一枚の絵でも、人格があれば人のように振る舞う 「人格付与」
「人格付与」 とは、同人 や創作の世界においては、無生物や 人外、架空の キャラクター、抽象的な 概念 などに人格、すなわち人間のような思考や性格、感覚や特性、自我や個性を与えることです。 ある種の 擬人化 でもありますが、視覚的に擬人化しただけのキャラ (キャラ絵) に人格や個性を与える際にも使われます。 これは キャラを立てる みたいに呼ぶこともあります。
例えば自分で創った オリジナル のキャラにあれこれと性格やら思考パターンやらを盛り込んで、たった一枚の 絵 を人格を持った人間のように扱うのが分かりやすいでしょう。 また既存の マンガ や アニメ、ゲーム に登場するキャラを、読者 や 視聴者、あるいは ファン が、自分なりに 解釈 して描く 二次創作 や ファンアート としてのそれもあります。 人ではない存在に人としての権利や責任を与えるといった法的な使い方もあります (後述します)。
マンガやアニメなど、他人の創ったキャラに対する人格付与
自分で創った自分の オリキャラ ならどういう人格を付与するのかも自分で自由に決められます。 しかし既存の 作品 のキャラの場合は自分以外にもそのキャラを 愛し ている人、推して いるファンやクリエイターが大勢いますし、そもそもそのキャラを創造したり描いた 作者 もいます。 人格がすでに付与されていて 物語 を通じて提示されているケースや、対象が実在人物 (ナマモノ) の場合さえあります。 必要以上の人格付与やキャラ付けには、ある程度の慎重さが求められることもあるでしょう。
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VOCALOID 初音ミク Copyright © Crypton Future Media, Inc. KEI all rights reserved. |
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A.I.VOICE 琴葉 茜・葵 姉妹 Copyright © AI, Inc. All rights reserved. |
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voicepeak ずんだもん Copyright © SSS LLC. All rights reserved. |
とはいえ、勝手な解釈による人格表現を避け、できるだけ元作者や ご本尊、公式 の 設定 やその ジャンル で広く合意されているものを尊重しようとしても、どう解釈するのかは個人差がありますし、二次創作の時点で二次創作者の個性は必ず反映します。 元々のキャラの人格や個性と異なるものになるのは避けられません。
このあたりは、それこそが二次創作やファンアート独自の魅力だとも云え、あれもだめ、これもだめでは、多様性も失われてしまいます。 それが過剰なのか適切なのかは、究極的には元作者や公式にしか決められませんが、あまりにやりすぎたり、まるで自分のキャラのように扱ってしまうと、「ファンみんなに愛さているキャラを勝手に 私物化 している」 として批判されることもあるでしょう。 これは心情的なものなので、より根が深い問題と云えます。
意図的に本来の人格や設定を否定して独自の設定でキャラを再構築したり、ほとんど別人のようにしてしまうこともあり、こうなると場合によっては 解釈違い を通り越して キャラ崩壊 みたいな扱いもされがちで、仮に元作者が許しても、周囲のファンが心情的に許せなくなる場合もあります。
とくに一般にあまり好ましくないと思われる 属性 や人格を勝手に付与したり、ネット などで不特定多数に向かって自分の意見の代弁者のように扱ったりすると、そのキャラのイメージが悪くなったり、同じキャラで二次創作している別の作者に風評被害が生じることもあります。 これはマンガやアニメの1シーンに適当なセリフをつけ足して改変する 文字コラ なども同様です。
「みんなのキャラ」 に対する独自の人格付与
緩やかな規約 (ガイドライン) で二次創作が明示的に広く認められていて、その結果 「みんなのキャラ」 みたいな扱いを受けているキャラへの人格付与の是非もあります。例えば 初音ミク を代表とするボーカロイドキャラ、ゆっくりキャラ (魔理沙・霊夢などの東方キャラとキャラ絵) や東北ずん子・ずんだもん・琴葉姉妹といった音声読み上げ (生成) アプリのキャラなどは、フリー素材 (マテリアル) として利用できる 立ち絵 を含め多くのファンの協力によって成り立っており、また元の設定をベースにファンの間で何となく共有されているような、共同幻想的なふんわりした人格をある程度すでに持っています。 こうした中、特定の個人がそれらに反したりまるで関係のない極端な人格や性格を一方的に付与することを歓迎しないケースもあります。
これはキャラそのものへの付与の問題もあれば、第三者が描いた二次利用可能な立ち絵に対する付与の問題もあります。 とりわけ 動画 の制作などで、極端な政治的主張とか差別的主張、宗教やその他 センシティブ な話題を取り上げる中で、キャラや立ち絵に何らかの思想的な人格や個性がつくことを嫌う人はかなり多いでしょう。 これは前述した メジャー なキャラだけでなく、個人が善意で描いて配布している アイコン などの素材でも同様です。
どこまでがキャラの魅力や多様性を豊かにするファン活動やプロジェクトの趣旨に沿ったアレンジ・工夫になるのか、それともキャラのイメージを棄損しおかしな 色 やイメージをつけてしまう迷惑行為になるのかは、判断が難しいものです。 とはいえ、最低限、そのキャラを取り巻く 界隈 への リスペクト はないと、お話にならないでしょう。
とくに音声読み上げアプリキャラを用いた動画制作は、ある程度の規模となると大きな収益が見込めるとあって、有象無象の業者などが参入して界隈の 雰囲気 を悪くしているとの指摘もあります。 ニコニコ動画や Youtube での収益化は商用利用には当たらないとはいえ、金儲けだけが目的のような業者の人格破壊や極端な私物化については、徐々に厳しい目が注がれつつあります。
法律における人格付与
法理的な意味での人格付与もあります。 例えば団体や自然の 環境 などに対し、法的・倫理的に人間のような特性や権利、あるいは責任を与えることを指します。 代表的なのは、企業を人のように扱う 「法人」 でしょう。 法人は自然人のように法的に独立した存在として扱われ、本来は人間でないと行えない財産の保有とか契約、訴訟などを主体的に行うことができます。 また何らかの トラブル で外部に損害を与えた場合に責任や賠償を求められたり、社会的な存在として法律を守るだけでなく、倫理的にも正しくあることが求められることもあります。
人格付与の背景には、権利と同時に責任の明確化があり、法的な枠組みを通じて社会的な公正を実現しようとする意図があります。 人格付与によって従来の考え方では無視されたり見えづらかった利益や損害が認識されるようになり、その結果、より広範な視点で社会問題に対処する手段も探すことができるようになるでしょう。 動物とか植物とか山や川、海といった自然環境に対して人格を付与するという法的な議論も、もっぱら保護を明確化することを目的として進められています。
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