サークルスペースの華? トラブルの元? 「コスプレ売り子」
「コスプレ売り子」 とは、同人イベント において サークルスペース で 同人誌 などを 頒布 する 売り子 (頒布手伝いや 商業 の世界で云う販売応援のようなもの) が、コスプレ をしている状態を指す言葉です。 そのまんまですが、コスプレ姿の売り子さんという意味です。
同人サークル の 代表 が 同人作家 や 作者 兼 コスプレイヤー(レイヤー) の場合は、コスプレをして自分のスペースで本を売るなりすればそのままコスプレ売り子のような状態となります。 例えば自分のコスプレ写真集を頒布するといった場合は、当然ながらコスプレ状態でスペースを使うことも多いでしょう。 しかし代表者本人ならば売り子ではなくサークルの 主催者 そのものとなりますので、わざわざ 「売り子」 と呼ぶ場合は、サークルの代表以外の人に売り子を依頼し、その人がコスプレしている場合を指す言葉と云って良いでしょう。
この場合、サークル代表が知り合いのレイヤーさんに頼んだり、レイヤーさんではない人にコスプレをして売り子になってくれるようお願いする形になります。 それなりの規模のサークルであれば本の売り上げもまとまった金額になりますから、信頼できる人物が望ましいでしょう。 またそのイベントに 一般参加 や サークル参加・コスプレ参加 するつもりのない人であれば、会場 までの交通費や場合によっては 宿泊 の費用、さらに依頼する人が自前のコス衣装を持っていなければその部分の金銭的ケアもしなければならない場合もあります。
信頼できる人に依頼できない場合は、面倒な金銭 トラブル を避けるために業者 (コンパニオン派遣業やそれに近い人材派遣業者) や個人間の業務委託マッチングサイトなどを通じたアルバイト的なやり取りで依頼することもあります。 またレイヤーさんの一部はモデル撮影スタジオに所属していたり、個人撮影 (個撮) を行っていたりもしますから、日ごろから カメコ としてイベント外でもコスプレ撮影しているような人なら、そのツテで依頼することもあります。
個別の依頼内容も様々で、イベント の開始から終了 (イベント閉会や頒布物の 完売) まで終日の場合もあれば、サークル主催者が他のサークルを廻って自スペースを留守にする間の留守番だけを頼むとか、サークル主の挨拶回りの同行まで含めることもあります。 レイヤーさんがコスプレ広場に行ったり知り合いのレイヤーと挨拶したい場合もありますから、お互いのスケジュールを事前に確認し合うのが大切でしょう。
お手伝いの報酬は?
報酬については、コスプレの有無を問わず、同じような ジャンル で活動している友人知人の場合は数千円の手間賃とか同行する打ち上げや OFF会 といったアフターの飲食費代サークル側持ちあたりが多いと思いますが、こちらもケースバイケースでしょう。 ネット などで募った場合は交通費全支給 + 日当として5,000円から15,000円あたりが多いかもしれません。 このあたりは時代やイベントの規模、地域差や 需要 と 供給 のバランスもあります。
イベントコンパニオン (バンケットサービス) 業者に依頼する場合は、拘束時間や派遣時期、内容にもよりますが、15,000円から30,000円前後くらいは見ておいた方が良いかと思います。 この場合、交通費や飲食費代は必要ありませんが、昼食代や帰りの交通費くらいは別途ご祝儀みたいにして渡すと、次からも頼れる協力者になってくれるかもしれません。 一方、コンパニオン派遣は派遣なのか請負なのかで実際の取り扱いがかなり変わりますので (請負の場合、事前に業務のすり合わせをせずに当日その場で業務指示や命令、管理を行うと違法性があります)、しっかりした業者ときちんとした交渉をして行うようにしましょう。
個人間交渉の場合、信頼できる相手でないと様々なトラブルが…
コスプレはある意味で同人イベントの華とも云える存在ですし、頒布する同人誌などと同じ キャラ のレイヤーは注目も集められます。 壁サークル といった 大手 で売り子が複数必要な場合などは積極的にコスプレ売り子を用いることもあり、時代を経るごとにその数は増える傾向にあります。 一方で、同人イベントはお金を取り扱う場でもありますし、その他様々な同人イベントならではの理由もあり、トラブルなども生じる可能性があります。
トラブルの代表はスペースの売り上げをちょろまかす、お金を持って逃げるといったものです。 彼女や姉妹、会社の同僚に頼むとか、友人知人のツテの場合はともかく、SNS といった場を使った売り子募集で依頼した相手だと身元が良くわからないことも多く、ちょくちょくトラブルが生じたとの話を聞きます。 この場合は、相手の SNS の 投稿 をしっかり見て、きちんとコスプレイヤーとして活動しているかどうかを事前に確認する必要があります。
本名や電話番号といった情報のやり取りができればある程度確実ですが、女性レイヤーなどは当然ながら個人情報を渡したくないケースも多いので (逆にサークル側が怪しい場合もあります)、相互に フォロー をし、双方の活動実績を互いに確認できればある程度安心できるでしょう。 とくに 「お金がないのでイベント会場までの交通費 (新幹線代とか) だけ先に振り込んで欲しい」 などは注意が必要です。
また コミケ といった大勢が訪れるイベントでは、サークルチケット (一般入場 より早く会場に入れる サークル参加 のためのチケット) を目的とした人も多く、事前にチケットを渡したら当日待ち合わせの場所に来なかった、あるいは当日待ち合わせて一緒に会場入りした後に行方不明になるなどのトラブルもあります。
事前にチケットを郵送などで送る場合は、少なくとも相手とつながりのある住所は分かっていることになりますが、「体調を崩して急に行けなくなった」「当日行ったけど道に迷った」 と云われたら、それ以上追求するのはなかなか難しいでしょう。 またメルカリなどのフリマアプリを使った特殊な取引 (というか悪用) によるチケットやお金のやり取りをした場合 (いわゆる 専用出品 など)、相手の名前も住所も銀行口座も分からない場合があります。 詐欺と云えば詐欺ですが、サークルチケットや交通費程度だと警察に被害届は出しにくい レベル の話ですし、イベント当日朝になってそれが分かってもどうしようもないでしょう。
この他、コミケといった同人イベントに慣れていない人、一般人 に頼んだ場合、同人イベントやジャンル内の様々なマナー、ローカルルールなどに不案内で、周囲のスペースに迷惑をかけたり、スペースに訪れた頒布希望者に不快な思いをさせ、それがサークルの評判を落とす結果となることもあります。
依頼した売り子に性格的な問題や一般常識がないのならともかく、ローカルなマナーやルールを知らない人に依頼してトラブルが生じたら、お互いに不快な思いをしますし、それは依頼したサークル側により大きな責任があります。 実際、このあたりの問題から、「隣にコスプレ売り子がいると疲れる、ストレスがある」 というサークル関係者もいますから、きちんとフォローする必要があるでしょう。
女性レイヤーが男性のサークルに売り子を頼まれた場合は…
一方、依頼される側のレイヤーさん、とくに女性レイヤーが男性のサークルに個人間の交渉や約束で売り子として参加する場合は、十分すぎるくらい十分に警戒しつつ相手を見極める、あるいはできれば同じジャンルに知り合いのサークルなどがあるジャンルに限って売り子を引き受けるようにした方が良いでしょう。
サークル参加者はイベント 運営側 が身元を把握していますし、ある程度イベントに参加しているサークルなら身元不明ということはありません。 しかし身元がバレようが後先考えずに迷惑行為に及ぶ、あるいは非常識な言動で不快な思いをさせてしまうちょっとぶっ飛んだおかしな人もいます (単に女性に縁がなくて舞い上がったり、悪気なく男同士みたいな ノリ で馴れ馴れしく感じられるだけの人もいるので何ともですが)。
いずれにせよ何らかの被害を受けてからでは遅いので、共通の友人などがいない限り、知らないサークルの募集には応じない、依頼は原則全て断るくらいで丁度良いと思います。 まあ おたく や 腐女子 的な活動はお金がかかるので、とくに地方在住の若年者の場合、「交通費持ちます」「開始から2時間だけ手伝ってくれたら5千円」 みたいな話は、たいそう魅力的ではあるのですが…。
常識的に考えて、同人イベントに初参加のサークル (何度か参加していると自称してはいるけれど、それが確認できない場合も含む) が、いきなり初回からコスプレ売り子や売り子自体をネットで募って配するという状態はまずありえません。 SNS を通じたグッズやチケットの個人売買交渉などもそうですが、個人名や銀行の口座名と口座を取得したいだけの違法業者 (犯罪のお金のやり取りのために誤送金を繰り返す) もいます。 誤送金 (と、その取り消し) を何度も第三者から行われると口座そのものが犯罪に使われているものだと見なされて凍結されることもあるので (一度凍結されると解除は容易ではなく、また他銀行で口座も作りづらくなります)、「よくわからない相手には一切の情報を与えない」 ことを徹底するようにしましょう。
男性向けジャンルで女性レイヤー、BL で男性レイヤーとか
ひと昔前までは、そのままコスプレ広場で長い撮影列ができるレベルのコスプレ姿でスペースにいる人はかなり少なかったものですが、年々その数は増えている印象があります。 とりわけ男性向けジャンル (もっぱら 18禁・エロ) の場合、女性レイヤーはお互いに気まずいよねみたいな 雰囲気 もありましたが、2000年代以降あたりはあまり珍しい存在でもなくなりました。
一方で、女性向けジャンル (主に BL) の場合、男性レイヤーの売り子は一部の 界隈 を除いてほとんど見たことがありません (というか、男性作家が主催のサークルも少ない)。 女性サークル代表の彼氏がお留守番とか、大手サークルで段ボール何箱にも及ぶ大量の 搬入 が必要で、売り子と云うより力仕事になる 自力搬入 のお手伝いみたいなケースはわりとありますが、レイヤー売り子が注目を集めることでサークル側にメリットは、あまりない印象です。
このあたりは男女間の意識の差もあるのでしょうが、端的にいって作家や ファン の数が違うからだろうという気はします。 男性向けサークルは女性が主催者もそれなりにありますし、ファンにも女性は少なくありません。 一方で BL の場合、腐男子や腐兄、腐士 みたいな人もいたりはしますが、逆のケースと比べるとその割合は一桁違う感じです。 女性向けジャンルのサークルが 配置 された場所近辺を男性がうろつくだけで嫌だという女性ファンも少なくないので、彼氏に頼むなどは避けた方が無難かも知れません (もちろんケースバイケースですけれど)。
なお性別を問わず、成人向け のジャンルで売り子に未成年者を使うのは、常識的に避けるのが当然です。 そもそも成人向けゾーンに未成年者は入れないイベントもありますから、トラブルを避けるためにも絶対に行わないようにしましょう。