誉め言葉にも誹謗中傷にも使われる 「製造機」
「製造機」 とは、一般的には何らかの物品を製造するための機械のことですが、しばしば人の 属性 などにも当てはめて使われる言葉です。 例えば勉強ができていつも試験で高い点を取る人を 「模範解答製造機」 と呼んだり、問題や トラブル ばかり起こすような人を 「トラブル製造機」、役立たずで無職のただ飯食らいを 「うんこ製造機」 と呼んだりします。
一方、おたく や 腐女子、とくに ネット においては、コンテンツ を創って発表する 作家 やクリエイター、企業らを賞賛、あるいは逆に侮蔑する意図で使うことも多い言葉でしょう。 使い方としては、その作家の賞賛すべき部分を言葉にして接尾 (○○製造機) します。 例えばいつも感動する素晴らしい物語を創る 作者 を 「感動製造機」「名作製造機」 と呼んだり、可愛らしくて 萌え萌え の キャラ を描く 絵師 を 「萌え製造機」「推し 製造機」 と呼んで崇めたりします。 このあたりは、ヒット作を連発する作家を賞賛する意味でヒットメーカーなどと呼ぶのと構造的には同じです。
同じ文脈で人以外の動物や日用品などに当てはめる場合もあります。 例えば見ていると可愛くて何もできなくなる猫とか、便利・快適過ぎて人を堕落させてしまう生活用品を 「ダメ人間製造機」 と呼んだり、暖かいコタツを 「引きこもり 製造機」、面白い ゲーム を 「廃人製造機」 と呼ぶなどです。 死亡率が高い特定の 病気 とか、ミリタリー の世界では構造的欠陥や著しい能力不足などによって事故率や交戦時の生存率が低い兵器などを 「死体製造機」 とか 「未亡人 (寡婦) 製造機」(ウィドウ・メーカー) と呼ぶこともあります。
ただし マンガ を描く人をマンガ製造機と呼んだり、その他、ゲーム製造機とか音楽製造機などと実際に制作している創作物そのものを指して呼ぶ場合は、文脈にもよるとはいえ、やや揶揄や侮蔑の意図が含まれるように感じられる言い回しだと云って良いでしょう。
アンチや立場が異なる人による、露悪的な使い方をする場合も
作家なり作家の産み出した作品なりに批判的な アンチ などが、ことさらに露悪的にこの言い回しを使うことがあります。 例えば作家が病気や怪我、生活 環境 の変化などでしばらく新作が創れないといった発表をした際に、「お前の体なんかどうでもいいからさっさと新作出せよ、製造機のくせに」 といった、相手を人間ではなく単なる機械や装置、もっと云えば自分の欲しいものをただ創り続けるだけの 奴隷 のように見なして侮辱する使い方です。
またアンチではなくても、その作家なりが何らかの政治的・社会的な主張をしたり、自分が好きなものを批判するなどした際に、その幼稚な反論として 「誰もお前にそんな話を求めてない、マンガ製造機らしく黙ってマンガだけ描いてりゃいいんだよ」 などと人格を否定するような文脈で使われることもあります。
優れた作品を黙々と制作し続ける職人的な人たちを、畏怖の念を込めて人間を超えた完成された精密なマシーンのように捉える考え方は昔からあります。 機械が発達する前は、悪魔とか魔術でそれを喩えることもありました。 それ自体は言葉の使い方として誤っているとは思いませんが、少なくとも侮蔑や中傷のために機械や物扱いするのは、あまり褒められた使い方ではないでしょう。
中傷に見せかけつつ自虐を含めた、ちょっとひねった賞賛表現にも
場合によっては相手を製造機扱いして中傷しているように見せて、実は 自己中 な自分に対する 自虐 を含めた賞賛の場合もあります。 例えば 「お前が エロ を創らないと俺の オナニー はどうなる、とっとと作品を創れこのエロ製造機が」 みたいな云い方で、自分の好きな作家や サークル を褒めたり新作をおねだりするような使い方です。
こうした云い方も ニュアンス が分かる人にはわかるのでしょうし、ひねった賞賛として場とタイミングによっては面白みが感じられますが、一般的には品のない物言いですし、誰でも見る事ができる公開された SNS などに 書き込む 場合は、要注意な感じかもしれません。 野暮とはいえ、末尾に (褒め言葉)(誉めてる) みたいな予防線的な文言を追記しないと、あらぬ誤解から不快な思いを相手にさせたり、脊髄反射 や言葉尻だけを捉えられてトラブルの元になるかもしれません。