同人用語の基礎知識

オタク線/ コテ線

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キャラの絵を描くとき、あると安心…! 「オタク線・コテ線」

ほっぺにこれがあると安心! (有明いく子)
ほっぺにこれがあると安心! (有明いく子

 「オタク線」 あるいは 「コテ線」 とは、マンガアニメ などで、キャラクター の顔のほっぺたのおおむね上部分に、上下にまっすぐ、あるいは斜めに細くて短めの線を並行に数本引き、頬の膨らみを表現する独特な描写法のことです。 一般用語では 「ハッチング」、あとは 「頬線」 がちょっとだけ近いかもしれません。

 1980年代末から1990年代初め前後に相次いでこうした線を引いた描き方が広がり、主に おたく っぽい人が好む 萌え っぽい絵柄や キャラ絵 で多用されたことから、パソ通 などを通じ、ある種の揶揄として 「オタク線」 と呼ばれるようになっています。

 同じ意味の 「コテ線」 という呼び方もあります。 こちらの由来はゲーム雑誌でこの線の話題が扱われた際に、記事企画の名前から派生した言葉だとの話がありますが、確定的な情報も見当たらず、詳しくは不明です。 ただ現在は 「コテ線」 という呼び方の方がポピュラーかもしれません。 オタク線はその後、手相の線のひとつみたいになっちゃってますし。 その他、誤用の 「目バチ」 や 「ヒゲ」 と呼ばれることもあります (後述します)。

 こうした 「体の膨らみや立体感」 を平行な線を何本か引くことで 「面」 として表現する方法と似たようなものは、伝統的な 絵画 や製図などでも、木炭や鉛筆、あるいはコンテといった 画材 で描く素描でも見られるものです。 オタク線については、体の膨らみや影などを、まだ スクリーントーン がないかあまり積極的に使われていなかった時代に線で描いていた劇画的な技法を、子供向け少年漫画で使うことで生じたもの (アニメ 「巨人の星」 の子供のころの星飛雄馬のほっぺたとか) がベースにあるのでしょう。 またおたくっぽい目の大きな女の子を描く場合、眼球の大きさなどを意識した写実的な技法は向いてなく、平面的な絵柄で立体感や描き込み密度を上げるには手っ取り早い方法で重宝したという部分もあります (立体型・平面型)。

 紛らわしいのは、それ以外にほっぺたの赤らみを似たような数本の線で表現すること (照れ線 (テレ線)/// のこと) もあることで (その場合は線の位置がやや下がる)、アニメのように主線ではない補助的な線の位置がぶれやすい作品だと、判断が難しい場合があることです。

 男性キャラの場合、描写目的は違うものの 「ゴルゴ13」 などの劇画キャラのハッチング的な表現 (いわゆるゴルゴ線) の流れもありますし、前述した 「巨人の星」 とか 1986年のアニメ 「ドラゴンボール」 などでもマンガ・アニメともにキャラの性格上、照れ線との混同はまず起こらないため、頬の膨らみ、ハッチング表現だと素直に受け取れます (これはこれで、顔の汚れや擦り傷、あるいは影などとの区別があいまいになったりもしますが)。 これが頬を赤らめがちな美少女キャラなどに使われると、そうでない素の表情の際により注目されやすいといった部分もあったのかなとは思います。 「魔神英雄伝ワタル」(1988年) あたりは、作品が大ヒットしたことも手伝って影響大きかったような気もします。

 また同時期、女性の胸の膨らみを強調する描写においてもハッチングがよく使われ (おっぱいの上部分に顔のオタク線より多めの線が、裸体・着衣問わずたくさん引かれたもの)、これとの対比の中で、女の子のオタク線・コテ線が大きな意味を持つようになったのかも知れません。 この種の線の顔への引き方でとくに印象深い作品は OVA 「トップをねらえ!」(1988年) でしょうか。 主人公 タカヤ・ノリコを始め、キャラの顔にはほっぺただけでなく鼻筋にまでかなり大きめかつ強めの、でもその後オタク線・コテ線になりそうなハッチングが引かれており、この種のキャラ絵の一つの 定番 にもなった観があります。

 他にも 「NG騎士ラムネ&40」(1990年) とか当時同じような線を引いた作品はたくさんありますが、マンガの場合は同じ時期の 「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」(1988年) が強く印象に残ってます (てか当時必死に模写してました)。 作家名を一人だけ挙げるとすると、当時美少女絵で一世を風靡した美樹本晴彦さんが真っ先に思い浮かべられますが、どのあたりから確固たる画法として確立され広まったのかはちょっと断定は難しい感じです。

 青年誌で連載されアニメも大ヒットした 「YAWARA!」(1986年) もありますし、少女漫画とか ロリコン とか美少女ゲームなど数多くの作家の画風も含めたマンガ・アニメの美少女絵の系譜や本流のど真ん中あたりとはまた違った (少年漫画の影響がかなりあるっぽい)、しかし無関係ではない大きな流れの中の作法のような感じはしますけれど。

よく見かけるタイプのオタク線・コテ線パターン

オタク線・コテ線パターン1 オタク線・コテ線パターン2
オタク線・コテ線パターン1オタク線・コテ線パターン2
オタク線・コテ線パターン3 オタク線・コテ線パターン4
オタク線・コテ線パターン3オタク線・コテ線パターン4

セーラームーンはじめ、おたくに人気のキャラにつきものの表現として

 その後オタク線・コテ線は、立体感を表現するための描写というよりは、マンガ的な記号、あるいはそうした ジャンル で活動する 絵描き の単なる 「手癖」 として広がり、立体面描写の画法としてはほとんど意味がないくらいに大げさに描かれたり輪郭からはみ出したり、逆に簡略化されたりします。 大げさなパターンではアニメ 「魔法騎士レイアース」(1994年) や 「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)、「ロスト・ユニバース」(1998年) あたりが代表的で、作画によっては数本の線というよりつながったギザギザ状態の線が強めに乗ったようなオタク線となっています (ギザギザ状態や一筆書きの 「〜」 みたいな形のものはN線とか呼ぶこともあります)。

 一方やや控えめなのは、それらより少し前に登場した「セーラームーン」(1992年) でしょうか。 ほっぺたの上部分、目の下あたりに短く細い線というかちょっと長めの点が主線と同じ色で2〜4本ついているだけです。 位置的には膨らみを表現するものと思われますが、作画によっては明らかに位置がずれておかしい場所についていることもありますし、頬の赤らみをあらわす暖色系の色が乗っていることもあって照れ線と区別がつかず、当時パソ通の会議室 (例えば アスキーネット とか ニフティ とか 東B とかあたりの一部) などでも、「これはいったい何だ?」「頬の赤らみではないよな」 などと ネタ として話題になっていたのを思い出します。 「鬼神童子ZENKI」(1995年) や 「頭文字D」(1998年)あたりも似た感じかもしれません。

 いずれの場合も素の表情から描かれますが、敵と戦うなどして表情が険しくなる、攻撃を受けて苦痛に歪むといった場合には、おおむねオタク線もそれにあわせて強く激しく描かれるようになります。 その意味では頬の膨らみのための線を変えることで表情の変化をあらわしたり、表情に強さや激しさを与える効果もあるのでしょう。

 同じ時期の 「天地無用!」(1992年) についてはオタク線があるキャラ、ないキャラ、明らかに照れ線と思われるものなどが混在しており、さらに表情ごとについたり消えたりもあり、作画担当者の癖や演出意図に沿って表情やキャラ、シーンによって使い分けているのが他作品よりもかなりわかりやすいかも知れません。 当然ながら相当にオタクよりな作品であっても、オタク線などまったく存在しない作品 (例えば 「機動戦艦ナデシコ」(1996年) とか) もたくさんあります。

 ちなみに目のふちが腫れることを 「目ばち」 と呼びますが、セーラームーンの同種表現に対して声優さんが触れた際に 「はじめは目ばちかと思った」 と コメント したことから、この言い回しが使われる場合もあります (というか、当時の 筆者 やその周辺はセラムンオタだらけで、オタク線の他はこれを元ネタにして目バチとかって呼んでましたね…あと線の位置や角度によっては猫のヒゲっぽいのでヒゲとか)。 言い出しっぺの声優さんは確かうさぎ役の三石琴乃さんで、アニメ誌 (アニメージュ?) でのセラムン関係の特集記事のコメントからだったと記憶していますが、現在は実物が手元になく、記憶もあやふやなので確認できません。

 ちなみの蛇足で、筆者やその他おたくな人たちからも 「?」 がでたセーラームーンのオタク線は、日本のマンガや アニメ絵 のオタク的な技法など知る由もない? 海外のセーラームーンファンにとってはいよいよ謎だったようで、その後セーラームーンの コスプレ をしてる外国人女性の何人かが、両方のほっぺたにそれぞれ縦線をアイブロウペンシルらしきメイク用品で何本か引いていたのは興味深かったです。 画法・画技ではなく キャラデザ の一部か何らかのマークや意匠だと思ったのかもしれません。 いやまぁ、忠実に再現しようとしたらそうなるよねみたいな。

 蛇足を重ねると、当時セラムン関係の商品は洪水のように販売されましたが、マンガやアニメなど絵を使ったもの以外の商品、例えば立体造形物である着せ替えドールや実質的な大型フィギュアであるエクセレントドール、あるいは指人形その他にもオタク線はついていません。 しかしその後リメイクされた後の現行商品では、オタク線か照れ線か分かりづらいものの (たぶん照れ線)、ほっぺたに線が何本かつけられています。 これは同時代のその他の作品の立体商品でもおおむね同じとなっています。

 と云う訳で、1990年代にこれほど一世を風靡したオタク線・コテ線ですが、2000年代に入ると急速に廃れ、とくにアニメの世界では一部の作品やジャンル以外、あまり見かけなくなりました。 例えばアニメ 「ラブひな」(2000年) などは、原作であるマンガ (1998年) では堂々たるオタク線が描かれていますが、アニメからは完全に消えています。 一方で 「けいおん!」(2009年) ではまた見られたり、このあたりはよくわかりません。

 個々のスタッフや制作陣・スタジオの個性や画風、作画制作 環境 の変化、時代のニーズが関係したのかも知れませんが、この時代あたりに描き始めた人のマンガやイラストにも、かつてのようなはっきりした線はあまり見ることはなくなっているでしょう。 一方で 同人 の世界は ベテラン古参 が大勢活躍していますし、そうした人たちの手癖として生き残り続け、描き手の世代を見る目印みたいになっている部分もあります。

筆者の描くキャラ絵にも謎の線がついてますが…

 筆者の描くキャラ絵にも当然オタク線・コテ線はありますが (照れ線と複合している場合が多い)、これはもう完全に単なる手癖であって、あまり意味はないような気がします。 ただこれがあると安心するというか。 で、キャラの顔にこれを書き入れるようになったのは1990年前後からなのですが、由来はわりとはっきりしていて、当時筆者と同じとある雑誌に連載していた漫画家さんの絵を 「かっこいいなあ」 と思って真似たものでした。

 その漫画家さんはその後少年誌デビューが決まったものの上手くいかず、そのまま 引退 して連絡も取れなくなっていますが、自分の絵の下手さと比べてあまりに上手く立体感もあって、本人にレクチャーを貰いつつ見よう見まねで真似した (というかパクった) のが原点だったりします。 その後 「セーラームーン」 の 二次創作 や同人活動などもはじめ、今となっては揺るぎない自分の絵柄の一部となっています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年2月9日/ 項目を分割しました)
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