同人用語の基礎知識

一気見/ イッキ見

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この週末はアニメ全話を通しで一気に… 「一気見」

 「一気見」「イッキ見」(いっきみ) とは、テレビ番組の アニメ や特撮、ドラマなど、複数話にわたって放映された コンテンツ を数話まとめて、もしくは全話まとめて一気に見るような視聴方法のことです。 「一挙見」 とも呼びます。 とくに第一話から最終回までの全てを一気に見る場合は 「全話一気見」 と呼んで区別する場合もあります。

 類似の言葉に 「マラソン視聴」「耐久視聴」 という言い回しもあります。 また英語では binge-watching (ビンジ・ウォッチング) と呼ぶ場合もあります。 いずれも一気見とほぼ同じような意味で使われますが、ただしこれらの言葉には 「単にテレビ放映を一日中漫然と見続けているだけ」 といったテレビ依存症の意味で使われることも多く、特定のアニメやドラマのシリーズのみを目的意識を持ち見続ける一気見とは、やや ニュアンス は異なるでしょう。 もっとも 「テレビ漬け」「過視聴」 という点では、あまり違いはありませんが。

 視聴のパターンとしては大きく2つがあります。 「この週末に全話制覇する!」 のようにあらかじめ目標や目的意識を持ってチャレンジするケースと、最初はそのつもりがなかったのに 「1話だけ楽しもうと見始めたら面白くて ハマって しまい、見るのを止められなくなった」 との、成り行きで一気見に至るケースです。 前者と違い後者は、結果的にいきなり一気見になるので、話数の多いコンテンツの場合は平日に徹夜で見るはめになったりして、日常生活への影響も大きなものとなります。

 なお マンガ や小説などの場合は、「一気読み」 となりますが、小説などの書籍類は1冊読み切るだけでも大変な時間がかかるボリュームを持つ作品もありますから、数冊まとめて読むケースはもちろん、単に一冊まるごと一気に読んだという意味で使うこともあります。

ビデオデッキの普及で、コンテンツの保存と連続視聴が可能に

 一気見自体は、おたく の世界では 1970年代後半から1980年代初めの ビデオ の普及とともに始まりました。 それまではテレビ放映に合わせて週に1話、あるいは再放送だとしても1日にせいぜい1話分程度しか視聴できなかったものが、動画を動画として個人が保存できるようになったことで、「一気に全部見るか」 が可能になった訳です。

 またこの頃、アニメやドラマなどが記録されたビデオテープをレンタルするお店が各地に次々と誕生し (当時はテレビ放映を録画したテープをダビング (複製) し、有償で貸し出す 著作権 違反の アングラ な独立系レンタルビデオショップがかなりありました)、これらを利用しての一気見も 「新しいテレビの楽しみ方」 として広がるようになりました。

 もっともこの頃のアニメは最低でも1年間 (4クール) は放映が続くようなタイトルが多かったので、シリーズ全体では48話ほどともなっていて、一気見もそれなりの覚悟がいるものでした。 30分のアニメ番組として OP (オープニング)や ED (エンディング)、CM などを飛ばしたとしても1話20分間以上、寝食忘れて見続けても丸一日がかり、数年続いたタイトルともなると数日かかりになります。

 2000年代以降の深夜アニメなどは1クール (12話程度) か2クール程度 (24話程度) の規模が多いので、同じ 「一気見」 でも昔のそれとは言葉の重みが違うでしょう。

 なお全話を一気見するには、当然ながらそのタイトルが完結 (放映終了) している必要があります。 したがって対象となるコンテンツは 「終わったコンテンツ」 となり、略して 「終わコン」 と呼ばれることもありました。 後に終わコン (オワコン) は、「人気がなくなり市場価値も話題性も失った過去の作品」「見捨てられた作品」 のような意味で使われるようになりますが、そうではない語義通りの 「完結したコンテンツ」 との意味で使われることもあったのでした。

 まだ続いていて終わっていないコンテンツの場合は、途中から見始めて面白いと感じた作品の過去話を一気見し、最新話に 「追いつく」 ような意味の一気見となります。

若者言葉としての 「一気」

 「一気」 という言葉自体は 普通 の日本語ですが、若者の間で 「一息に終わらせる」 という意味でとりたてて頻繁に使われるようになったのは、主に大学生などの若者やアルコールを扱う飲食店従業員の間でグラス一杯分のお酒を一息に飲み干すことを 「一気」(イッキ飲み) と呼ぶようになり、飲んでいる人の周りで 「イッキ! イッキ!」 といったコール (掛け声) ではやし立てる行為が流行してからでしょう。

 急性アルコール中毒の危険性や、大学の新入生歓迎コンパといった飲み会における イジメ問題 などもあり早い段階から問題視されていましたが、それが様々な事故や人気お笑い芸人のヒット曲 (とんねるずの 「一気!」 1984年12月5日) などで大きく話題になったのは1980年代初頭でした。

一気見がありふれた行為となり、それを意識した番組編成も

 1988年頃、アメリカの Couch Potatoes が日本に入る形で、カウチポテト族なる言葉が登場。 本来はカウチ (ソファー) に寝そべって無目的にテレビを見続ける姿がじゃがいものようだ、との ネガティブ な言葉だったものが、日本語化することで 「ソファーに座りポテトチップスを食べながら好きなテレビを見る」 との新しいライフスタイルを表す言葉として定着。

 時代が下ると 公式 のアニメやドラマのビデオシリーズが販売されたりレンタルされたり、さらには LD (レーザーディスク) や DVD なども登場。 誰でも簡単に続きもののコンテンツを一気見することができるようになりました。

 なおアニメの続編や劇場版、シリーズものの映画の続編などが作られ放映開始や封切られる前に、プロモーション の一環としてテレビや ネット で一挙放送という形で視聴者に一気見を促す配信が行われることもあります。 2000年代以降は インターネット も普及し YouTubeなど 動画サイト の利用も一般化、こうした視聴方法はますます広がる傾向にあります。

 とくに2010年代後半あたりからは、地上波放映されたアニメを中心に全13話とか全24話を、OP・ED・予告編も含め全てつなげた超長尺動画 (5時間とか10時間あるような動画) を公式チャンネルが期間限定などで配信するケースも増え、一気見がネット世代の視聴スタイルのひとつになった感があります。

「布教」 のため、友人知人に 「一気見」 の強要も

 おたくや 腐女子 の世界では、物語によりのめり込むことができるよう、同じアニメを一度ならず何度も一気見したり、さらには友人に好きな作品を 布教腐教) したり洗脳する目的で一気見させるなどの使い方も登場しています。 続けて見ているので 感情移入 しやすく、また複数のエピソードにまたがった伏線などの記憶も鮮明でわかりやすく、細切れに見るのとは全く違った魅力を発見できたり、異なる印象を持つ作品もあります。 好きな作品ならば、こうした視聴方法も楽しいでしょう。

 ちなみに 筆者 の一気見の最長記録は本編だけで200話に及ぶ 「銀河英雄伝説」(銀英伝) のアニメでしたが、寝るときやトイレ以外、食事中もほぼ見続ける感じでも1週間近くかかりました…。 若い頃はこういう楽しみ方もできると今は懐かしく思い出します

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年12月11日)
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