おとなしいだけか、コミュ障か、他人に興味がないだけか 「無口・寡黙」
「無口」 あるいは 「寡黙」(かもく) とは、極端に口数の少ない キャラ、及びその 属性 の事です。 単に人見知りしがちであまりしゃべらないといった字義通りの意味の他にも、様々な ニュアンス を持っています。
よくあるケースでは、おとなしく真面目で知的だけれど内向的で不器用、しかし内面には熱いものを持っており、時として傲慢で自信家、ナルシスト、クール、ちょっとつっぱっていたりヤンキーっぽさを持つタイプがあります。 とくに男性キャラの場合、「男は口ではなく行動で示す」 のが美徳といった古風な価値観が好まれる部分もあり、無口で不器用だけれどめちゃくちゃ 有能 で頼りになる強いキャラはかなり多いでしょう。 無気力・クール なタイプで戦隊ものでいう青キャラ、ハードボイルドの 主人公 みたいなものです。
一方、真面目で内向的で不器用といった部分は 共有 しつつも、まったく逆のパターンもあります。 いわゆる 根暗 や 陰キャ、臆病、卑屈、引きこもり、いじめられっ子、コミュ障 といったどちらかと云うと ネガティブ な方のケースで、これといった特別な能力や力もなく、他者に対しておおむね従順・無抵抗 で、相手のなすがまま、されるがままになるような弱者としての存在です。 腹の中に何か暗いものを持っている場合もあります。
いずれのパターンにおいても男女の区別はありませんが、物語の主人公に求められるものに熱血や天真爛漫な明るさが多かった時代には、戦隊ものの青キャラのように、主人公の価値観と時に衝突しつつもいざとなったらもっとも頼れる相棒といった立場だったり、あるいは完全な敵やライバルで登場することも多かったでしょう。 作品中ではあくまで主人公を盛り立てる 脇役 のポジションです。 しかし 読者 や視聴者、ファン からは主人公を差し置いて人気を集めやすく、二次創作 では実質的なトップキャラ扱いされることも多いでしょう。 複雑な背景がありそうに見えながらあれこれと語り過ぎないので、想像の余地があるのも良いところです。
その後時代が変わり、またマンガやアニメが想定するファン年齢層の拡大などにより、ひたすら熱血や明るさだけを持つ存在より、時に悩んだり落ち込んだり暗い部分も持っている複雑なキャラが主人公として登場するようになると、そうした主人公を陰で支えたり方向性を指し示す存在として、寡黙な主人公以上に寡黙な存在が脇役の一人として登場するようになります。 作品全体で見れば主人公が寡黙な場合の相棒には熱血単純でまっすぐな明るいキャラが選ばれやすいのですが、さらにその後方にいて、熱血でネアカな相棒の補いきない部分を主人公との共感の中で補うような存在です。 このあたりは作品や テーマ ごとに様々なパターンがあります。 とりわけ極端なものでは、過去のあまりの精神的ショックを受けてしゃべることができなくなってしまったような設定 (失語症) のキャラもいます。
女性の無口・寡黙キャラ
女性キャラの場合、外見上は 地味 で 黒髪 や青っぽい 髪色、メガネ といったイメージがしばしば選ばれ、趣味 も手芸や読書など一人でできるものが多いかも知れません。 おとなしく控え目といった印象がありますが、「女性はおしゃべり好き」 というイメージが優先されて、無口な女性に何らかの孤独さや暗い影を感じることもあります。 男性キャラの場合、外見にこれといった傾向はなさそうですが、地味と云う部分は共通するかも知れません。 いずれの場合もどこかに影があり、謎めいたミステリアスな存在で、家庭内に複雑な事情があるといった重い 設定 を持つ場合もあります。
女性キャラで エロ な作品の場合、相手から言われたことにはひたすら従う、いいなりでなすがままで SM におけるマゾ的な傾向を持ち、感情の起伏もリアクションも薄い場合 (無感動無表情) が多いでしょう。 カップリング においても、一概には云えませんが、おおむね 受け に選ばれやすい傾向を持っているかも知れません。
この場合、同じく従順でなすがままでありつつも対概念になりそうなのは、明るく人付き合いの上手い 陽キャ の ギャル や 天使 となりますが、自ら性行為を積極的に求める淫乱や ビッチ、痴女 あたりも該当しそうです。
男性の無口・寡黙キャラ
一方、男性キャラの場合、そもそも昭和的な男性性の価値観に 「不言実行」「男は黙って○○」 みたいな部分があるので、女性キャラほど寡黙・無口が珍しくないというか、際立った特徴として注目されにくいという部分はあるかもしれません。 「あれこれ口出ししないけれど決まったことには黙って従う」 という部分はありつつも、女性キャラのような従順さからではなく、「どんなことでも実力でねじ伏せる」 という絶対的な自信あるいは逆に達観ゆえの賛同みたいな感じです。 カップリングの傾向も受け・攻め どちらもいけますが、性的傾向はマゾよりはサド寄りかも知れません。
何を考えているか分からない…ミステリアスな無口・寡黙
無口や寡黙なキャラの場合、おおむね表情の変化も抑制的で、伏し目がちに黙って、部屋の片隅にちょこんと座っているようなイメージです。 反射的に出てくる驚きなどはある程度描写されても、性格や考え方を伺ったり、心の動きに由来する喜怒哀楽といった感情はほとんど外に出しません。 「何を考えているかわからない」「どうして欲しいかわからない」 キャラであり、しばしば作中の別キャラから 「何考えてるか分からなくて キモイ んだよ!」 などと悪態をつかれたりします。 他者からの指示や命令には従いますが、それがなければ我が道を行くタイプで、意固地な部分も強くもっていたりします。
一方で、最低限の意思疎通らしきものはできたりして、例えば問いかけに対して黙ってうなづく、指示や命令に対しては黙々と従うなどになります。 「何を考えているか分からない」 けれど、こちらがしたいこと、やりたいことに納得すれば黙ってその全てを受け入れてくれる部分こそが無口・寡黙の真骨頂であり、物語が進む中で、それまでは表に出さなかった感情らしきものが少しだけ見えてきたり、ここぞという場面で感情を露わにする、それまで黙って従っていたのに突然背く、それも相手のためを思って背くといった意外性を発揮することがあっても、それが固定化することはありません。
無口・無口キャラは多数のキャラが登場する作品では1人くらいはいるものですが、とりわけ おたく の世界で極めて大きな存在感とインパクトがあった女性キャラと云えば、「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年10月) の綾波レイや 「涼宮ハルヒの憂鬱」(2006年) の長門有希でしょうか。 作品の大ヒットと共にそれぞれと似た造形のキャラが多数生み出さされ、「綾波タイプ」「長門キャラ」 といった類型化された寡黙・無口キャラの代名詞ともなっています。
一方男性キャラの場合、どんな作品にも昔から主要キャラの一人として存在するため、際立ったキャラを取り上げるのは難しいでしょう。 単純に、前述した戦隊ものにおける青キャラみたいな扱いです。