週間でおよそ2万5千 RT)、瞬く間に 拡散。
さらに膨大な改変パターンの登場や、各バリエーションの実写再現、そうしたシーンが登場する作品の紹介や発掘、自分の好きな キャラ や カップリング で壁ドンした イラスト が描かれるなど、大ブームとなってしまいました。
なおこうした状態を壁ドンと呼ぶのは、人気声優の新谷良子さん (ビーボ) が 「萌える シチュエーション (シチュ萌え)」 としてあげた 「壁際に女子を追い詰め男子が両手で壁をドンとつく」「黙れよ」と言う」 といった場面をあらわす言葉、「壁にドン」 が発祥、元ネタ とも云われていますが (2008年)、どのようにリレーして2012年にブレイクしたのか、詳細は不明です。
誰かに怒りを伝えるための 「壁ドン」
「壁ドン」 のシチュ萌え以外の使われ方もずっと以前からあります。 2ちゃんねる などの 掲示板 では、アパートやマンションで隣の部屋から キャッキャウフフ、もしくは ギシアン といった音 (ラブラブの リア充 のカップルが隣の部屋でイチャイチャしてる、エッチしてる) が漏れてくることに対し、「うるせえんだよ!」 と怒りを伝えるための壁殴りの意味で使われていました。
この壁殴りの話には、「その後、耳を澄ましてよく聞いてみたら、アダルトビデオを見ながら自慰に励んでいるだけだった… オナニー を邪魔してしまい、すまなかった…(でもちょっと親近感 (はーと)」 とのオチが付く場合もあるのですが、もっぱらモテない男性、非モテ・リア終 の八つ当たり、自虐表現 のような扱いの言葉でした。
また逆に、こちらが騒音を出していて、隣の住人や家族から壁ドンされた…といった使い方もされます。 これらは 「隣人にドン」「深夜に ゲーム してたら親がドン」 などとも呼ばれます。 とくに壁が薄く隣の音が漏れてくる…との ネタ でしばしば名前があがる賃貸物件業者、レオパレス の話題で出ることが多く、他には気分良く カラオケ で歌っていたら隣の部屋から叩かれた…などの話題で出ることが多かったものです。
一方、同じ 「隣の部屋や別の部屋にいる人に自分の気分、意思を伝える」 という意味では、「床ドン」 という表現もあります。 こちらは、二階建ての自宅に住む 引きこもり、ニート な人が、自分のいる二階の部屋から、下の階にいる両親 (もっぱら母親) に、「飯持って来い」「用事があるから上がってこい」 と呼びつけるような意味で使われれる言葉です。
多くの場合で、手ではなく足で床をドンと蹴る比喩表現で、親や家族に怒りを感じた時にも、「これは床ドンの レベル」 などといった言い回しで表現することがあります。 シチュ萌えとしての壁ドンが猛烈に広まるまでは、壁ドン・床ドンといえば、ほぼ全てこれら怒りの壁殴りを指していたものです。
「イラ壁」 や 「壁殴り代行」 と、「壁ドン」
上記2パターンと壁つながりで関連する表現もあります。 2007年頃からの くそっ・・・壁殴っちまった・・・イライラするな・・・どいつもこいつも・・・(イラ壁) です。 バリエーションはいくつかありますが、中二病・邪気眼 的な不機嫌さを、壁を殴ることで表す独特な言い回し・成句となっていて、怒りを誰かに伝えるための 「壁ドン」 と非常に近い ニュアンス となっています。
様々な 「壁ドン」 パターンが存在 |
これが使われるようになった経緯は2つあります。 一つは、バンド 「ジン」 による人気アニメ 「コードギアス 反逆のルルーシュ」 のOPテーマ曲 「解読不能」 において、楽曲を批判されたことに対しボーカル、ひぃたんがブログ 「亀歩き」 で、殴って穴が開いたと思われる壁の写真とともに、強い怒りを表明した事件があります (2007年1月15日)。
もう一つは、それとほぼ同じ時期に、スクウェア・エニックスの ネトゲ、「ファンタジーアースゼロ」(2006年12月21日〜/ FEZ/ FantasyEarthZero) にて、運営 に不満を持つ プレイヤー が、ゲーム内の壁を殴るようなシステムや内容を揶揄する中で、この作品を壁殴りゲーム (壁殴りゲー) などと侮蔑的に呼んでいた事件もあります。 こちらはその後、「壁殴り代行業」 にもネタとして発展しています。
これらは、それぞれは別の場所で生じた言葉なのですが、使っている層がかなり近く、また元々怒りで壁を殴るなどは一般にもよく見られる普通の表現だったこともあり、よく事情を知らない ネット民 がごっちゃにして使って、どちらがどうとも言えない状況となっています。 また2012年のシチュ萌えとも一部で混ざったりして、ネットは壁殴りで大騒ぎ☆ の、混沌とした状況になりつつあります。
実際に 「壁ドン」 するのはやめましょう…
ところでどうでもいい話ですが、家の壁はあまり力を入れて殴ると、割りとあっさり穴が開きます (裏に柱や筋交いが入っていれば別ですが、普通は厚さ1cm程度の単なる石膏ボードや、薄っぺらい合板ですから)。 勢いにまかせて殴ったりするのはやめましょう。 実家ですとせっかくのマイホームに穴を開けられた親に激怒されますし、アパートなど賃貸では、引っ越す時に目が飛び出る修繕費を請求されますから…。
あと、「食材や料理をドーン」 になると、これは料理番組でおなじみ、四万十川料理学校の先生、キャシィ塚本になりますから、間違えないようにしましょう。 似ているようで、わりとだいぶ大きな違いです。