学校を舞台にした創作物の王道中の王道…白い鳩はいずこ? 「学園もの」
「学園」 あるいは 「学園もの」 とは、主に中学校から高校 (あるいは大学を含むことも) までの 学校 を 舞台 とした 作品、あるいは中学生や高校生の登場人物や キャラクター、セーラー服 や ブレザー服 といった学校の 制服 などを中心に扱う ジャンル のことです。 「青春もの」「青春学園もの」 と呼ぶこともあります。
ただし アニメ や ゲーム、同人 などの作品で人気のあるものは、一般的に登場人物が学校に通う年齢くらいの 設定 である場合が極端に多いので、単に学校やその年齢のキャラが出てくるだけでは必ずしもこのジャンルに含まれるものではなかったりもします。 また小学校を含める考え方もありますが、この場合は子供ものとかキッズものといった呼び方で、いわゆる学園ものとは一線を画した別の カテゴリ とされるケースが多いでしょう。
学園ものの作品の傾向として、形式上教師や先生、あるいは一部の生徒が 主人公 としてクローズアップされつつも、おおむね同じ学校やクラスの仲間たちが織りなす人間模様を描写した群像劇になり、もっぱら恋愛 (あるいは性) や友情、仲間や家族との絆、子供から大人への成長や葛藤、将来の夢と進路に対する不安などなど、思春期特有のあれこれを描くものとなっています。 またそれらを 物語 の中で学校の各種行事 (入学から文化祭や体育祭、試験や宿題、部活、夏冬の長期休暇や修学旅行といった 公式 なものから、初詣やバレンタイン、クリスマスなどの歳時的なもの、誰かの誕生日など) と絡めながら描く点も大きな特徴です。
学校ものではなく学園ものと呼ぶのは、架空の学校に私立が選ばれやすく、また私立学校の名前に学園が使いやすかったこと、学校を舞台とした作品の類型化の中で 「〇〇学園」 が登場する作品が例として挙げられていたこと、また学校では専門学校や各種学校など様々な学校が存在していて指し示す範囲が広すぎるため、学園の方が ニュアンス として使いやすさがあったためでもあったのでしょう。 言葉としては実写の映画やドラマ (学園劇とか学園ドラマ) でよく使われていて、この場合は 「青春劇」 とか 「青春ドラマ」(あるいは青春群像劇など) と同義の扱いとなっています。
なお部活、とくにスポーツ系の部活を中心テーマとした作品の場合は、スポーツものとかスポ根もの (スポーツ 根性 もの) と呼んで、これらとはまた別の区分けがされることもあります。 恋愛をテーマとした軽いタッチのコメディー作品の場合は学園ラブコメ、不良やヤンキーらのケンカが主題ならヤンキーものみたいに呼ぶこともあります。
現在に続く学園ものに大きな影響を与えた存在として、1947年に発表された石坂洋次郎さんの小説と、それを原作とする映画 「青い山脈」(1949年) やドラマがあります。 また石原慎太郎さんの小説を原作とする1965年の映画や、日本テレビ系のテレビドラマ 「青春とはなんだ」、その人気を受けてシリーズ化した諸作品 (「これが青春だ」「でっかい青春」 などなど) もあります。 とりわけ1972年のシリーズ第6弾となる 「飛び出せ!青春」 は空前の人気となり、第一話のタイトルで作品テーマでもある 「レッツ・ビギン」(Let's begin!/ さあ、始めましょう) は流行語となり、主題歌である 「太陽がくれた季節」(青い三角定規) も大ヒット。 昭和 の青春群像ドラマの集大成の感があります。
学校を舞台にした物語はもちろんこれ以前にもありましたが、戦前・戦中は戦後のような娯楽のための コンテンツ がさほど充実していなかったこと、恋愛や友情、先生と生徒、家族関係といった部分の価値観や道徳観が戦後とはあまりに隔たっていることから、直接の強い影響は与えていないという考え方が多いかもしれません。 同じ国なので連続性はもちろんありますが、青春群像ではあっても青春学園群像ではなかったみたいな感じですね。 とくに戦後生まれの若者にとって、個人の楽しみや悩みよりお国のためみたいな戦前・戦中のあれこれは忌むべきものみたいな印象が強い時代でもありました。
「学校」 と 「学園」
「学園」 という言葉自体は、岐阜県美濃地方や愛知県尾張地方を中心に甚大な被害を出した濃尾大震災 (1891年10月28日/ 明治24年) で親を失った少女たちを救済するため、キリスト教精神に基づいて石井亮一・筆子夫妻によって同年に設立された聖三一孤女学院を前身とする滝乃川学園が元となっています。
当初は孤女学院という名称の通り、身寄りのない少女の保護や教育を行っていたものの、その中に知的障碍児がいたため、その後は知的障碍児教育のための日本初の学校としても活動するようになり、それに伴って1897年に滝乃川学園 (現:社会福祉法人滝乃川学園) と改名しています。 この名称に用いられたものが日本最初の学園とされます。 以降はもっぱら私立教育機関の名称として学園が定着する契機となっています。
なお学校と学園とで意味に違いはありません。 漢字の学はまなびであり、校や園は何らかの 囲い とか人々の集団の交わりなどを意味します。 学園と共に私立学校でよく使われる学院の院も、土塀といった囲いや建物、ひいてはそこに集う人々といった意味があります。 また西洋における学園都市や東洋や日本の学院、あるいは学校そのものが、何らかの宗教を元にして生まれたり発展した点はあまり違いありません。 そもそも日本の仏教寺院なども、ご本尊 を安置する祈りの場であると同時に俗世間から隔離された修行=学びの場です。
ちなみに日本で一番古い学校は、どの定義で学校とするかによっても異なりますが、庶民も通える私的に設立された学校としては、弘法大師・空海が庶民教育のために開いた綜藝種智院 (828年) が記録に残る日本初とされます。
想定読者層と物語の登場人物・舞台の圧倒的便利さ
一般に学園ものや学校ものが多いのは、マンガ にせよアニメにせよドラマにせよ、作品の主なターゲット層がそのくらいの年代で、感情移入 しやすい設定だからという点があります。 小学生が良く読む雑誌なら小学生が活躍するマンガに人気が出るでしょうし、中高生がターゲットなら、その年代の登場人物がキャラに選ばれやすいでしょう。
マンガやアニメは子供の物だといった印象は、時代を経て青年漫画誌や青年向け、あるいは大人向けのマンガやアニメの登場によって薄れています。 それでも市場としては非常に大きなものですが、少子高齢化や趣味の多様化などにより、情勢が変わってきました。 その後は大人や大人の社会を テーマ とした作品も増えますが、一方で学園や学校を舞台にしつつも語られる内容に大人の鑑賞に堪え大人も興味を持つような要素を含めるような作品も登場するようになっています。 純粋な学園ものや学校ものというよりも、それを舞台装置、ある種のプラットフォームや テンプレート として利用したような作品の作り方です。
この中学から高校の、いわゆる青春時代とか思春期の頃を舞台とするのは、同世代はもとより大人でもその時期を経験していて誰でも自分ゴト化できること、そして思春期特有の揺れ動く感情の起伏や激しさなどが、物語を創る上で都合が良く、また 映える ものでもあるからでしょう。 大の大人だって好きな相手と目が合った、手が少し触れたでドキドキしたって構いませんが、それが思春期のキャラならわざとらしくなく、また自然な形で表現できるという部分があります。
それ以外にも、アニメなら 作画 をする際に登場人物のほとんどが同じ制服を着ていて描きやすいですし、体育祭や文化祭、修学旅行、そして卒業式といった 学校行事、お正月やバレンタインやクリスマスといった歳時の各種 イベント を、無理なく自然に取り入れられるのも魅力です。 その結果というわけでもないのでしょうが、入学式以外の多くの校内行事や歳時イベントが扱いやすい中学2年生の 14歳、高校2年生の 17歳 あたりの年齢を取り上げることも多いかもしれません。
関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック
〇 補足/ 日本における標準的な各学校・学年の年齢一覧





