男なら誰でも一度は身に着けたことがあるはずの 「ブリーフパンツ」
一般的な白ブリーフパンツ |
「ブリーフ」(Briefs) もしくは 「ブリーフパンツ」 とは、もっぱら男性が下半身・陰部に着用する パンツ (下着/ インナー) の一種のことです。 名称の 「ブリーフ」 は股下がなく短いという意味で、衛生面の理由から白色が多いこともあり、とくに 「白ブリーフ」 と呼ぶ場合もあります。
通常は伸縮性の高い綿などの素材で作られ、身体にフィットしやすい特徴があります。 また汗をかいても吸収しやすく、股下がないため 半ズボン やスポーツ用のショートパンツのすそから外にはみ出す心配もなく、スポーツに最適なパンツとされています。 一方で開放感には乏しく、状況によっては蒸れやすい、チンポジ (ちんこポジション/ 男性器の位置) が変に固定されやすく、人によっては不快に感じるケースも多いものです。
フィット感を損なわずチンポジが自由になるものとして、陰部が飛び出した立体縫製となっているものもあります。 こうしたものは実用性のほか、セクシーさをアピールする用途でも使われ、その造形から俗に 「象さんパンツ」 などと呼ばれる場合もあります。
1935年にアメリカ・シカゴで生まれた 「ブリーフ」
こうしたタイプの下着が生まれたのはアメリカで、シカゴの下着メーカー Coopers (クーパーズ/ 現 Jockey International) が1935年1月19日に地元の百貨店で販売したものがその元祖とされます。 サポーターやジョックストラップ (男性器の保持や保護用インナー) など既存のスポーツ用の下着を発展させたもので、商品名は乗馬用下着から名付けられた 「Jockey」(その後会社名になった) でした。
このブリーフは発売早々に着け心地の良さや動きやすさなどから世界中で大人気となり、その後オリンピック選手に支給され好評を得るなど、「男性の新しい下着の形」 を作り上げる存在となりました。 機能性の高さから、第二次世界大戦 (1939年〜1945年) においても多数の兵士に支給されたようです。 またその際、戦地で洗濯して干すと白色では目立つなどもあり、カモフラージュ用の 色 付きのものなども登場しています。
日本においては戦後アメリカから大量に入ってくるようになり、ほどなく国産化。 前後して 戦前 から使われ始めていた女性用パンツの普及も本格化しますが、アメリカ文化や豊かな生活様式、日用品の大規模な流入が続く中、以降も着心地や機能性から人気を高め、それまで主流だった猿股 (さるまた/ ズボン型の下着) やふんどしなどに代わり、男性用下着の主流となりました。 1970年代には、男性のパンツと云えばブリーフが真っ先に想起されるほどの地位を獲得していました。
戦後急速に普及し、ベーシック・スタンダードとなった 「ブリーフ」
男性用のパンツにはトランクスや ビキニ、メンズスキャンティーなど後に登場したものを含め、現在では様々なタイプがあります。 またビキニやスキャンティーなどでは、TバックやGストリング、Cストリング (Iバック) など、露出度が極めて高いものもあり、着心地や機能面だけでなく、ファッション性でも選ばれるようにもなっています。
一般的な白ブリーフパンツの着用例 |
ブリーフは、これら後発の様々な男性用パンツの中ではベーシック・スタンダードなだけにとても 地味 な存在と云えますが、一部の 18禁 な ジャンル では、極めて大きな存在感を持っています。 それは戦後の一時期男性用下着の主流となったこと、また主流から外れた現在にあっても 「オムツからパンツに変える時、しばしば最初に身に着けるパンツ」 という、男性にとっては特別なポジションを依然として維持し続けているからでしょう。
これは少年愛である ショタ の傾向に合致しており幼さの記号として認識されている点もさることながら、一方ではガキっぽい、包茎や 童貞、不潔、あるいは 「冴えない男」「マザコン」「非モテ」「ネクラ」「キモい 男」「変態」 といったイメージを喚起しやすく、さらにその後の通り魔事件や通販商材 (それぞれ後述します) の印象から女性に対する 自虐 あるいは他虐的な 要素 を、他のタイプのパンツより強く持っていることがあるのでしょう。
通常、大勢の男性が一人の女性と行為を行うような エロ い作品 (輪姦・ぶっかけ・汁系) では、男性は白ブリーフで揃えるのがある種の お約束 のようになっています。 トランクスやボクサーブリーフなどではなく、あえて白ブリーフにする理由は様々あるのでしょうが、こうした 「白ブリーフが持つイメージ」 が、ある種の男性性の象徴として捉えられているのは興味深い点です。 また男性が女性用パンツを身に着けるのと同様、女性がブリーフパンツを身に着けることに強い興奮や背徳感を覚える人は少なくないようです。 この辺りは異性装の一つとしてそれほど特別なものではありませんが、白ブリーフが持つ独特の存在感は他の男性用パンツと比べ突出しているといって良いでしょう。
一般的な男性の場合、子供の頃はブリーフ、その後成長するに従ってトランクスなどに履き替えるパターンが多いでしょう。 また長年の慣習と身体にフィットする機能性が尿漏れパッド類の使用に便利なこともあり老人が着用しているイメージ (実際に着用者が多い) も強く、「白ブリーフはダサイ」 という男性はとても多いのが現実です。 これは売上データなどでもはっきり出ていて、パンツのバリエーションが増えたこともあり、ブリーフの シェア はおおむね下落し続けています。
子供や老人のパンツというイメージと 「深川通り魔殺人事件の白ブリーフ」
こうした白ブリーフの ネガティブ なイメージが生じているのは、単に 「子供っぽい」「年寄りくさい」 という理由以外にも様々な理由があります。 なかでも白ブリーフに決定的な負のイメージを与えた出来事といえば、1981年6月17日に東京江東区で発生した 「深川通り魔殺人事件」 が挙げられるでしょう。
当時29歳の男性が商店街の路上で通りすがりの主婦や児童らに次々と包丁で襲い掛かったこの事件は、4人が死亡、2人が重傷を負うという凄惨なものでした。 また人質を取って中華料理店に立てこもり、その様子はテレビ中継され、社会に大きな衝撃を与えました。 犯人は覚せい剤中毒者であり、取り調べの最中に発した 「電波」 はちょっとした流行語となるほどでしたが、何よりインパクトがあったのが、警察に身柄を確保され連行される際の犯人の姿でした。 それは、口に猿ぐつわを噛ませ、後ろ手に手錠をはめ、下半身はなぜか白いブリーフに白いハイソックスのみというものでした。
犯行当時、犯人は下半身を 露出 していたともされ、連行に際して下着を着用させたものともされますが、ズボンをはかずに 「下半身が白ブリーフ」 の姿はテレビ中継されて大きな注目を集め、また再現ドラマやお笑い番組などで白ブリーフ姿が度々再現されるなどして、当時の若者や子供たちに 「白ブリーフは ヤバイ」「カッコ悪い」 との印象を強烈に与えるものとなっていました。 実際、当時の中学生・高校生の男子の間などでは、体育の着替えや身体検査、修学旅行などで白ブリーフ着用であるのが知れると冷やかされる、犯人の名前で呼ばれてからかわれるなどはよく聞く話でした。
包茎ボーイでは、モテないゾ! 白ブリーフタイプの 「ビガーパンツ」
またほぼ同じ頃、雑誌などで洪水のように掲載されていた包茎矯正用パンツ 「ビガーパンツ」 の広告が、白いブリーフ状のもの (のちにトランクスタイプや柄つきのものも登場) だったことも、白ブリーフのネガティブイメージ醸成に多大な影響を与えました。
このビガーパンツ自体は、パンツの前面に設けられたリングに亀頭を露出させた男性器を通して着用することで剥け癖をつけ、一皮ムケた男になるといった商品です。 背を伸ばすとか頭を良くするといった 通販 ではおなじみのコンプレックス商品の一つなのですが、用途とあまりの掲載頻度の高さから下世話な話に度々登場し、前述した通り魔事件の時と同様、白ブリーフを着用していると 「こいつビガーパンツ履いてる」 的な冷やかしやからかいのターゲットにされがちなものでした。
白ブリーフには何の罪もないのですが、「子供っぽさ」「年寄りくささ」 に加えて 「異常犯罪者着用」 や 「包茎」 といった印象までつくと、イメージ的にはなかなか厳しいものがあります。 また衛生面で機能的である白色も、逆に言えば黄ばむなどの汚れが目立ちかえって 清潔感 がないもの・不潔だとなりがちなのも、マイナスイメージでしょう。