性行為の回数を数えて記録…「正の字」
「正」「正の字」 とは、18禁・エロ な文脈においては、「性行為の回数を1進法でカウントするための記号」 として扱われる言葉・文字です。 日本や漢字圏の国では1から5までの数を順次記録するため、画数 (字画・点画) が5の正の字を使って数えるケースが多く (画線法)、それがそのまま性行為の回数カウントに流用された形です。
この数え方は1とか2といったアラビア数字による書き数と異なり、途中で消すことなく棒線を追加するだけで済むので、日常生活で必要になったちょっとしたカウント、例えば目まぐるしく得点が入るゲームスコアの リアルタイム での逐次記録などに使われたりします。
一般的な使い方としては、書き順通りに横・縦・横・縦・横の棒を追加して書き記します。 6以降は正の横にまた新しく正の字を書き始めてカウントします。 10なら正の字が2つ並び、11なら正の字が2つに横棒が1本の形となります。
欧米の場合は冊のような縦4本線・横斜1本線の記号を使ったり、四角形などの図形 (「Tally marks」(タリーマーク) を使って同じようにカウントします (国や文化圏によって異なる)。 これらも性行為のカウントとして使われる場合があります。 いずれもアレンジされたり特例的な使い方で6や10まで数えるパターンもありますが、あまり一般的ではないでしょう。
様々な画線法・タリーマークによる数え方 (左から1〜5)
日本や中国、台湾、韓国など漢字圏での画線法 | |
主にヨーロッパや北アメリカ オーストラリアなどで使われる画線法 | |
主にスペインや南米などで使われる画線法 |
なぜ 「正」 の字なのか
「正」 を数え文字として使うのは漢字圏である日本をはじめ中国、台湾、韓国で見られますが、それぞれがいつごろからこの字を使うようになったのか、なぜこの字を選んだのかについては不明な点も多いようです。 画数が5で、折れや曲がり、払いなど見間違いや誤解しそうな形状を含まない1本線や点だけで構成された字であれば何でも良さそうなものですが、漢字本来の意味 (正しく) が影響して正しく数えるとの含意を持っているのかもしれません。
ちなみに日本においては、商人を中心に江戸時代初期には 「正」 ではなく 「玉」(ただし漢字本来の玉とは書き順が異なる) が使われていました (「算元記」 1657年)。 その後 「正」 の字が広まりますが、どこからどのように広まったのかについては議論があります。
また 「玉」 を使い始めた理由もいくつか説があり、そろばんの珠から転じたものとか、帳簿を付ける際にお金を大切な 「玉」(ぎょく) に喩えてゲン (験) を担いだものなどが有力です。 日本におけるそろばんの急速な普及は、京都の豪商である角倉一族の出自である数学者 (和算家) 吉田光由による 「塵劫記」(1627年) の貢献が大きいとされますから (それ以前は算木を使用)、そろばんの珠説ならこのあたりから使われだしたものなのでしょう。
日本の主に江戸時代で使われていた玉の画線法 (通常の書き順とは異なる) |
江戸時代あたりを描いたエロ作品では、漢字の意味も含め、玉を使うとリアリティもアップしそうです。
「正」 の字を描く場合は…
これら文字を書く場所は、基本的には性行為を 受け の側で行った人 (男性女性問わず) の身体、主に性器のそばとなる太ももや下腹部部分となります。 もっぱら男性向け作品における女性の キャラ で行われる場合が多いかもしれません。 これは性的な 公衆便所 や 肉便器 における 便所の落書き として認識されます。 ただし時代を下ると、男性向け作品の影響を受けた女性向け作品 (やおい・BL など) でも同様の表現をしばしば見かける場合があります。
一方、逆に 攻め側 となる男性キャラなどに、「撃墜マーク」(戦闘機が撃墜した敵戦闘機の数を誇示するために機体につけるカウントマーク) のような意味で身体に書く場合もあります。 これはヤリチンが絶倫を誇示したり征服した女体数を誇って自ら記す場合もあれば、肉体的には攻めだけれど精神的には受けであるキャラに対して、まるで種馬のごとく何度も相手から射精を強要されているのを示すために使うケースもあります。 ただし何らかの状況説明がないと 一枚絵 では少々わかりづらいですし、こちらの使い方はあまり一般的ではないでしょう。
いずれの場合も受け攻め1人ずつの2人プレイで行われることはあまりなく (淫乱 vs 絶倫の意味で行われることはあります)、もっぱら1 対 複数とか、複数 対 複数の輪姦や乱交で行われるケースが多いでしょう。 性行為回数が 「数えるほどの回数」 にならなければ、わざわざカウントする意味がないからです。
なぜ性行為をカウントするのか
なぜわざわざ身体に正の字で性行為 (もしくは射精回数) をカウントするのかですが、これは単純に、見た瞬間に 「性行為をやられまくっている」 というのをアピールすることができるからです。 それによって受け側キャラの置かれた性的な悲惨さや、逆に淫乱さを強調することができるでしょう。
とりわけ公衆便所や肉便器といった便所の落書きをする中で、様々な扇情的な文字 (例えば 「公衆便所」 や 「肉便器」 の他、「誰でもお使いください」「誰でも中出しOK」 とか) と並べて記すことで、「性的に弄ばれている」「15回犯られた」「25人目か」 というのを数量的にも明示することができます。 これは一枚絵で見ても状況や シチュエーション が容易にわかりますので、とても便利な 「お約束」 かも知れません。
使用済みコンドームをぶら下げるというカウント方法も
正の字に近い表現として、精液 の入った使用済みのコンドームを身体に張り付ける、ぶら下げるといった描写方法もあります。 数が多い場合、腰に巻き付けると腰蓑・スカート状になることから、コンドーム腰蓑とかコンドームスカート などと呼びます。 この場合も、それが10個なら10回性行為をしたという意味となり、正の字同様に太ももや下腹部に着ける場合が多いのですが、乳首にピアッシングしてそこからぶら下げたり、鉢巻をして頭に並べて吊るすなど、バリエーションは豊富です。
ただしコンドームを使っていて中だしではないため、色とりどりの使用済みコンドームが身体にいくつもついているという見た目のインパクトはありつつも、「正の字」 よりはまだ多少はマシかも知れませんし、そうでもないかも知れません。