トーンを重ねたいだけなのに、変な模様が出ていやぁ〜ん 「モアレ」
「モアレ」 とは、規則的に配列された 網点 や線といった紋様を複数重ね合わせて交わった際に、それらの規則や周期のズレ・干渉によって発生する模様のことです。 語源はフランス語の Moire で、日本語では干渉縞とも呼び、元々は繊維を複数重ねて生じる模様やその現象を指す言葉でした。
同人 に近いところでは、モノクロ の マンガ や イラスト を描く際に用いる スクリーントーン (主に網トーン) の重ね貼りの際に生じるモヤモヤとした縞や幾何学的な模様でしょう。 全く同じトーンの重ね貼りでも角度違いで生じますし、異なるトーンでも予期せぬ模様が出てしまう場合もあります。 とくに グラデーション のトーンは、グラデ同士はもちろんその他のトーンとどう組み合わせても、モアレを防ぐのはほとんど無理なくらい難しいです (ごく狭い範囲だけなら何とかなるかも…)。
一般的に網トーンは影や 色 を陰影で表現するために用いますから、よくわからない模様が出てしまっては困ります。 なので、トーンの重ね張りにはズレ方や角度を考えて行う必要があります。 通常はそれぞれのトーンの角度を変えないか、格子状に網点が配置されたトーンなら30度の角度 (傾き) で行うと余計な模様は出ないか出にくくなります。
角度に変化をつけると出現するモアレ |
一方、一般の 印刷 (網掛け するもの、とくにカラー (CMYK) の オフセット印刷) において、CMYK それぞれの網点が重なる中で生じるモアレもあります。 こちらは防ぐ方法は非常に限定的で、解像度 を変更するなどで多少緩和させることもできますが、完全に防ぐのはほぼ不可能でしょう。 もっとも通常のカラー印刷ならば目で見てもモアレに気づくことは稀で (虫眼鏡で拡大するとやっとわかる程度)、さほど問題にはなりません。 とはいえ極端にモアレが強く出ると画質が悪いように見えますし、減らせるならそれに越したことはありません。
印刷物用のデータを作成する際はモアレが出にくいデータになるよう注意し、モニタで印刷プレビューなどをよく確認するようにしましょう。 画面表示を拡大縮小するだけでも見え方が変わるので、実寸表示するだけでなく、実際にテスト印刷して確かめるのが良いでしょう。
また細かい模様のついたもの、洋服などで繊維が見える形のものをデジカメで撮影すると、予期せぬモアレが生じることもあります。 これはデジカメの撮影素子が格子状に配列された画素の集まりでできていて、それが被写体の模様や繊維を干渉することで生じるものです。 フィルムカメラ、いわゆる銀塩カメラではこの現象は発生しません (ただし銀塩カメラの 画像 でも、印刷したらやっぱりモアレが生じます)。 またビデオカメラで縞模様などを撮影するとモアレが生じることがあります。 これらは 「モアレ写真」「モアレ映像」 と呼び、なるべくモアレが生じない角度から撮影するなどの工夫が必要となります。
モアレを使ったあれこれ
モアレを積極的に利用する方法もあります。 角度によって干渉模様がでるということは、角度を変えることで様々な模様を意図的に出すこともできます。 特定の角度ごとに特徴的なモアレが生じ、これらはモアレパターンと呼ばれて利用されることもあります。 またトーンを使ったマンガの場合、モアレは一般に避けるべきという意識が漫画家の間にはあります。 受け取り側で作画技術など知らない一般の 読者 も 「変な模様が出てるな」 は意識できますから、あえて不規則にモアレを発生させ、画面に不安感や 不穏さ、緊張感といった心理的な視覚効果を出す作画法もあります。
このモアレの特徴を生かした面白い技術もあります。 2010年に日本で 開発 された リアルタイム で撮影できるサンプリングモアレカメラです (3次元カメラ)。 これは鉄道や道路の橋をはじめ、傾いたり歪むと重大な事故につながりかねない建築物や構造物の非接触変位計測システムとして利用するもので、被写体に掲出された模様 (格子ターゲット) をカメラでリアルタイム撮影し、変形前と変形後とを重ね合わせてモアレの発生の有無で解析をするものです。
ほんのわずかな傾きや歪みの測定は、測定機材にも極めて高い精度、結果的に高いコストが求められます。 この方法では比較的安価かつ迅速に検知することができます。 非接触・光学測定のため暗所に弱いという弱点もありましたが克服もされ、必要に応じて精度を高めることも可能であり、その汎用性や有用性が高く評価されつつあります。