同人用語の基礎知識

おじさん構文

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キモイ、痛いと何かと批判される 「おじさん構文」

 「おじさん構文」 とは、主に中高年男性 (おじさん) の メール やメッセージ、ネット書き込み などに見られる独特な文章を、揶揄・侮蔑的に表現した言葉です。 「構文」 とはなっていますが、単に文章作成の形式や構成、文法や文体だけを指さず、そこに中高年男性にありがちな思考や嗜好、こだわりなどが含まれている場合が多いでしょう。

 具体的な内容としては、

  • 口語調でだらだらと論点が定まらない長文、接続詞を多用した二転三転する内容、くどい注釈
  • 妙にテンションが高くフレンドリーを通り越して無礼な レベル のフランクさ
  • 句読点やかっこ書き、記号類、顔文字 や絵文字の多用
  • (笑)(爆)(汗)(泣)(涙) などの多用
  • 独特な擬音表現
  • 長い 自分語り
  • だじゃれ (おやじギャグ) や セルフツッコミ、古い ネット用語 の存在
  • ポエムな感じの表現
  • 漂う上から目線、下心が見え隠れする唐突な下ネタ
  • 返信を催促する 「お〜い(笑)」、既読スルーで拗ねる

などなど、およそ 「気持ち悪い文章」 の集大成の趣があります。

 文章表現の形式的な部分はともかく、これらを好む気分というか心理状態になりがちなのは、もちろん個々人の様々な理由や無意識な思いもあるのでしょうが、根本的には相手との距離感が分からない人が、自分なりの好意や打算を流行からずれた表現でぶつけてしまう結果でもあるのでしょう。

 本心を自分から露わにしたくはないけれど、一方で誤解は絶対にされたくない、要するに相手に察してもらいたい、もっと云うとこちらの特別な感情を対象とする人だけに分かって欲しい、認めて欲しい、それによって特別な関係であることを 共有 したい、共通の認識にしたいとのちょっと幼稚で独りよがりな願望の発露なのでしょう。 このあたりの感覚は、おじさん文化というよりは、おじさんの目から見た若い女性やおばさん (母親・オカン) のコミュニケーションやメール文化の影響 (模倣) もありそうです。 送る相手に合わせるわけですね。

 ネット上には 「これぞおじさん構文」 といった例やメール 晒し なども多々あります。 元々こうした 概念 が流行したのは、人気イラストレーターすれみさんが ツイッター に投稿した 「オジサンになりきろう講座」(2017年4月1日) が バズ ったことが大きな発端となっており、その後様々な考察が行われるようになっています。 ここでも上記の特徴を踏まえつつ例として文章を作ってみましょう。

ありがちな 「おじさん構文」 例文

〇〇ちゃんおはこんばんちわ!v(=∩_∩=)v

どもども埼玉の福山雅治です!(←オイ)

今日はいい天気ダネ!
こんな朝は、学生時代に過ごした夜見島の朝を思い出します!
あの頃は、青春だったなあ(遠い目(  ̄ − ̄) 今でも青春だけどNE!

ところで!最近ゴルフ始めたんだって???
なんだ〜〜早く教えてくれたらいいのに(泣)
ゴルフ歴=年齢の僕が手取り足取り教えてあげちゃうヨ!( ^,_ゝ^)
ベストスコア87の実力(酔っ払ってなければもっとイケたと思う!)は話してなかったカナ?
ついでに温泉に泊っておいし〜〜いお酒をチビチビ飲むのもイイネ!(日本酒サイコー)
浴衣姿の〇〇ちゃんと晩酌・・・・くうぅ〜〜〜〜たまりましぇ〜〜〜ん!!(爆)
おっと朝から本音が出すぎてしまった!汗タラタラ!反省!(笑)

じゃ温泉の予約しておくね〜〜〜〜!(核爆)
ナンチャッテ!(^^)!☆(汗)

前時代的な若者のノリは、現役若者世代にはただただ寒いだけ…?

 このあたりの文章については、1974年から1985年まで発行されたサブカルチャー雑誌 「ビックリハウス」 やその周辺の文章との類似点、あるいはその影響を相互に受けたと思われるエロ雑誌の風俗系のルポ・紹介記事、80年代に流行した椎名誠さんを代表とする昭和軽薄体と呼ばれる小説やエッセイの文体と ノリ が似ており、年代的にその影響を受けたか、あるいは勘違いした劣化コピーだと考える人は多いようです (実際はだいぶ違いますが)。

 ところで当時これらの文章 (とくにエロ雑誌) に触れた現在の 「おじさん構文」 の使い手も、別にこれらの文章を当時必ずしも 「イケてる」 と思って模倣していなかった点は、指摘したいポイントです。 当時若者だった彼らは、これらの文章を 「ちょっと キモい な」 と 普通に 受け取って、あえて露悪的に使っていたんですね。 若者があえて古臭いオヤジギャグを使ってギャップで笑わせるようなもので、「自分が若者の側にいる」 と確信しているからこそできる芸当だとも云えます。 古臭いおやじギャグを古臭いおやじが発したら、ただの古臭いおやじギャグです (これはベクトルが反対側となる、幼児化 して子供言葉や幼児言葉を使いがちなのと同じ理由です)。

 こうした 「くだけた口語調の文章」 は、広い意味での 「言文一致」 の流れだとも云えますが、若い頃にこれらの文章に触れていて、かつ1990年代末から2000年代初めの露悪的なネット文章 (一番キモい奴が 優勝 みたいなノリ) の洗礼を浴び、おまけに 「自分はまだ若い!」 と強く思い込んで イキり がちな中高年男性なら、こういう文章をひねり出す素地はできちゃうよなとは思います。 要するに 「前時代的な自分の考える若者のノリ」 で書いた文章が若い世代から字面通り、そのまんまの言葉として受け取られ、さらに意図も見透かされて 「おっさん臭い」「気色悪い」 と見られ拒否されているというのが、「おじさん構文」 の姿なのでしょう。

 ちなみに 筆者 もその年代の洗礼を受けた人間であり、さすがにここまで クソ キモイ文章は書いたことはありませんが自分にも当てはまる傾向であり、また友人で似た文章を書く人が結構いたりして、ある年齢層以上には一定数いる感じです。 驚くべきことに、初期のネットの露悪的・おたく っぽい文章にほとんど触れていなくても同様の文章を書く人が少なくないことで、80年代から90年代の雑誌全盛期の影響は大きかったんだなと思うところはあります。 前述した相手との距離を掴めないままに 「自分の気持ちを明け透けに露わにしたくないけれど誤解もされたくない、察してほしい」 という子供じみた馴れ馴れしさに、こうした表現が良くも悪くもマッチしているのでしょう。

 これを 老害 と呼ぶ人もいますが、そういう人は若い頃から同じような文章を書いていましたし、筆者も若い頃から似たような傾向を持つ文章を書いていました。 ただしネットの普及以前は、一般の社会人が第三者に読ませるための個人的な文章を趣味で書くような機会がほとんどなかったので、この当時文章書きをしていた人は傾向が似つつも、それなりの読書量などを通じてもう少し洗練されていたような気はします。 確信はありませんが。 おたく趣味に拒否反応のある人でおじさん構文を書く人もいますから、個々人の年齢による劣化や趣味傾向などではなく、単に世代とその頃に触れていた文化の影響が大きいのかなと感じます。

 顔文字や絵文字の多用はネットの影響というよりは、対象である若い女性 (接点がある水商売の女性とか女性アイドル) のメールや SNS の文面文化をやや過剰に取り入れて、あるいはそこから生じた文章的特徴を演じて、自分も同じ側の人間なんだとアピールして気に入ってもらうためのある種の擬態なのでしょう (なので具体的な話になったり口喧嘩みたいな状況になると、普通に素の文章になったりもします)。

 また確かにキモイはキモイのですが、相手が同年代で友人や飲み友達といった 「俺お前」 の濃密な間柄だったりすると、それはそれでさほど違和感はないと云うか、世代的にこういうノリが楽しい状況もなくはなかったりもします。 「分かってる者同士」 による 「俺ってクソだろ?」「バカヤロ、俺の方がもっとクソだよ」 の クソによる マウント、あるいはその後何かを成し遂げ成功したにせよ失敗して落ちぶれたにせよ、子供の頃からの友はいつまで経っても友だとの、「俺とお前と大五郎」 の価値観です。

 逆に若い人のあまりに短くそっけない、あるいは気取っていて自分をよく見せようとする文章に違和感や不快感を持つ人もいます。 これはどちらが良い悪いではなく世代的な文化や年齢による価値観の違いであり、「この年代にはこういう文章が当たり前みたいな意識のまま過ごし、さらに時間を経て誰からも指摘をされず極端に熟成されてしまった人も一定数いる」 というだけなのかなとも思います。 というか、使う言葉やキーワードを少し変えて、ちょっと説教っぽく体調を気遣う文言を入れたら、オカンメール (母親が息子に送るメール) と見分けがつかないようなものもありますしw

 ただまぁ、このノリのメールやメッセージを若い人が年長者や目上の立場の男性から投げつけられたら、ましてそれが中年男性から若い女性に対してであったりしたら、不快やいらだちを通り越して恐怖までを感じてしまうのはよくわかります。

悪気がなくてもセクハラ扱いされる時代、変なメールはやめましょう

 おじさんから若い女性への下心ありな願望を記したキモイメールは、俗に ロミオメール とか ロミオ短冊 などと呼びます。 定期的に自分勝手な近況報告を送り続けるものは 俺通信 と呼びます。 いずれも下心や悪気がなかったとしても、距離感の掴めないおじさんとの距離は、不快だと思う方が可能な限りつけるようにしないと状況は改善しないでしょう。 とはいえ相手が会社の上司といった力の上下関係があるような場合も多く、それはそれで辛い感じです。 下心や悪気があるなら、もう論外ではありますが。

 一方、おじさん側としても、仕事の連絡にせよなんにせよ、年が離れた家族でもない相手、ましてや年下の異性に自分や相手のプライベートな部分を交えた連絡をするのは 「ありえない」 というのは、常識で持っておきたいものです。 どうしてもしたければ、お金を持って夜の盛り場にでも繰り出せば良い話です。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2017年11月10日)
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