完売は本当なのか…情報戦・心理戦? ネタ用語化した 「なのは完売」
「なのは完売」(なのはかんばい) とは、ごくシンプルな意味としては、人気 アニメ 「魔法少女リリカルなのは」 の企業スペースの 限定 商品などが、コミケ (コミックマーケット) ですでに売り切れた、完売 したとの意味の言葉です。
魔法少女リリカルなのはA's 公式サイト |
直接の発端としては、2006年8月11日(金)〜13日(日) に開催された夏コミ(C70) において、「魔法少女リリカルなのはA's」(なのはシリーズ第二期) の企業ブースで行われた物販の様子からとなります。
この ブース では CD と抱き枕のカバーが販売されており、折からのなのは人気から人が殺到したのですが、販売制限を設けなかったために一人で大量に買う人 (転売屋) が現れ、在庫はすぐに底をつくことに。 これが大きな騒動となって、広く知られるようになりました。
ただし 同人 の世界にあって直接この騒動とは無関係だった参加者らや野次馬が、この阿鼻叫喚を面白がって見ていた部分も少なくなく、以降は、ネタ のような扱いでことさらに 「なのは完売」 を、コミケ開催期間を中心に連呼するようにもなりました。
他の 同人誌 や 同人グッズ の混雑具合をあらわすために使ったり、単なる 「コミケに参加して必死に物販の列に並ぶ人を 煽る ためのフレーズ」 として使ったり、「混雑状況を大げさにアピールするためのネタ用語」 として流布したり。 さらには 「ネット で行われる完売情報錯綜による情報戦・心理戦」 を揶揄するような意味で使われる場合もあり、なかなかに興味深い 同人用語 のひとつと云えるかも知れません。
情報戦・心理戦としての 「なのは完売」
コミケでは、人気のある ジャンル の企業スペース商品や同人誌、グッズにはファンが殺到し、頒布 を受ける (購入) ための長大な 待機列 (購入待機列、要するに行列) が、企業のブースや サークル の スペース 前に発生します。
頒布を希望する人はこの長大な列の 最後尾 について、自分の番が来るまでひたすら待つ訳ですが、遅く来て並び順が後になった人は待ち時間が長くなったり、自分の番が来る前に売り切れて手に入らなくなるなど、様々な困難を覚悟する必要があります。 その際、「売り切れた」 という嘘の情報を流すと、自分が待機列に到着する前に他の 一般参加者 が並ぶのを躊躇したり取りやめたり、あるいは行列から人が抜けて自分の番が早くなるかも知れません。
こうした 「偽の完売・混雑情報の流布」 は、人が殺到する 壁サークル の 新刊 や 限定本 などを中心にかなり昔から行われていたのですが、ネットの登場と普及、参加人数の増大と企業スペースの設置などによってさらに大規模かつ同時多発的になり、なかでも 2ちゃんねる の登場や ツイッター の普及などでコミケ参加者の リアルタイム の情報交換が盛んになると、「○○が完売した」「すでに待機列が○メートル伸びてる」 といった真偽不明の情報が飛び交うようになりました。
もっとも、実際に イベント会場 にいて希望の待機列に並んでいる人は、ある程度正確な情報を 現場 で確認できますから、コミケに参加したいが参加できなかった人などが、ネタ・シャレとして書き込んでいる場合も多かったりします (いわゆるエア参加、エアコミケ)。
とはいえ一分一秒を争う段階でのこうした情報は、現場で疲労などによって判断力が鈍っている場合にはそれなりに疑心暗鬼を生みますし、前日や早朝の 「並ぶ前から完売」 などは、ルール違反の 徹夜組 や フライング がすでに大挙して押し寄せていて、「始発電車で現地について並んでも無駄だ」 とのイメージをネタのふりをして刷り込み、「自分が欲しいサークルやジャンルに並ぶ人が少しでも少なくなるように」 との情報戦・心理戦を本気で仕掛けている部分もなくはありません。
とくに企業スペースや 大手サークル の人気本を狙う人の中には金儲けするための転売業者などもかなり混じっていますから、用心するに越したことはないでしょう。
情報が大事なのは戦 (いくさ) もコミケも同じ?
どこからが本当の情報で、どこからがネタやギャグなのか、あるいはライバルを惑わせ蹴落とすための情報戦なのか。 日頃どれだけ信頼できる情報源としての掲示板やツイッター アカウント を フォロー しているか、情報リテラシーに磨きをかけているかが問われる瞬間でもあるのでしょう。