どう見てもキャラの顔が別人… 「作画崩壊」
「作画崩壊」 とは、主に アニメ において、作画 が崩れて破綻しているといった意味で使われる言葉です。 マンガ などでも使われることがありますが、いずれにせよ キャラ の顔や身体が歪んでいたり、塗りミスや遠近感が狂っていたり、まるで別人や異次元のキャラのように 雑 に描かれた状態を指すものとなります。
なかでも1990年代末から2000年代初めにかけて登場した 「ロスト・ユニバース」(1998年4月3日〜9月25日/ 全26話) のインパクトは大きく、作画崩壊したアニメを俗に 「ヤシガニアニメ」 と呼ぶこともあります。 またロスト・ユニバースに続く映画 「ガンドレス」(GUNDRESS/ 3月20日)、OVA 「学園都市ヴァラノワール」(2002年10月23日) を加えた3 作品 は、俗に 「ヤシガニ三部作」 と呼ばれます。 これらの作品については、ヤシガニアニメ項目に詳細があります。
また作画崩壊を生じている作品がしばしば海外のアニメスタジオへの下請け作業から発生してると目されることから、崩壊した作画を ケンチャナヨ作画 とか 三文字アニメ と呼ぶこともあります。 こうした崩壊は LD や DVD、BD などの 円盤 として販売される場合はリテイク (修正) されがちなため、最初の放映時のものだけに見られることもあります。
「顎アニメ」…東映版 「Kanon」
2002年1月にこの カテゴリ のアニメ作品で話題になったものと云えば、東映アニメーションがアダルト美少女ゲームを原作とするアニメ作品を初めて制作するとして注目を集めた 「Kanon」 があります。 「泣きゲー」 として空前の美少女ゲーム黄金期を強力に牽引した名作のアニメ化ということで大きな期待を集めたものの、その余りの キャラクターデザイン (キャラデザ) から、「顎がでかすぎる」「顎アニメだ」 と話題となりました。
もっとも、この作品は決して作画が崩壊していたわけではなく、原作ゲームのキャラクターデザインの特徴を頑張って再現しようとしていただけなのですが、アニメとして見た場合、バランス的にどうなのよ…ってなキャラデザ、全体で13話だったためストーリーが駆け足すぎたり、ゲームで使われていたBGMをあまり使わずオリジナル楽曲で 雰囲気 が変わっているなど、ファン からの評判がかなり低いものとなってしまいました。 後日談となる特別編1話の 頒布 が、あまりに厳しい条件だった (関連商品を大量に購入しないと実費購入資格が得られなかった) のも、批判の対象ともなっていました。
その後、わずか5年後となる2006年10月から、京都アニメーション版が全24話で制作されテレビ放映されました。 こちらは原作のシナリオや演出を強く意識した内容となっていて、作画クオリティも高かったため、結果的に東映版は 「黒歴史」 扱いとなってしまいました…。 筆者 もどっちを取るかと云われたら京アニ版になりますが、とはいえ東映版にも味わいがありますし、沢渡真琴はどっちも可愛いので問題ありません。 あう〜。
記録はいつだって破られるためにある…恐るべし、MUSASHI GUN 道
1998年〜1999年、飛んで 2002年にかけての 「ヤシガニ3部作の季節」 を超える作品は、もう当分出ないだろうと長らく云われていました。 ヤシガニアニメの歴史もこれで終わりかと思われていた昨今、萌えブームも終盤の2006年4月9日になって BS-i とネット配信 (GyaO) の形で放映されている 「MUSASHI GUN 道」(原作/ モンキー・パンチ/ ACCプロダクション) が、あらゆる点で過去作を凌駕していると話題になっています (^-^;)。
ヤシガニ屠るやガンドレスは作画が破綻していたり、動画数が極端に少なかったり、あるいは未完成状態であったりしたわけですが、この 「MUSASHI -GUN道-」 では、それらをさらにパワーアップしてフィーチャーしている上に (動画数はヤシガニよりは多いw)、ついにストーリーと演出にまで圧倒的な破綻が押し寄せており、「もはや訳がわからない」「逆に新鮮だ」 とまで云われることに。 第6話にして予告が二転三転したあげく 「総集編」 が流れたり、スタッフと監督との確執が ネット のブログで流れるなど、途中の経緯も異例ずくめです。
今は昔と違い、アニメは録画してパソコン上に簡単に動画キャプチャして、そのまま YouTube(ユーチューブ/ ようつべ) あたりに アップロード されて大勢に 共有 されてしまう時代ですし、噂が噂を呼び、もうしばらくは 「MUSASHI GUN 道」 の時代が続くんでしょうか。 主人公 ミヤモトムサシの第2話での台詞、「うおっまぶしっ!」(ぜんぜん眩しがるような シチュエーション じゃない) や 「喋りすぎは命に関わるぞ」(タクアン和尚) は、もはやネットで流行語の兆しすら見せています…。
制作者側には不本意なのでしょうけど、ある意味近年でも稀な話題作となっていますね (ネットでの話題沸騰ぶりに着目したのか、7月7日に 「作画破綻状態の回」 をそのまままとめたDVD (MUSASHI 〜放送オリジナルバージョン〜 DVD-BOX) を急遽初回 限定 生産で発売するなど、開き直っているのもすごい。 んでその DVD は予約開始と同時に当初予定数を 完売 の勢いw)。
幾度となく繰り返されるアニメブームと作画破綻アニメの登場
思えばヤシガニ時代の前にも、破綻した作画が乱れ飛んだ時期がありました。 宇宙戦艦ヤマトや初代ガンダムがブレイクした80年代のアニメブームの時です。 例えば1982年の 「超時空要塞マクロス」(1982年10月3日〜1983年6月26日/ 毎日放送/ 全36話) は 「動かないアニメ」 と揶揄される作画となり、中でも第11話 「ファースト・コンタクト」(1982年12月19日放映) は、当時のアニメファンの間では語り草ともなっています (ただし海外発注分のクオリティはひどかったものの、国内制作分には優れた作画や演出も多く、放送回ごとに評価の落差が激しかった)。
ブーム末期のタツノコプロのアニメ 「天空戦記シュラト」(1989年4月6日〜1990年1月25日/ テレビ東京系/ 全36話+総集編2話)の末期も、作画破綻、崩壊アニメを 「シュラってる」 と呼ぶようになるほど悲惨な動きをしていましたし、作品全編ではなくシリーズの何話かが前後の回と比べて許容範囲を超えるほどの劣化をしているケースは、ほぼすべてのアニメ作品にあるといってもよい状態でした (ふしぎの海のナディアの南の島編やアフリカ編、「北斗の拳」 のカサンドラのウイグル獄長の場面など)。 全てを国内スタッフで制作できない以上、これは仕方のないことなのかも知れません。
また今日の作画的な破綻アニメは、何も 「MUSASHI GUN 道」 だけではありません。 作画はかろうじて破綻していないけれど、動画が極端に少ない紙芝居アニメ、ほとんどラジオ劇のような背景画ばかりが出てくるようなアニメすらあります (「妖怪伝・猫目小僧」(1976年4月1日〜9月30日/ 全24話/ 東京12チャンネル) という、ほぼ全編が切り絵や止め絵、静止画のスライドやカット割りのみで構成された 「ゲキメーション (劇画+アニメーション=劇メーション)」 と呼ばれる独創的な作品がありましたが、あれに倣って 「劇メーション」「結果的ゲキメーション」 などとも揶揄されます)。
アニメの大ヒット作品が生まれ、アニメやおたく文化がブームになり、そのブームで一儲けをたくらむ広告代理店やテレビ局が無茶な制作スケジュールでたくさんのアニメを作ってしまう。 しわ寄せは現場にばかりかかり、末端のアニメーターの就労環境が改善することなく、海外の下請けへの丸投げが横行。
一説にはスポンサーからくる総予算のうち、現場の製作部門に回るのは20%を切っているそうです。 つまり8割以上が、広告代理店やテレビ局にピンハネされる訳です。 この限られた予算で、標準的な30分アニメ1本でおよそ 100人前後の人間を動かし、5,000から1万枚もの動画と、数百枚の背景 画像 を仕上げるわけです。
「おかしなフィルムを上げてくる」 制作会社を笑うのも良いですが、そろそろ視聴者の側でも何らかのアクションがあっても、良い頃なのかなとも思います。 ただまあ、全く同じ条件で、優れた作品を作ってるスタジオや制作会社もあるので、何ともいえない部分もあったりするんですが…。
MUSASHI、ロリポップ、財前丈太郎…新3部作も目前の憂鬱
なお、あまりのインパクトに 「MUSASHI -GUN道-」 ばかりが注目を浴びていますが、ほぼ同じ時期に放映が開始された 「まもって!ロリポップ」 2006年7月2日〜 (岐阜放送/ 菊田みちよ/ 講談社/ サンシャインコーポレーション・オブジャパン/ スタジオコメット)、「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎」 2006年7月6日 (テレビ朝日系列/ 北芝健/ 新潮社/ トランス・アーツ) の両作品も、MUSASHI に勝るとも劣らないなかなかの作画っぷりで話題になっています。
「MUSASHI -GUN道-」「まもって!ロリポップ」「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎」 の3作品を持って、「ヤシガニ新3部作」 もしくは 「ヤシガニアニメ新御三家」 と呼ばれるようになるのも、そう遠くないかも知れません…。 まぁ作画破綻を面白がるのも飽きた頃、いずれ視聴者の健全な拒否反応でヘンな作品は淘汰されるんでしょうけど、まさか 「ヤシガニ四天王」 とか 「ヤシガニ五虎将」 とか、「ヤシガニ六賢人」 とか 「ヤシガニ七本槍」 とか、そっち系統に伸びることにならないように祈っています…。
ウニメも忘れてはなりません
ちなみにアニメ版 「シスター・プリンセス」(2001年4月〜9月 /全26話 /テレビ東京/ メディアワークス)の第12話 「バカンスはラブよ ♥」 の予告で 「ウニの中から千影の声が…」 との描写が公式サイトであり、放映された内容が実際その通りだったため、「訳のわからない駄作アニメ」 を、ウニ+アニメ=「ウニメ」と呼ぶ場合もあります。 原作と 設定 が違うこともありしょっぱなから叩かれていた同作品ですが、もちろん作画の レベル の低さも折り紙つきの作品と呼んでよいでしょう。
キャベツ事件とは…?
「キャベツ事件」 とは、2006年 10月4日より TBS 系 BS-i ほかで放映を開始したアニメ、「夜明け前より瑠璃色」(AUGUST/ 月文化交流会) の第3話 「お姫様 料理対決!!」(10月18日放映) において、キャベツの千切りをするシーンで、キャベツがあんまりな造形と切られ方をしていたことを指し示した言葉です。 ほとんど緑色のボール、もしくはメロンです。 それがスポンジを切るようにばっさりと真っ二つに…。
さらにサラダとなったキャベツは千切りしたのに葉っぱ状態となっていて、って云うかキャベツに見えない…。 全体的にそれほど惨いできではないアニメなんですが、ちょっとした気の緩みで 「事件」 になってしまうのは大変ですね。