お互いにブックマークし合ってアクセスアップ? 「互助会」
「互助会」 とは、自分や自分と示し合わせた仲間同士・グループ で、それぞれが アップ した ブログ の記事などを相互に ソーシャルブックマークサービス で ブクマ (ブックマーク) し合うこと、それによって 「はてブ」(はてなブックマーク) といったサービスで注目度を高め、馴れ合い によるアクセスアップや、あるいは アフィリエイト・オンラインサロンなどの集客を図る利用者らを批判的に指す言葉・ネットスラング です。
友人知人らでお互いのブログ記事などをブクマしたり、ブコメ (ブックマークコメント) で感想を述べあうなどの交流自体は普通のことであり別に悪いことではありません。 しかし内容が薄く他人が読んでも何のメリットもなさそうな個人的・内輪向けの記事や、あるいはお金儲けしか考えていないような低品質な記事を量産し、人海戦術で大量の相互ブクマをつけ合って はてブ の新着エントリーや人気エントリー (「ホッテントリ」(ホットエントリー)など) に無理やりねじ込んだりするのは、「役に立たず面白くもない記事ばかりが上がってくる」 ような状況を招きがちです。
さらにこうした行為を 「アクセスアップ術」「ネットでお金儲けする方法」「ブログで稼ぐノウハウ」 といった形で自らの商売に利用したり情報商材として販売したり、それによって仲間を募って拡大させるのは、ネット上 の優れた情報、面白い情報を オンライン で集めて 共有 する ソーシャルブックマーク の考え方からは離れるものでしょう。
もちろん何が有益で何が面白いかは人それぞれですし、ブログにどんな記事を書こうがそれも自由ではあります。 また互助会的なグループに属さない利用者が、「自分の面白い記事が注目されない」「自分の好きなブログの記事が上に来ない」「それなのにこいつらは」 と嫉妬したり腹を立てて、ほとんど言いがかりに近い形で互助会批判をしたり、互助会だとレッテルを貼るケースだってあります。
しかし互助会参加者によっては、自らのグループを盛り上げようと アカウント を大量に作って 自作自演的 な セルクマ (自分で自分の記事をブクマする) や相互ブクマを繰り返すといった スパム行為 を行うケースもあり、「目障りだ」「利用規約に反している」 と、非常に嫌われる存在だと云って良いでしょう。 そもそもスパム的な行為でアクセスアップや SEO (検索エンジン対策) を行うような人たちのビジネスモデルや思想信条・倫理やモラルは、しばしば古くからネットを利用しているコアな ネット住民 から嫌われる傾向がありますし (嫌儲)、自分たちの愛用しているサービスを 荒らして いるように見えるのが嫌悪の大きな理由でしょう。
記事の質ではなく、人的ネットワークでアクセスアップする手法
似たようなネット利用者の行動や、それに対する反感、軋轢は、時代ごとに様々なものがあります。 例えば 1990年代の ホームページ (ウェブサイト) が流行し始めた頃からの過度の 「相互リンク」 や 「ウェブリング」「同盟」(仲間や同じ 趣味・テーマ のサイトを繋げてアクセスアップを図る)、ブログが流行し始めた 2004年頃からの 「ブログランキング」(ランキングサイトで上位表示させるため、仲間で投票のクリックを押しまくる) や 「相互トラックバック」(Trackback/ 記事にリンクを張って通知する)、Twitter での 「ふぁぼ公」(Favorite (ふぁぼ) と 公式リツイート) のつけ合いも同様です。
いずれも 「同じ趣味を持つもの同士で一緒に盛り上げよう」「交流を広げてみんなで楽しもう」 という肯定的な立場もあれば、「記事や情報の中身ではなく、人的なネットワークやコネだけでアクセスアップを目指すもの」「人海戦術で組織的に無意味な記事を押し上げ、有益な記事や情報を隅に追いやり埋もれさせるもの」 として否定的に見る立場もあります。
一般にこうしたものに ハマり やすいのはネット初心者が多いような感触がありますが、これも価値観の問題なので、どちらがどうという話ではありません。 そりゃせっかく記事を書いたのだから、できるだけ多くの人に見てもらいたいと思うのは人情でしょうし、ブクマがたくさんつくのは素朴に嬉しいものでしょう。 またどこの誰が書いたかわからない興味対象外の有益な記事や面白い話、鋭い考察とやらよりも、友人 (リア友) やネットで知り合った ネトモ の挨拶や愚痴、食事やペットの写真の方が価値があるという判断をする人がいても、それは別に間違ったことではないでしょう。
そもそも有益な記事や面白い話、鋭い考察とやらも、その主張に賛同する人からすればネットで共有すべき価値のあるものでも、逆の立場の人から見たら無意味な情報、場合によっては有害にさえ見えるものです。 それならまだ人畜無害な 「おはよう(^-^)」「今日の夕食です」 の方がマシかも知れません。
まあ 筆者 は、自分たちの馴れ合いを仲間以外の不特定多数にブクマの形でわざわざ シェア する必要はないかなとは思いますし、毎日毎日知り合いのたくさんのブログやらを見て回ってブクマしたり反応したりを続けるのも面倒で大変だろうなとは思いますが、根本的にネットの利用目的やサービスに求める価値や意義自体が異なる人も多いので、結局は人それぞれになるのかなとも思います。
「交流」 なのか 「馴れ合い」 なのか、それとも 「スパム行為」 なのか
「互助会」 という言葉自体は、日本のソーシャルブックマークサービスで飛びぬけた存在感を持つ 「はてなブックマーク」 と、同じアカウントで管理が可能な 「はてなダイアリー」「はてなブログ」 の利用者らの間で使われるようになったものです。
「はてブ」 でホッテントリ入りすることでアクセスアップが図れる点もさることながら、はてな関連サービスの検索エンジンに対する優位性が突出した時期もあり、とりわけ 「はてなキーワード」 と連動して利用者同士の記事と記事をつなぐ 「はてなダイアリー」 その実質的な後継サービスとなるであろう 「はてなブログ」 はその傾向が顕著でした。
実際、「検索結果上位やアクセス稼ぎを狙うなら はてなブログ」 みたいな時期もありましたし、また読者登録機能やページオーナー設定による通知機能などによって相互ブクマ (そしてその監視) がしやすいという点も非常に有利に働き、「自分のネットワークで金儲けすることに躊躇がない人」「自己顕示欲 が強くてよくわからない 意識が高い 人たち」 が寄ってくる条件が揃っていたといってよいでしょう。
その後、互助会論争やその他様々なネット上の論争・バトル がはてなやその周辺サービスで展開される中で個人攻撃などが生じたり、はてな 運営 への苦情や通報が相次いだことなどもあり、サービス運営側では利用規約の改定や制限措置などの対策を五月雨式に実施。 はてなブログの記事がホッテントリなどに極めて入りづらくなり、メリットを失った悪質な互助会は姿を消すことになりました。
また前後して互助会的な集客やお金儲けに適した他のサービス (例えば note) が登場したり、既存サービスの Twitter、instagram、TikTok といった SNS、YouTube などの 動画サイト が新機能や新サービスの実装で存在感を増して、そちらへの移住が進んだことも大きな理由としてあったでしょう。 要するに 「ブログがネットの中心のひとつだった時代が終わった」 ことでもあるのかも知れません。
変化するネットサービスと 「はてな」
一方でこの時期、有力なダイアリーやブログの執筆者 (ブロガー)、ボランティア的に情報や場を取りまとめていた著名利用者らの離脱や移住も少しずつ起こり、俗に 「はてな論壇」「はてな村」 とも呼ばれたコミュニティは縮小し、雰囲気 も変化する結果となっています。
それは IT やネット関連の話題やニュースの深掘りがされた記事、俗にはてな論壇とも呼ばれた有力ブロガー・論客による様々な分野に対する考察や議論の記事、情報散布地としての大手羅列系ニュースサイト (特定ジャンルニュースへのリンクをひたすら紹介するサイト) といった、はてな初期からユーザーによって盛り上がってきた、日本のネット 界隈 の一部分を構成する大きな存在の縮小と変化でした。
これには本当に複雑で様々な個別の理由や事情、内部的・外部的な要因があり、互助会騒動とは無関係で単に時期がたまたま重なっただけの相互作用もあります。 またウェブサービスのような変化の激しいコミュニティを何年も維持していたら、雰囲気 の変化や 古参・新参 の軋轢、中心となる話題の変化などは避けられないものでもあるのでしょう。
ともあれ 2ちゃんねる と並びネット論調やネット動向の大きな潮流の一つであり、手斧飛び交う 殺伐さ の中にも論客によっては温もりがあり、また様々な新しい言葉や 概念 が提示されたわくわくする場でもあったので、単なる 読者 に過ぎない筆者にも、互助会やそれ以外の話題も含め、この時期のあれこれには色々と複雑な感情があります。