アナログからデジタル、互換性があったりなかったり 「動画形式」
「動画形式」 あるいは 「動画フォーマット」 とは、動画 (映像) を記録するための規格や仕様のことです。 個人が映像を映像として扱ったり、カメラによる撮影や 編集 などの加工ができるようになったのは、おおむね 16mm や 8mm といった個人向けの銀塩フィルムカメラ (ホームムービー) からです。 その後も ビデオデッキ やカメラ、電子化 の後はパソコンやデジカメ、携帯電話やスマホ (スマートフォン) など、コンピュータ機器で扱える様々な形式 (圧縮方法) が登場しています。
これらは映像関連企業が独自仕様として 開発 したり、それらの企業や研究グループが集まって規格のための団体を設立して策定したりします。 それぞれの形式 (フォーマット) との間に 互換性 はあったりなかったりですが、どんな形式であっても再生さえできれば、最終的にはアナログの形にいったん変換することで同一のものとして扱うことができます。 ただしそれに伴う画質や音質の著しい劣化が生じることもあります。
画面比率 (アスペクト比) とコマ数 (フレームレート)
画面サイズや画面の縦横比率は動画形式と直接的な関係はありませんが、縦横比率 (アスペクト比) については写真撮影などに使われる銀塩の 35mmフィルムのアスペクト比 (3:2) やそれに近い 4:3 が写真や映画、テレビ、パソコンの画面などで長らく採用されてきました。 その後テレビがワイド画面 (16:9) になったり、Flash で縦横比の自由度が高まったり、携帯電話やスマホの時代に縦長画面が広く使われるようになるなど、大きな変化が生じています。
再生速度 (フレームレート/ 1秒間に何コマの静止画があるか) も形式や時代によって異なります。 映画は 24fps、テレビ番組やビデオでは 30fps 程度で、個人で使っていた8ミリ映画などでは 24fps もあれば 18fps のものもあります。 一般的にはおおむね 18fps が多かったでしょう。 完全なデジタル時代となるとフレームレートはどんどん上がり、60fps とか 120fps・240fps に達するものもあります。
コマ数が増えるほど動画の動きはなめらかになりますが、逆にダイナミックでメリハリの利いた動きになりづらくなったりします。 24fps で作られた映画と 30fps や 60fps の地デジ放送のデジタル撮影ドラマなどは、個人の好みもあるのでしょうが、前者が好みだという人も多いでしょう。 コマ数が少なすぎて カクカク するのも違和感を覚えますが、逆にコマ数を増やしても ぬるぬる するだけで不自然な動きになったりもします。
アナログのフィルム時代
業務用の機材や動画 (映画) 用の規格はともかく、一般の間で1970年代頃まで主流だったのは、ホームムービーとか8ミリ映画と呼ばれる 8mm 銀塩フィルムを用いた個人向けの映画制作用のカメラや、それを見るための映写機用のフィルムです。 日本においてはアメリカのコダックが開発販売していたスーパー8と、日本の富士写真フィルムが開発販売したフジカシングル8が シェア を二分していました。 当初は モノクロ でしたが、後にカラー版も並行して販売されるようになっています。
どちらも同じ8ミリ幅で映写機も同じものが使えますが、カメラはそれ専用のものを選ぶ必要があり、またスーパー8とシングル8のフィルムを編集でつなげることも推奨はされない感じでした (厚みが違うので上映中に焦点がズレたりフィルム送りの速度が変わったり、思わぬ トラブル が生じる可能性があります (最悪なのは映写機が巻き込んでフィルムが汚損する)。
日本で普及していたのはシングル8で、フィルムはカセットに入っていて、カメラにワンタッチで装着することができました。 撮影後は街のカメラ屋さんに現像を依頼し、数日から1週間ほどで戻ってきた現像済みフィルムを映写機にかけて上映します。 編集する場合は、エディターと呼ばれる小さな映像確認用のスクリーンがついた機器でシーンを確認しながら、必要な個所のフィルムを切ってつなぎ合わせます。 そのための機器はスプライサーと呼びます。 つなぎ合わせるといってもセロハンテープのような接合用テープで貼り付ける形で、いかにもアナログな編集作業といった感じです。
なお撮影用フィルムはフィルムなので映像しか記録できません。 音声を記録する場合には、別途録音機 (時代的にオープンリールのもの) が必要です。 映像と音声をシンクロさせるためにはオープンリールにかけた磁気テープの編集も必要で、上映する場合は映像と音声を別の機器で別に再生して同期させる必要があります。 業務用の高精度な機器ならともかく、一般人 が手にする民生用製品は精度もそこそこで、再生しているうちに徐々に 絵 と音がズレてきてしまいます。 なので上映中は誰かがつきっきりでテープ送り速度の微調整 (おおむね音声のオープンリール側で調整する) したり、多少の ラグ が生じても問題のない 作品 にする必要があります。
その後、フィルムの端に録音用の音声トラックとして磁気コーティングされた部分を持つフィルム (サウンドフィルム) やそのためのカメラや映写機が登場したり、音声トラックに光学的な記録ができるものなども登場しました。 ただしフィルムも機材も高額で、かつ8ミリ映画の末期に近い時期の登場だったこともあり、無音 (サイレント) な映像に留まることも多かったかもしれません。 筆者 は8ミリをやっていたので何度か自主制作映画を創りましたが、音つきはほんの僅かで、ある程度の長さがあって人に見てもらうのが前提の作品の場合はオープンリールで音声を同期させる形になっていました (一応カメラも映写機も磁気サウンド対応機器ではあったのですが、サウンドフィルムが高くて宝の持ち腐れでした…)。
なお当時はビデオもありませんから、テレビの録画にも8ミリ映画が使われていました。 とはいえフィルム1本に記録できるのは僅か3分間ほどで、フィルム代と現像代を考えると、とても実用性はありませんでした。 どうしても保存したい アニメ や特撮があった場合、音声だけ録音してあとは想像力や雑誌の記事でカバーみたいな感じでしたね。
ホームビデオの登場と、アナログの磁気テープの時代
8ミリ映画の次に民間で広く使われたのは、1975年に登場した Betamax 方式、1976年の VHS 方式に代表される、ビデオ用の磁気テープです。 それ以前にも磁気テープがオープンリール式のものやカセット式の Uマチック、時代を下ってカメラ用に普及した8ミリビデオ (Video8) があります。 それぞれには上位規格もあり、Betamax 方式では ED Beta、VHS には S-VHS や W-VHS、8ミリには HI-8 があります (一部がデジタル規格化したものもあります)。
後にビデオもデジタル化しますが (DV/ Digital Video 規格)、当初はテープ方式での記録で価格も高く、また当時のパソコンでは スペック的 に動画の扱いにあれこれ制限がある上に ネット の速度も遅くて、高画質の長時間動画を発表できるような 環境 にありませんでした。 それでも 機材オタ は頑張って機材を揃え環境を 整え ていましたが、自分は対応できても、それをネットで見る他人がそうでなければ意味がありません。 大容量となる長時間のデータをネットでやり取りするのはもう少し時間が必要でしたね。
なおビデオに関するあれやこれやは ビデオデッキ 項目もご覧ください。
デジタルとネットの時代
IT が持てはやされ、本格的なデジタル時代となると、パソコンやネットに適したフォーマットが様々登場します。 これらはその後状況が変わって現在は廃れてしまったものもありますが (Flash や FLV (Flash Video) など)、いずれも同じパソコン上で扱え、またある程度の互換性も確保されており、同じデータとして扱える点が大きなメリットでしょう。
代表的なフォーマットとしては、MP4、AVI、MOV、WMV、MKV、FLV などが挙げられます (それぞれ後述します)。 これらは動画を圧縮する技術 (コーデック) によって区別されています。 それぞれのフォーマットには特有の特徴や利点、あるいはデメリットなどもあるため、用途に応じて選択することが重要です。 とはいえ手持ちの機材で制限されることも多く、画面サイズや 解像度、画質や音質を可能な限り維持したまま変換するためのソフトウェアとともに用いることとなるでしょう。
なお一般的な動画形式の他に、画像 のための規格を拡張した独特なフォーマットもあります。 代表的なのは GIF 形式の画像フォーマットを拡張した動画GIF (アニメGIF) で、1つの画像ファイルに複数の画像とそれぞれの表示時間データを同梱し、通常の画像ビュアーやブラウザでそのまま動く映像として利用できるものです。 この他、PNG を拡張した APNG、WebP のアニメ機能なども同等の取り扱いが可能となっています。 これらは動画というよりは 「動く画像」 といった扱いがされるものでしょう。
コンピュータで使われる代表的な動画ファイル形式 (フォーマット)
MPEG-4
MPEG-4 はもっとも広く使用されている動画フォーマットの一つです。 ファイルの拡張子は .mp4。 高い圧縮率を持つため比較的高い品質を保ちながらファイルサイズをかなり小さくすることができます。 圧倒的に普及しているため、ほぼすべてのデバイスやプラットフォームで再生可能で、ストリーミング (受信しながら同時に再生) にも適しています。 映画や動画共有イトなどで多く使用されています。 またこの規格の一部として、H.264 (MPEG-4 AVC) という動画圧縮標準規格もあります。
MPEG-2
MPEG-4 以前から使われている規格で、ISO/IECのMPEG委員会が策定した標準規格です。 拡張子は .mpg または .mpeg (MPEG2-PS) あるいは .ts、.m2t、.m2ts (MPEG2-TS) です。 圧縮率は MPEG-4 に及びませんが、高画質なのが特徴です。 DVD といった 円盤メディア で販売されるソフトや CS放送、ハイビジョン放送などで用いられます。 これの前身となる MPEG-1 もありますが、現在はほぼ見かけなくなりました。 なお MP2、及びその後継の MP3 は音声フォーマットとなっています。
AVI (Audio Video Interleave)
マイクロソフトによって開発されたパソコン時代初期から存在する代表的なフォーマットのひとつです。 拡張子は .avi。動画と音声を同期して保存できますが、圧縮効率があまり良くないため、非圧縮動画として扱われがちです。 ファイルサイズも巨大になりがちで、ちょっとした長時間プレイした ゲーム の様子をキャプチャしようものなら、HDD がパンパンに膨れ上がったりもします。 高品質の動画が求められる場面では有利ですが、ネットに アップロード したりストリーミングに使うのは難しいでしょう。 もっぱらローカル環境でのパソコンで、編集して MPEG-4 などに書き出す前の、元ファイルとして使うことが多いフォーマットです。
MOV
アップルが開発した QuickTime フォーマットで、主に Mac (パソコンやスマホ、タブレット) といったデバイスで使用されます。 拡張子は .mov です。 iPhone で 普通 に動画を撮影したらこれになります。 高品質な動画と音声の取り扱いが可能で編集にも向いていますが、AVI 同様にファイルサイズが大きく、また Windows 環境での互換性にやや欠けることがあります。 他フォーマットに変換する際はソフトやハードとの相性もありますから、事前に良く調べて導入するようにしましょう。
WMV (Windows Media Video)
WMVは マイクロソフトが開発したフォーマットで、主に Windows 環境で利用されます。 Win における標準フォーマットと呼んでよいでしょう。 映像の圧縮率が比較的高く、ファイルサイズも小さくできます。 拡張子は .wmv です。 一方で Mac や Linux ではサポートが限られており、iPhone といった モバイル な環境で動画を扱う人は、見たことがないという人も少なくないでしょう。
MKV (Matroska)
様々なコーデックをサポートしている、柔軟性の高いフォーマットです。 拡張子は .mky です。 テロップ (字幕) や複数音声トラックを埋め込むことができ、映画やアニメなどでよく使用されています。 ファイルサイズもおおむね小さくできます。 ただし再生できるデバイスが少ないため、対応する機器に合わせて変換して用いることが多いかもしれません。
FLV (Flash Video)
かつては YouTube などで広く使用されていたフォーマットです。 拡張子は .flv です。 極めて軽量でストリーミングにも適しており、早いバッファリングが可能です。 しかし iPhone が非対応でスマホ時代に Flash 自体の存在感や技術が衰退したため、現在ではあまり使われなくなっています。 とくに Adobe Flash Player (フラッシュプレーヤー) のサポート終了 (2020年12月31日) の後は、大手サービスで積極的に対応しているところはなくなっています。
アナログからデジタルへ、ローカルからネットへと時代が変わる中、様々な動画フォーマットが現れては消えて行っています。 ただし作品自体は何らかの形で残るものです。 自分が録画や撮影したものはもちろん、放送されたり販売された動画フォーマットを用途や視聴環境に合わせて適切に選ぶことが、より良き動画ライフの近道でしょう。
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