キャラやアイテムの希少性の目印 「レアリティ」
「レアリティ」(Rarity) とは、主にトレーディングカードゲーム(TCG/ トレカ) や テーブルトークRPG (TRPG)、さらには広く ゲーム 全般において、カードや キャラクター、各種 アイテム 類が持つ希少性、珍しさ、入手の難しさのこと、あるいはそれを表す基準、等級のことです。 「レア度」 と云う場合もあります。 高いレアリティを持つものは、とくに 「レアアイテム・レアもの」 と呼ぶ場合もあります。
トレカのように実際に手に取ることができるカード (有体物) がある場合は中が見えない袋や箱に入った状態でのランダム販売 (ブラインド販売) が行われ、いわば 「当たり」(数が少ない) と 「外れ」(数が多い) の 設定 が封入時に行われています。 コンピュータゲームなどでは、データとしてのカードやアイテム類がドロップする確率や、ガチャ での排出確率によってこれを実現しています。
通常は高レアリティ (当たり) のものほど強かったり性能が良かったり便利だったりし、誰もが欲しがるものとなっています。 こうした 「魅力的な当たりの設定」 によって、プレイヤー はより多くのカードを買ったり、繰り返し ボス戦 に挑んでプレイ時間が伸びたりガチャを引きまくることになり、ビジネスとして旨みが出るというわけです。
ゲームタイトルによって様々なレアリティの表示
レアリティの等級の数や表示方法は、ゲームのタイトルによって様々です。 単純に2段階で 「コモン (C/ Common)」 と 「アンコモン(UC/ Un Common)」 あるいは 「ノーマル (N/ Normal)」 と 「レア (R/ Rare)」 となっている場合もあれば、さらに等級が増える場合もあります。
・多くのゲームで採用されている主なレアリティ区分 (ゲームによって等級が異なるため順不同)
「ノーマル (N/ Normal)」(コモン (C/ Common) とも)
「レア (R/ Rare)」(アンコモン(UC/ Un Common) とも)
「ベリーレア (VR/ Very Rare)」
「スーパーレア (SR/ Super Rare)」
「スペシャルスーパーレア (SSR/ Special Super Rare)」(ダブルスーパーレア/ Double Super Rare とも)
「トリプルスーパーレア (SSSR/ Triple Super Rare)」
「ウルトラレア (UR/ Ultra Rare)」
「グランドレア (GR/ Grand Rare)」
「レジェンド (L/ Legend)」
「エックスレア (XR (X Rare)」
「ダブルエックスレア (XX Rare)」
「トリプルエックスレア (XXX Rare)」
またそれぞれのカードに プラス (+) や マイナス (−) の振れ幅が設定されている場合や (例えば SSR+)、カードの絵の背景などに特別な趣向を凝らして振れ幅を表現しているもの (例えばホログラム印刷がされているなら SSRホロ、名前や文字に 箔押し加工 があったり、キャラやキャラの声優さんのサインがあるなら SSR箔押しサイン、直筆サインならサインド扱いなど) もあります。 これらの呼び名は 公式 がゲームの仕様や公式のガイドブックなどを通じて設定したものもあれば、プレイヤーが独自に設定したもの、公式設定名に対する単なる略語や俗称などもあります。
一方、トレカなどの流れをくむこうした名称ではなく、数字やアルファベット、☆の数、色などでレアリティを表現する場合もあります。 例えば 「レア度1」「レア度2」 とか 「ランク1」「ランク2」「丙」「乙」「甲」、あるいは 「☆☆☆」「☆☆☆☆」 といった表記があるもの、文字や背景、フレーム (枠) の 色 が 「銅」「銀」「金」「虹」 になっているなど (銅枠・銀枠・金枠・虹枠) です。 この場合は数が多かったり上位に設定した色ほどレアリティが高くなり、同じようにプラス・マイナスなどの振れ幅が設定されていたりします。
アルファベットによる等級における 「S」 の存在感
アルファベット表記の場合はやや特殊で、「A」 が最高で以降 「B」「C」 などと下位が続きますが、日本などでは 「A」 の上に 「S」(Star/ Special/ Super/ Superior など) や、さらにその上に 「SS」(Super Special など) が最上位 (特上) として設けられる場合もあります。
これは競輪における選手等級のスター級から生じたとか、劇場のS席A席などの舞台からの距離を示す座席等級の呼称が影響したなどの説もありますが、それ以前にも用例を見ることができ、発祥は不明となっています。 スターやスペシャルなど意味も様々で、A級B級C級や1級2級3級といった 「標準的な等級」 では収まりきらない飛びぬけた存在、特上や特級、別格と呼ぶにふさわしい存在を示すのに、アルファベット順や数字の並び順といった命名ルールから逸脱した特別な言葉や命名ルールが好んで使われていたということなのでしょう (逆に最低最悪の場合は等級数に関わらずアルファベット最後のZ級になったりしますし)。
こうした 「S級表示」 は、等級付けを行う何らかの組織や団体が基準を設けて制式化している場合もあれば、周囲が俗語として使って広まることもあり、このあたりの経緯は様々です。 おたく・腐女子 に近いところでは、マンガ 「幽☆遊☆白書」 の作中表現 (妖怪の強さランキングにおけるS級妖怪) でこの用法を初めて知ったという人も多いかもしれません。 ちなみにS級妖怪は 「A級妖怪では束になってもかなわない」 ほどの存在となります。
なお海外では金融関係の格付け同様に 「AA」 とか 「AAA」(ダブルエー・トリプルエー) になることも多いのですが、稀にSを使う場合もあります。 また 「A」「B」「C」 がコモン・ノーマル区分で 「S」「SS」 や 「AA」「AAA」 がアンコモン・レア区分といった二段階の等級表示になっている場合もあります。
複数の等級表示を合わせて行うことも
これらの等級の表示方法は、それぞれ単独で行われたり、上記 「R」 や 「SR」 などと重複して表現される場合もあります。 例えば 「R」 は 「銅」 で 「SR」 は 「銀」 とか、「R」 が 「☆」「SR」 が 「☆☆」 など (さらに星の色が金銀銅など) です。 また一般的にはより等級の高いカードの方が、それ専用のグラフィックが用意されたり、いかにも豪華で凝った見た目 (絵アド が高いもの) になっている場合が多いものです。 さらに キャラ絵 や背景が全く同じでも、微妙な違い (キャラの周りが薄く光っている = オーラをまとっている、など) で小さく再区別をしている場合もあります。
一方のコモン・ノーマルや低レアの場合は、他の低等級と同じ イラスト を少しだけ変えて使いまわしていたり、同一等級共通の背景が共用されていたり、いかにも安っぽい感じにまとめられていたりします。
ゲーム内における等級ごとの価値・交換レート設定
ゲームによっては、単に入手が難しいといった入手確率以外の価値の設定・あるいは交換レートの設定が行われている場合もあります。 例えば不要な 「R」 のカードを25枚集めたら 「SR」 1枚と交換といったシステムを持っている場合は、「SR」 は 「R」 の25倍の価値があると考えて良いでしょう。 同じ倍率で 「SSR」「UR」 がある場合は、最上位の 「UR」 は 「R」 の 15,625倍の価値があることになります。
もっとも実際は、より上位になるほど交換倍率が段階的に下がるのが普通です。 例えば 「R」 が25枚で 「SR」 が1枚でも、「SR」 からなら15枚で 「SSR」 が1枚、「SSR」 ならさらに下がって5枚で 「UR」 1枚になるなどです。 また同じレアリティでも相場が異なる場合もありますから (例えば不要な 「UR」 3枚で欲しい 「UR」 を1枚獲得とか)、あまり厳密な交換相場という訳ではありません。 単にガチャで不要なものが出た時の救済措置のような形です。
一方、ゲーム内に貨幣 (例えば G (ゴールド) の 概念 がある場合、「R」 が 1,000G で 「SR」 が 25,000G で売買できるなら、上記の例と同じように25倍の価値があると考えても良さそうですが、実際のところはほとんどのゲームでゴールドそのものにあまり価値がないことが多く (プレイ開始直後はともかく長くプレイしていると余る、他にあまり使い道がないなど)、この場合はゴールドの価値が仮に25倍でも、レートや価値設定としてほとんど意味がない場合もあるでしょう。
レアリティの昇格と合成
前述した等級ごとの価値・交換レート設定と密接に関係があるのが、レアリティの昇格です。 例えば 「R」 を25枚 「合成 (限界突破 (限凸) や 凸/ とつ)」 したら 「SR」 1枚に昇格するとか、レアリティは変化しなくても能力値の上限を突破して実質 「SR」 相当の能力を得るなどです。 トレカのように物理的なカードを用いるゲームでは難しいのですが、ネトゲなどのコンピュータゲームではこうしたシステムをゲーム内で実装しているケースがかなりあります。 また単なる合成ではなく 経験値 の 概念 でそれを実現したり、合成と経験値を複合する場合もあります。
一方で、レアリティの区分を厳格に守ったうえで交換や合成による昇格を実現する場合には、それぞれの等級に昇格の上限や制限を設ける場合もあります。 例えば昇格は1等級アップのみとすれば、「R」 はどんなに頑張っても 「SR」 までにしかならず、「SR」 やそれ以上の等級に対する相対的な区分が守れるという訳です。 この場合、上級プレイヤーは主力となる戦力を全て昇格させているのが前提となりますから、実質的には等級表示がそれぞれ1つ上がるだけです。
こうした交換レートの設定や合成システムの実装は、同じカードがダブった場合の対策として極めて有効です。 「UR」 などはガチャにおいては排出確率1%以下といった厳しい確率となっているケースが多く、そこで 「既に持っている同じカード」 が出た場合のプレイヤーが受けるガッカリ感、モチベーションの低下は大きなものがあります。 そこでプレイヤーのモチベを維持し、ゲーム寿命を延ばすためにも、とくにガチャシステムを用いるゲームでは実装されているケースが多くなっています。
なお合成には回数制限が設けられているのが一般的で、その上限まで合成した場合は、とくに 「完凸 (かんとつ)」 と呼びます。 完凸までの合成回数は1回から5回程度が多いでしょうか。 元々排出確率が低い UR を5回完凸なら本体含め6回引かなければならず、その道のりは困難です。 完凸までしてしまったらそれ以降のダブりは基本的に不要なものとなりますが、1デッキに複数の同一カードを編成できる場合は、その限りではありません。
見た目のレアリティと、実際のレアリティ
前述した通り、基本的には等級表示が高いほど高レアリティであり、下位のレアリティのカードやキャラ、アイテムに比べ入手が難しかったり強かったりするものです。 しかしゲームメーカーや 運営 のゲームバランス設計がうまくいかず、見た目や表記だけは高レアリティだけれど使い物にならないケースがあったり、逆に上位レアリティを凌駕する性能を持つ下位レアリティの場合もあります。 この場合は 「なんちゃってレア」 とか 「偽〇〇」(例えば偽 UR) と呼び、「レアリティ詐欺」(上位・下位どちらかによって肯定的な意味にも否定的な意味にもなる) と呼ばれたりもします。
こうしたレアリティの混乱が生じた場合、トレカなどカードの交換や売買が行われているケースでは見掛け倒しの高レアの在庫がだぶつき、入手難易度も大きく下がるため、その意味でも全く無意味なレア度設定だと云えるでしょう。 これは RMT (アイテム売買) のあるなしを問わず、コンピュータゲームなどでも同様の傾向があります。 また複数必要なものと、1つあれば十分なものとでも、実際のレアリティは変動します。 複数必要なら複数入手してもその価値をある程度は維持しますし、上級プレイヤーにとって 「最低5つは必要」 といったケースが生じれば、5つまではその価値をさほど減じることなく維持できることになります。 1つあれば良い (1つしか編成できない、効果が重複しないなど) のなら、2つめが手に入ったら1つは不要となり価値が大きく下落します。
また同じ等級でも、販売や配布の種類によって、実質的なレアリティが変わる場合もあります。 例えば何らかの イベント や特定のタイミング (ゲーム開始1周年とか) を記念して全員配布などをされたカードやキャラ・アイテムなどは、見た目は豪華でも能力・性能は抑え気味で、入手難易度も低いでしょう。 またガチャやゲーム内イベントがあるゲームでは、ガチャ産のそれとイベント報酬とでは、同じレアリティでも能力に大きな差がついている場合もあります。
なおこれらをひっくるめた最大の問題として、ゲームが長く続くとレアリティや能力値のインフレが生じてしまい、宿命的にレアリティの混乱が生じるという構造的課題があります。 ゲームの販売元や運営は、ビジネスとしてできるだけ新しいカードやキャラ、アイテムを次々に購入して欲しいわけですから、既にたくさんカードを持っているプレイヤーにとって魅力的なものを出し続けなくてはなりません。 強いカードを持っているのにわざわざ弱いカードを欲しがる人はいないでしょう。
結果、ゲーム開始初期の頃は ぶっ壊れ などと呼ばれていた最強格のキャラやカードが、後には倉庫の肥やし、産廃扱い されてしまうケースもあります。 またゲームのルールやレギュレーションを変えて、過去のキャラやカードに著しい制限が加えられたり、使えなくなることもあります。 当然、表記上の等級とは無関係にプレイヤーにとっての等級評価も下がるでしょう。 これは長寿ゲームのある程度避けられない問題と云えます。
この場合、単純に 新規 カード類の能力値だけを上げると、過去に登場した同一レアリティのカードやキャラとの整合性がない状態になってしまいます。 それではと、さらに高いレアリティの等級を新たに設定して抜本的解決を行うという方法もありますが、こちらはこちらで既存レアリティのキャラやアイテムが一気に陳腐化しプレイヤーのゲーム離れを起こしかねないので、これもやはり難しいでしょう。 このような状況から、そのゲームにおける最上位レアの性能幅は他のレアリティに比べとてつもなく広がる傾向があります。 例えばそれが UR なら、初期 UR のあまり強くないキャラやアイテムと、最新 UR の最強格との性能差は、ほとんど同じレアリティとは思えないほどの格差が生じることとなります。
パラメータ数値だけでなく、特技や特殊効果などをどう組み合わせてバランスを取るか。 人気のある既存カードやキャラをどう調整し直すか。 プレイヤー全員が納得するような魔法の解決策はほとんどありませんが、ゲームの面白さと寿命を左右する最大の テーマ の一つと云って良いでしょう。
ゲームのルールやプレイのための価値の外のレアリティ
なおこうした 「公式のレアリティ設定」 とは全く関係のない、ユーザー同士のゲームプレイの外となる暗黙の了解的なレアリティも存在します。 例えばカードで云えば、印刷ミスによって回収がされたカードの未回収在庫とか、大昔に販売されたカードの美品、公式のゲーム大会の入賞商品として少数のみ作られた超 限定 カードなどです。 場合によっては何のカードかも分からない、パッケージに入ったままの未開封パックや未開封 BOX が高値になることもあります。
オンライン の ネトゲ で期間限定で配布され以降入手手段がなくなったキャラやアイテムなども、実用性は全くなくても欲しい人は欲しいものでしょう。 これらは公式のレアリティがどうであれ、極めて珍しく、ゲームのルールやプレイの範疇を超えたレアリティの対象といって良いでしょう。
復刻・再版カードにおけるレアリティ問題
有体物であるトレーディングカードゲームなどにおいて、限定版や最高レアリティとして販売されたものが、後に復刻・再版されるケースがあります。 とくにレジェンド級のような扱いをされていて極めて希少なカードの場合、この復刻や再版によって初期販売のオリジナルカードの相場や人気が暴落する場合もあります。
これを防ぐため、過去販売のカードのデザインや能力の一部を変更したり、公式大会では使用不可といったプレイ上の制限を加えたものもあります。 こういったカードの取り扱いは極めて微妙で、そのカードを欲しかった層には一定の 需要 はありつつも、カードのレイティングを混乱させる元として嫌う人も多いものでしょう。 とくに苦労して (あるいは大金を使って) そのカードの オリジナル を入手していた人にとっては、自分のカード資産を暴落させるだけの存在にも見えかねません。
そのカードのオリジナルが登場した当時、「将来に渡って再販はしない」 と明言しながら後年ほぼ同じようなものが再版されるケースもあり、カード会社とプレイヤーとの信頼関係を壊しかねない存在ともなっています。 単なる 「公式の能力制限版レプリカ」「観賞用・コレクション用」 といった扱いでは済まない摩擦をプレイヤー間に生じることもあります。