相手の尊厳やアイデンティティを奪い壊す…「尊厳破壊」
「尊厳破壊」 あるいは 「破壊される尊厳」 とは、何かしらの人物なり対象物なりが、自分が自分であること、第三者や社会から認められ自他ともに存在理由とされているような本質的な部分を破壊すること、無視 してないものとして扱ってしまう状態を指す ネタ としての ネットスラング です。 似たような言葉に 「アイデンティティ破壊」(喪失) や 「茫然自失」「非人道的行為」 などもあります。
なお尊厳とは、そのまんまですが 尊く て厳かなこと、犯してはならないことで、人間の場合は自分や他人の人間として尊重されるべき価値そのもの、あるいは尊重する姿勢を意味します。 アイデンティティは、自分が自分であること、さらにはそうした自分が、他者や社会から認められているという感覚のことです。 日本語では「自我同一性」と呼ばれたり、「存在証明」と訳す人もいます。 いずれにせよこれらが失われた状態は、自分やその存在に対する意味や理由すらも同時に失われてしまうでしょう。
いったい私は何のために生まれてきたのか…奪われ壊される尊厳
ネタとしての尊厳破壊の例としては、食器乾燥機として販売されている商品を、プラモデルやフィギュア制作における塗装の乾燥用に使うといった 用途外使用 などに用いるのが代表的です。 本来その商品は洗い終えた食器を乾かして家事負担を軽減するために生まれたのに、本人 (?) の意思に反してプラモデルやフィギュアの乾燥をさせられている…。 「これは尊厳を破壊する悪しき行為だ」 との、やや 露悪的 なシャレやネタになっているのですね。 とりわけ模型や コスプレ、小物・アクセサリー作りといった有体・物理的な制作を伴う 趣味 ではこうした用途外使用が何かと多いため、その 界隈 ではとてもよく使われるフレーズとなっています。
あるいは商品の特徴や最大のアピール・セールスポイントとなっているような部分を意図的に無視する使い方を指すこともあります。 例えばさけるチーズを裂かずにそのまま食べる、とろけるチーズ (スライス) を溶かさずにそのまま食べる、プッチンプリンをプッチンしないで食べる、揚げずにからあげで揚げてしまう、減塩商品に塩をかけるなどです。 本来の食べ方ではない食べ方をされたりメリットを消されて舌鼓を打たれた日には、その屈辱感は心中を察して余りあるものがあります。
また一般的には添え物扱いされているものをメインに据え、本来メインであるはずのものを添え物のように扱うのも尊厳破壊と云えるかもしれません。 例えばサラダを美味しく食べるための 脇役 のような存在のマヨネーズを 主人公 のように扱い、サラダ本体である野菜を 「マヨネーズを美味しく食べるための雑草」 と呼ぶなどです。 これでは野菜さんの面目は丸つぶれ、雨の日も風の日も手塩にかけて育ててくれた農家さんに顔向けできません。
さらに悪質? なものでは、ボトルタイプのシャンプーやリンス、洗剤、あるいは飲料といった商品を使いきった後に、詰め替え用として売られている別銘柄の競合商品をそのまま補充・詰め替えるといったケースもあります。 熾烈な販売競争を繰り広げる競合他社製品を中身に詰められるボトルの気持ちを思うと暗澹たるものがあります (なお洗剤などは混ぜると危険なものがあるので、別の商品を詰め替えるなどは原則しないようにしましょう)。
同じように尊厳破壊をしたり、これから実行する尊厳破壊に手を貸せといった言葉で責め立てる場合もあります。 例えば 「きのこリゾットをきのこ抜きで作る」 とか、料理のレシピサイトで 「きのこ抜きできのこリゾットを作る方法はありませんか?」 と質問をするなどです。 この場合、単にその食材が嫌いだとか何らかのアレルギーがあるなどで、本人にとってはやむにやまれぬ事情がある場合もあります。 しかし、単に料理のための食材費をケチるために何でもかんでも安価な代用品で済ませようとする人もいて、その是非判断は微妙でしょう。
とくに牛肉前提の料理で 「それ豚肉や鶏肉でできますか?」、あるいはたまたま家にそれがあるだけであろう 「むね肉で代わりになりませんか?」「ささみでは無理ですか?」 などは、素材を選ぶ料理の尊厳破壊における 定番 のフレーズです。
コーヒー飲んで爆睡、目覚まし時計の隣で爆睡…
一方、ニュアンス はだいぶ異なりますが、似たような使い方として、コーヒーや眠気覚ましのためのカフェイン飲料とかエナジードリンクなどを飲んだ後に爆睡してしまうとか、目覚まし時計がガン無視されて起こすべき相手が熟睡している状態なども、尊厳破壊と呼ぶことがあります。 それらの飲料や時計が持つ効果効能を踏みにじるような行為をした人が、自らのふがいなさを 自虐 や露悪的なネタとして表現して使う訳ですね。
またこうした行為を結果的にでも繰り返すような人は、尊厳破壊マンなどと呼ぶこともあります。 目覚まし時計が鳴ってるのに無視して寝坊、婚活アプリを使ってるのに出会いが皆無、ダイエット食品を食べてるのに太っている、毛生え薬を使ってるのに ハゲ、みたいなケースがそれに該当します。 確かに自分が時計やアプリや薬ならば、その効果が全く現れず、期待を裏切って結果的に 「役立たず」 の立場に置かれるのはかなり辛く、尊厳破壊どころか無力感や罪悪感から自我や正気が保てなくなるかも知れません。
創作物における尊厳破壊
18禁 な 成人向け の マンガ などでは、尊厳破壊はそのままの意味で使われます。 すなわち キャラクター の尊厳や人格を奪ったり破壊するような行為です。 罵詈雑言や 人格攻撃 のような言葉で心を傷つける、身体の自由を奪って性的な辱めを与えるといった直接的な 凌辱・虐待 から、放置プレイ で無価値な存在のように扱う、土下座 させるなどが代表的です。
これらは創作物の架空のキャラに対するものであっても救いのない 鬱展開・胸糞 なものになりがちですが、お高く留まったお嬢様や御曹司、気高い戦士、もしくは生意気盛りな女児 (メスガキ) においては身の程を思い知らせるような描写 (わからせ) などとも複合し、比較的よくあるタイプの演出や表現、物語かもしれません。 とりわけ 全裸土下座 は、かなりポピュラーな表現でしょう。