様々なオタク系イベントが開催される 「東産貿」
「東京都立産業貿易センター」 とは、主に東京都が中心となって産業や貿易などの振興を目的に設立、運営 している大〜中規模の 貸し会議室、イベントホール、見本市会場のことです。 愛称や略称として、「東産貿」「都産貿」「都立貿易センター」 とも呼ばれます。
施設は2つあり、地上6階地下1階の 「浜松町館」 と、地上9階地下1階の 「台東館」 が、それぞれ離れて建っています。 いずれも中規模程度までの 同人イベント や オンリーイベント などが年100ペースで頻繁に開催される、関東地区屈指の貸し会議室、ホール、総合展示スペースとなります。
東京都立産業貿易センター 「浜松町館」 | 東京都立産業貿易センター 「台東館」 |
またこの 会場 では 産業会館 らしくプライズグッズ・フィギュア系の イベント や企業主体の産業ショーなどの大掛かりな催しもしばしば開催され、東京都の中では、東京ビッグサイト に次ぐ おたく や 同人 関係者に馴染みのある会場となります。
運営は東京都と社団法人東京都中小企業振興公社で、公式 ウェブサイトは こちら になります。
ワンフェス発祥の地となった 「東産貿」
なお1985年に 「日本SF大会」 の同種の催しから分家する形で、SF専門ショップ・ゼネラルプロダクツが主催の第一回目となる 「ワンダーフェスティバル/ ワンフェス/ WF」 が開催されたのが、この 「都立産業貿易センター」 でした (前夜祭となるプレイベントは前年12月に別の場所で開催)。 以降ガレージキットやフィギュア、ドール関連のイベントが多数開催される 「立体造形物発表」 の中心地のような役割をも担っています。
「ワンフェス」 はその後に規模拡大し、東京ビッグサイト、そして2008年8月3日のエスカレータ逆走事故をきっかけに千葉県の 幕張メッセ へと移転しますが、フロアを区切り他の同人イベントと隣同士で開催されるケースがしばらく続き、初回から参加者が多く賑わうイベントとなっていました。 かつては 「東京おもちゃショー」 などもこの地で開催され、その手の アイテム に目がない人には飽きるくらい通いなれた場所と言えるでしょう (筆者 もそうですがw)。
「浜松町館」 と 「台東館」、二つの 「東産貿」
元々は 「浜松町館」 のみが 「東産貿」 と呼ばれる施設でしたが、後に 「台東産業会館」 が 「東京都立産業貿易センター台東館」 として集約合併。 現在の2館体制となっています。 どちらも交通の便がよく、また大型の コンベンションセンター のように横に広くなく縦に広いため、イベントのサイズごとにフロアを区切って利用することができ、この種のイベント会場のモデルとも云える使い勝手の良さがあります。
ただしそれぞれの施設はかなり離れているので、2館体制でのイベントはちょっと現実的ではないでしょう (電車で乗り換えのあるなしを含めて乗車時間20分〜28分ほど、徒歩時間を含めると小一時間かかります)。
東京都立産業貿易センター 「浜松町館」
東産貿 「浜松町館」 |
いかにも昭和の自治体運営の 箱モノ といった外観を持つ、地上6階地下1階の建物が 「浜松町館」 です。 同人関係者が 「浜松町でイベント」 と云えば、ほぼこの会場を指します。
うち最上階の6階部分は都区庁舎の関連施設が入り別施設扱いとなり、主な展示場は2階から5階までとなっています。
住所は 〒105-0022 東京都港区海岸1-7-8 東京都立産業貿易センター 浜松町館 です。
交通アクセスとしては、JR 浜松町駅の北口から徒歩5分、東京モノレール 浜松町駅の北口から同じく徒歩5分、新交通ゆりかもめ の竹芝駅から徒歩2分、地下鉄の都営浅草線・都営大江戸線の 大門駅から徒歩8分です。
東産貿 「浜松町館」 のロビー | 2階展示ホール |
東京都立産業貿易センター 「台東館」
東産貿 「台東館」 |
地上9階地下1階のうち、地下から地上7階部分までが台東館となります (8・9階は 台東区民会館 になります)。 イベントなどの展示場として使われるのは4階から7階あたりまでで、同人関係者が 「台東館」 と云えば、この部分を指して使う言葉となります。
住所は 〒111-0033 東京都台東区花川戸2-6-5 東京都立産業貿易センター 台東館 です。
交通アクセスとしては、東武伊勢崎線の浅草駅から徒歩5分、地下鉄 東京メトロ 銀座線の浅草駅7番出口から徒歩5分、都営浅草線利用の場合は浅草駅からA5番出口を出て徒歩8分、つくばエクスプレス(TX) 浅草駅からA1出口を出て徒歩9分です。
路線バス利用の場合には、都営バス都08系統と草64系統の 「二天門」 で下車してすぐ、台東区コミュニティバス 「めぐりん」 でも 「二天門」 で下車してすぐになります。
東産貿 「台東館」 のロビー | 会議室・展示会場の入口 |
2007年、同人誌即売会への貸し出しを拒否する事件が…
読売による、「都施設でポルノ漫画 即売会、過去6回開催」 報道 |
台東館、浜松町館ともに、1970年代末から1980年代頭にかけて 「同人イベント」 などが次々に開催され、以降もイベントが多数開催されています。
しかし2007年10月になり、成人向け コミックイベント、「アブノーマル・カーニバル」 に対し、都立産業貿易センター台東館会場側が 「詳しい内容を確認してこなかったが、職員が ネット でイベントの内容を偶然知り、公共施設 にはふさわしくないと判断」 して貸し出しの申し込みを拒否する対応を取り問題に。
さらにマスコミなどが 「都施設でポルノ漫画即売会、過去6回開催」(2007年10月22日/ 讀賣新聞)、「えっ!都の施設でポルノコミックの即売会」(2007年10月22日/ 産経新聞 イザ!) とこの問題を報道。
一部では 表現の自由 を守れとの主張もありますが (少なくともマスコミが先頭に立って規制しろと叫ぶのは筋違いでしょう)、男性 成人向け がメインでイベント名称が 「アブノーマルカーニバル」 というインパクト、また長年この種のイベントの対応を親身になって行っていた職員が交代したとの話もあり、会場側・イベントの 主催者 の側とで意思の疎通が上手くいかなかったなど、不幸 な偶然が重なった形なのでしょうか。
様々な問題提起と示唆を与えた規制問題
アダルトコミックに対する風当たりの強さは年々強まっていますし、「東産貿」 側の対応は、かつての 「幕張メッセ」 のように、問答無用で 健全 な 同人誌 もそうでない同人誌も十把一絡げに内容の確認も入場年齢制限の有無の確認もろくにせず、さらにイベント開催直前になって一方的に貸し出しを拒否する乱暴なものとは違っていました。
また 「東産貿」 を運営する東京都や東京都中小企業振興公社は、コミケ が開催されている 「東京ビッグサイト」 とも当然ながら無関係ではなく、「この問題で大騒ぎして寝た子を起こしたり、ヤブヘビになる事態は避けたい」「会場側を批判するだけではなく、利用者の側にも反省すべき点があったのを理解してよりよい道を模索しないといけない」 との、現実的な意見がネットなどでも比較的多かったのが、幕張の 「コミケ追放事件」 など過去の類似の問題と違っていた点でしょうか。
同人誌やその即売会が昔に比べたらずっと裾野が広がり一般化しつつあるといっても、まだまだ特殊な 趣味、理解されづらい趣味だというのを踏まえ (ましてアダルトものに対する風当たりは相当強いです)、互いが共存するために誰か一人を悪者にするのではなく、会場側の問題、イベント主催側の問題、社会 環境 の問題…様々なことを考え知恵を出し合う必要がありそうです。