「同人作品」 を 元に同人活動を行う… 「同人の同人」
「同人の同人」 とは、同人 の作品を オリジナル、元ネタ、原作や モチーフ として作られる パロディ や 二次創作 のことです。 場合によっては三次創作と呼ばれたり、パロディのパロディと呼ぶ場合もあります。
同人の同人? |
この場合の元ネタとなる同人作品とは、プロ作家や 商業 プロダクションによって作られ商業メディアで展開された商業作品 (版権もの) ではなく、一般人である 同人作家 が 趣味 で作った同人作品 (同人誌 や 同人ゲーム) という意味になります。
ただし、その元ネタの同人作品が 新規 オリジナルの場合と、既存商業作品 (アニメ や マンガ、ゲーム、ライトノベル など) の二次創作の場合では、同じ 「同人の同人」 でも意味や ニュアンス がだいぶ変わります (後述します)。
ところで、元ネタとなる同人作品が同人の世界で盛り上がり人気となって、途中から商業展開するケースもあります。 逆に、元々は商業作品だったものが途中で同人作品になる場合もあります。
中小の美少女ゲームソフトハウスが会社を解散し同人の活動にシフトするなどのケースですが、それどころか、場合によっては同人と商業を行ったり来たりする場合もあります。
この場合の扱いはまた別の微妙さを持ちますが、時代を経るごとに 「同人」 とか 「同人作家」 というくくりがあいまいになってきているので、「同人の同人」 も定義や受け取り側の持つイメージが移ろう、あやふやで把握が難しい ジャンル になっていると云って良いでしょう。 単に 「創作した時点でモチーフが同人だった」 あたりが、「同人の同人」 のごく大雑把なくくりになるのでしょう。
オリジナル同人作品を元ネタとした同人作品
同人の同人というと、二次創作ではなくオリジナルの同人作品 (非商業のマンガやアニメ、ゲーム、ラノベ、音楽など) を元ネタとする作品群が、まっさきに思い浮かびます。
こうした作品の有名所というと、同人サークル や同人作家 である TYPE-MOON (月姫、歌月十夜 ほか) や 07th Expansion (ひぐらしシリーズ)、上海アリス幻樂団 (東方Project)、日丸屋秀和 (ヘタリア) らの存在とその影響が代表的でしょう。 いずれも同人の世界で大人気となり商業作品を超える規模の熱心な ファン を獲得し、結果、膨大な二次創作、派生作品を生み出しています (さらにそこから派生の派生の派生…のような再創作の連鎖も起こっています)。
これらはその後、一部は商業展開を行いメディアミックスされて、いわゆる 「商業版権もの」 の仲間入りをしていますが、いずれにせよ 「同人の同人」 という言葉が広く使われるようになったきっかけを作ったオバケ同人作品群と云えるでしょう (こうした言葉が大きくクローズアップされたのは、2000年12月のコミケット 59 で完全版が 頒布 された 同人ソフト 「月姫 (つきひめ)」 あたりからでしょう)。
またこれらの作品の一部の影響から、「同人の同人」 の制作カテゴリもマンガや SS (ショートストーリー) だけではなく、音楽 (同人音楽) の世界にもそれまで以上に広まり、2000年代を通じて爆発的に盛り上がった同人音楽のど真ん中、まさに牽引役だったといって良いでしょう。
なおこれらの作品の多くがコミケにおいて ジャンルコード も付与されています。 あまりに有名になりすぎ、過去の経緯を知らない若い人によっては、これらが同人発祥の作品だとはよく知らないままに夢中になっているケースもあります。 こうした人たちにとっては、受け取る作品そのものが面白いかどうかだけが何より重要で、誰が作ったものなのか、どこで生まれたものなのかは、あまり意味がないことなのでしょう。
元ネタを知らなくても楽しめる二次創作? 突出する 東方Project
とくに2000年代の同人を語る上で絶対に避けることができない 上海アリス幻樂団による 東方Project シリーズは、「同人の同人」 において際立った存在です。 元々が 弾幕系 のシューティングゲームだったため、そうしたゲームにあまり触れない同人マンガファン、同人音楽ファンなどは、元ネタとなったゲームをプレイしたこともない、見たこともないなどという人もかなりいます (ネット の 掲示板 で使われる アスキーアート (AA) や ネットスラング としての ゆっくりしていってね!!! から入った人も結構多い)。
これは旧来の多くのコミック同人で見られる 「元ネタに 愛 を感じるからこその同人」 とは、やや趣が異なるものでしょう。 これはどちらが良い悪いという訳ではなく、もはや単に 「そういう世界もあるのだ」 というのが正解のような気もします。 別にギリシャ神話やシェイクスピアの戯曲を知らなくても、ウエスト・サイド物語や映画のロミオとジュリエットが面白いと感じるのと同じ道理です。 せっかく作品のファンになったのなら、原作も知ったほうがより楽しめるかもとは思いますが。
同人音楽を中心に、同人・おたく界に影響を及ぼす 「初音ミク」
同人音楽や 動画共有サイト を中心とするネットの音楽に関しては、2007年に登場した 初音ミク (デスクトップミュージック (DTM) 用の歌唱用音源ソフトウェア) のもたらした影響も極めて大きいでしょう。
このソフト自体は企業プロダクトですが、これを元にした二次創作の派生 イラスト やマンガ、キャラがさらに派生を生んだり、既存同人楽曲の二次創作にこのソフトが積極的に使われるなど、同人音楽のみならず、歌ってみた、MAD、電波歌、コスプレ、オタ芸 の延長としてのダンス、フィギュアなども含め、同人・おたく の世界全体に及ぼした影響は計り知れないものがあります。
二次創作同人作品を元ネタとした同人作品 (三次創作・パロディのパロディ)
ある商業作品なり同人作品なりを元ネタとする二次創作同人作品を、別の同人サークルが二次創作するパターンも昔から存在します。 この場合は、元ネタとなる商業作品のファン同士が互いの同人作品を発表しあう中で、「◯◯さんの描く□□は原作よりも面白い」「原作では嫌いな キャラ だけど、◯◯さんが描くと魅力的だ」 といったジャンル間での称賛、人気の高まりと共に作られ、場合によっては原作にはない 設定 や定義がジャンルの中で確立する発端のひとつともなります。
こうしたスタイルの 「同人の同人」 は、同人サークル同士の 「作品を通じたコミュニケーション」 の意味がより強く、原作寄りのファンなどは 「ついて行けない」「原作レイプ だ」 と苦手とするケースも少なくないものです。 厳然として原作のファンが数多く存在するケースでは、安易に 「原作より面白い」「原作よりかわいい、オリジナルより 萌える」 などと発言すると、様々な軋轢や トラブル の原因になったりもします。 しかし 「わかってる作家同士」 の作品のやり取りでは作品の往来ごとに原作のエッセンスがどんどんと研ぎ澄まされ凝縮され続ける場合もあり (全く逆のパターンもありますが)、少数ながら極端にコアな固定ファンががっちりとついて一大勢力となる場合も少なくありません。
ここにまで至ると、ある意味で元ネタ・原作となった作品のその後の動向はほとんど影響を与えなくなり、とっくに原作が終わったり世間的な人気が失われたにもかかわらず、同人作品だけは長期にわたって膨大に制作され続けるといった状況になります。 いわゆる 「長寿ジャンル」「安泰ジャンル」 と呼ばれるジャンルには、こうした同人の同人はつきものと云えるでしょう。
原点ではなく、派生やファンに夢中になるということ
原点となるオリジナル、原典ではなく、その派生やファンジン、レプリカ、リメイクなどに好意を持つケースは同人に限らず様々なジャンルで見かけます。 オリジナルかどうかは創作物においてはとても大切な要素ですが、ある レベル を超えると過去の経緯やオリジナルかどうかではなく、とにかく目の前にあるものが自分の好みに合うか合わないか、触れていて気持ちがよく面白いかどうかが重要になることもあるのでしょう。