同じストロー使っただけでドキドキした頃に戻りたい… 「間接キス」
「間接キス」 とは、当人同士が直接 キス (口づけ) をしていないにもかかわらず、同じコップやストロー、箸、食べ物などに口をつけることで、「間接的にキスをした」 とみなす日本の若者特有の 概念 あるいは一種の言葉遊びです。
「間接」+「キス」という分かりやすくシンプルな組み合わせで、比較的新しい時代の和洋ミックス表現と考えられています。 明確な初出は特定しにくいですが、昭和 の時代には小学生高学年から中学・高校あたりの児童・生徒の間の異性間の恋愛に関する感情が乗った話や冷やかし、からかいに使われたり、少女漫画や恋愛ラブコメディを中心とした マンガ や アニメ、あるいは若者向けの 学園もの のドラマなどでも触れられ、広がるようになっています。
言葉それ自体は、主に思春期の男女間で、恋愛感情を伴う軽い冗談やドキドキ体験として使われます。 ありがちなのは一緒にファーストフードやファミレスといった飲食店に入って友達と同じジュースや食べ物を一緒に口にするとか、好きな人が使った箸で食べ物を食べる、ペットボトルの回し飲みをするなどです。 途中で誰かがそれを見て 「間接キスだね」 とはやし立てたり、それによって当人同士が意識してしまったりするというのが、文化的な お約束 となっています。 日本以外、とくにキスが 日常 のものとして定着している欧米においても同様の軽い恋愛的な ニュアンス を楽しむ感覚はあるようですが、「間接キス」 という明確な言葉として定義され日常的に使われるのは日本独自と云えるかもしれません。
またほとんど犯罪行為に近いのですが、一方がその場を離れて食べ残したものに口をつける、誰もいない教室に入って意中の異性の机の中や通学用の バッグ から音楽の授業で使う縦笛などを取り出して舐めるなどもあります。 相手がその場にいて周囲からはやし立てられる 「明るい間接キス」 に比べると、こちらはずいぶんと暗い 変態 じみた間接キスですが、実際に行う人がどのくらいいるのかはともかく、少なくとも男性の間では 「さすがに実際にはやらなかったけど片思い中の相手のそれを舐めたくなった」 と思う人はそれなりにいる印象です。
一方、男同士の場合、ひと昔前の喫煙者が多かった時代には、同じタバコを回し飲みするのも男同士の家族的な友情、強い絆だと感じられ、特別な意味や感情をそこから感じ取ることもあります。 そもそも同じ杯で同じ酒を飲むなどは、武士の時代からの主従や義兄弟、相棒、盟友、同格の親友といった特別な意味を持つ確認作業や儀式のひとつでもありました。
思春期の頃のドキドキ…相手から生理的に拒否されない喜び
間接キスがとくに 青春 真っ只中の思春期の頃に意識されたり感情に 刺さる のは、いわゆる ABC と呼ばれる性行為に興味はありつつも至っておらず、あるいは片思いはしていても正式に誰かと交際した経験もなく、それらに対する漠然とした憧れや 「少しでも好きな相手に近づきたい、接触したい」 との感情があります。
ただしもっと根源的に云えば、家族以外の他人、それも異性が、同じものに口をつけても良いと思う程度にはこちらに親しみを感じている、あるいは少なくとも生理的・衛生的な嫌悪や忌避感情を持っていないという 「証」 と受け取れる喜びがベースにあるのでしょう。 そもそも間接キスを発端に恋心が芽生えたり性的な感情に目覚めることすらある点を考えると、恋愛感情や エロ っぽい劣情より先に 「自分は生理的に受け入れられている」 という喜びが大きいのではと思います。 前述した相手がいない場で縦笛などを舐める行為が気持ち悪いのは、隠れてこそこそと行う卑劣さと、その 「受け入れる」 という部分が一切なく一方的な感情だけがあるからに外なりません。
人は自分に好意を持つ人を好きになりがちですし、とくに思春期というアイデンティティが大人に向けて固められていく中で、自分が他人から受け入れられたという喜びは 承認欲求 を満たす極めて大きな要素でもあります。 逆に相手から真顔で 「キモイ」「生理的に無理」 などと拒否されたり無言で口を拭ったりうがいをされる、ストローを捨てられるなどされると、わりと強めの心の傷・トラウマ としてずっとそれが残ることもあります。
まぁこのあたりは小中学校、人によっては高校や大学あたりになってもその傾向が残ることはありますが、交際しているのを 学校 でおおっぴらにしていないだけで、実際は交際やキスどころかそれ以上の行為をすでに済ませているような 「おませ」 な人が中学あたりからポツポツと、高校ともなるとそれなりの人数がいたりするし、そういう人にとってはキスとか間接キスで大盛り上がりする 恋人いない歴=年齢 で 童貞・処女 な友人らがひどく子供っぽく見えたりして、結構温度差があったりもします。 誰かが 「お、間接キスじゃーん」 とはやし立てたところで、「それが何か?」「ガキかよ」 みたいなクールな態度であしらわれると白けたり、あるいは急に子供っぽい自分が恥ずかしくなってそれ以降間接キスを云わなくなるみたいな切ない状況もあります。
ちなみに大人になってあれこれを経験した人間が間接キスを意識しなくなるかと云えば、そりゃ個人差はあるでしょうがやっぱりずっとその感覚は残るものだと思います。 ただ大人になると食べ物や飲み物の回し食いや回し飲みなどあまりしなくなりますし、子供の頃のような濃密なスキンシップを伴う交友関係を新しく作ることもほとんど、あるいは全くなくなります。 間接キスの機会がそもそもありません。 とはいえ職場にせよ 趣味 の場にせよ、新しい人との出会いの中で相手の性別が何であれ間接キスの瞬間が訪れると、何となくほっと安堵するというか、相手から受け入れられた喜びを感じることはあります。
ただしこのあたりは個人差があまりに大きいので、何とも云えない部分があります。 そもそも間接キスや相手への好き嫌いの感情以前に、他人の身体が一度でも触れたものに口をつけたくないという人も少なくありません。 間接キスとかに無頓着な人はおおむね自他の境界があいまいで距離感がおかしかったり ノンデリ な傾向が強めだったりして、そういう人との付き合いが苦手な人はほんとうに苦手なようです。
筆者 などは元々かなりの潔癖症だったのですが、治安 の悪い 環境 で育ったせいかあまり気にしなくなり、今では間接キスは全く気にならないし他人が握ったおにぎりも問題なく食べられます。 また頼まれて日用品や 下着 を貸したり一緒に洗濯するのも親しさからくる 雑 な扱いも気にならないどころかちょっとした喜びを感じる方です。 そもそも友人や交際相手とそれぞれの家に 宿泊 する場合は気にする方が何かと不自由です。
とはいえ周囲にそれが無理な人もいて、元神経質で潔癖症だっただけに 「それは無理」 という彼らの心情もわかります。 自分から積極的に間接キス的な行動は取らないようにしています。 無意識に出たものならともかく、意識的に行うのも何だか子供っぽい 試し行為 みたいで自分の趣味に合わない部分もありますし。 それでもまだ自分が口をつけたものに何の躊躇もなく口をつける相手にはやっぱりどこか好感を覚えるので、そうした感覚はまだ頭の中に残っているんだろうなという気はします。





