同人用語の基礎知識

エロゲ堕ち

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版権元が倒産し、流れ流れて 「エロゲ堕ち」

 「エロゲ堕ち」 とは、元々は全年齢向け・健全 だった アニメゲーム といった コンテンツ が、著作権版権 を持つ 公式 の側の何らかの事情によって 18禁成人向け のゲーム (アダルトゲーム・エロゲー) になってしまうことです。 単に 「エロ堕ち」「18禁堕ち」 と呼ぶこともあります。

 一方、年齢制限なしのアニメや マンガ をエロゲとして制作して欲しいといった意見を露悪的に表明する 「エロゲ堕ち希望」 の ニュアンス で使ったり、出演作が一般作品ばかりの声優さんがエロゲに出演していたとか、エロゲの声を当てて欲しいといった意味で使うこともあります。

一般作品の 「エロゲ堕ち」 はやっぱり辛い…ファン心理

 作品が様々な展開をしていく上で、年齢制限のあるなしが途中で変更になることはよくあります。 性的要素とか暴力・残酷表現の有無によって レイティング の変更が必要となり、例えばパソコン用エロゲーとして販売されたタイトルが大人気となってプレステといった据え置き機用のコンシューマーゲームとして性的要素を除外して移植されたり、年齢制限を避けるために残酷表現を抑えていた作品が、より作品の テーマ世界観 を実現して を高めるためにそれらの要素を追加した続編を年齢制限でリリースするなどはよくある話です。

 しかし性的要素を後から追加すると云うのは、一般向け・健全な状態の時に ファン になったユーザーにとってはショックがあります。 しかもそれが脱衣麻雀のように裸体が出るだけとか、入浴シーンなどの サービスカット とか、下着姿がちょっと出てくるだけならまだしも、異性と性行為を行ったり、凌辱輪姦、乱交などまでするのは、過去作に対する 思い出補正 などもあり、耐えがたいと感じるファンもいるでしょう。

 またそれが、その作品の権利 (IP) を持つ企業の経済的なピンチによる権利の切り売りや倒産・身売りに伴って行われたと思われる場合、まるで 「借金のカタに娘を身売り」「風俗に沈める」 ような作品の外の悲惨さのイメージもついて回り、権利上やむを得ないとはいえ、割り切れない思いをするファンも多いでしょう。

 一方で往年の人気タイトルでありながら、版元のゴタゴタで権利関係が整理できずにそのまま完全に消滅してしまうようなこともありますから、「エロだろうが何だろうが、続編や移植・リメイクがされて新しいものが 供給 されるだけマシではないか」 との声もあります。 実際、大人の事情 でエロゲ化したとはいえ、最初から最後までエロシーンばかりではないので、何とか受け入れる、どうしても無理ならエロい部分には目をつぶり、非エロシーンだけを見て懐かしむようなファンの姿もあります。 もちろん新作だとして楽しむ 新規 のユーザーだっているのでしょう。

 エロまでいかずとも、パチンコ化するなどの 「パチンコ堕ち」 もしばしば ネガティブ なニュアンスで話題になりますが、特定業種や ジャンル への移植や移動とかで、一方を堕ちた下だと差別的に見るのはどうかとも思うものの、こればかりは思い入れや気持ちの問題なのでどうしようもない部分があります。

タイトル名から 「少女」 が消えた… 「御神楽少女探偵団」

「新・御神楽少女探偵団」 公式サイト (NUDE MAKER)
「新・御神楽少女探偵団」 公式サイト
(NUDE MAKER)
「御神楽探偵団 活動写真」 公式サイト (ピンクパイナップル)
「御神楽探偵団 活動写真」
公式サイト (ピンクパイナップル)

 こうした悲劇、あるいは数奇な運命を辿った作品はさすがにあまり多くはありません。 代表的な作品と云えば、プレステ用ソフトとして1998年9月に発売され、ギャルゲーっぽい装いながら本格的な硬派推理アドベンチャーとして人気を得た 「御神楽少女探偵団」 があります。

 魅力的な キャラCD-ROM 4枚組というボリュームや、練られたシナリオ、新機軸となる様々なシステムを取り入れた意欲作で、アニメシーンをはじめビジュアル面でも高い評価を得ていました。

 1作目と翌年の2作目 「続・御神楽少女探偵団 〜完結編〜」 までは一般向けゲームとして販売されたものの、あまりの大作制作に体力が尽きたのか事業の多角化が災いしたのか、開発元のヒューマンはその直後に事実上の倒産 (破産宣告は 2000年1月)。 2003年12月になり3作目となる 「新・御神楽少女探偵団」 が発売されますが、別ブランドからのパソコン用アダルトゲームとしてのリリースでした。

 性的要素だけでなくグロシーンなども含まれたこの新作は、ヒューマン倒産により入手が難しくなっていた1・2作目も要素の一部を除いてまるまる収録されており、資料的価値も高いものとなっていました。 満州大連を舞台とする新作部分の作りもしっかりしており、評価する人も少なくない状況でしたが、とはいえ当然ながら受け付けない 古参 のファンもおり、とりわけ2作目からわずか数年でのアダルト化は衝撃も大きかったようです。

 メインとなる3人の ヒロイン (鹿瀬巴・久御山滋乃・桧垣千鶴) をはじめ女性キャラには凌辱や輪姦・乱交・ぶっかけ・緊縛ほか、ほとんど何でもありのハードな描写があり、その後 「エロゲ堕ち」 といった ネットスラング が広く使われるようになったのも、この時の騒動の影響が大きかったと云えます。

 翌2004年にはアダルトアニメ化もしますが、ビデ輪の倫理規定に合わせた 自主規制 により、タイトルからは 「少女」 の文字が消え、「御神楽探偵団 活動写真」 としてのリリースでした。

「夢幻戦士ヴァリス」 は異例の経緯で大騒動に

「ヴァリスX」 公式サイト (日本テレネット)
「ヴァリスX」 公式サイト (日本テレネット)

 1987年3月に横スクロールアクションゲームとして日本テレネットから発売された 「夢幻戦士ヴァリス」 も、同ブランドの他作品の扱いとともに、こうしたケースで忘れられない存在でしょう。

 「夢幻戦士ヴァリス」 はファミコン版やメガドラ・PCエンジン版なども次々にリリースされ、移植版やそのアレンジ版、続編など、長期にわたって根強い人気を得ていた作品でした。 とくに当時としては大容量の CD-ROM で販売された PCエンジン版は演出としてアニメーションや声優のボイスなどもふんだんに盛り込まれ、その後のギャルゲーに大きな影響を与えたエポックな作品だと評されています。

 しかし 2006年2月になり、同社が 運営 するダウンロード販売サイトで 「ヴァリスX」 として初期作をアダルト版としてリメイクしたものが配信されると、ヒロインを凌辱するエロゲーとなっていたため半ば 炎上 の形に。 タイトルやキャラの 設定 の一部は踏襲していたものの、キャラの性格やゲーム内容なども大きく変更されており、非公式ながら関係者による不快感の表明や非難、不買の訴えなどもあり、大きな騒動となってしまいました。

 なお2019年になりさらに権利が譲渡移管され、再び復活するとの動きもあります (後述します)。

「リラルル ラリルル リラルル リップ」 も物悲しく…

 日本テレネットは翌2007年10月に約10億円の負債によって事業停止となり事実上倒産します。 同社が持つ様々な作品の権利は譲渡移管され、「夢幻戦士ヴァリス」 に続き 「アークス」(1988年5月パソコン用 RPG として発売) や 「魔法の少女シルキーリップ」(1992年6月メガCD用 アドベンチャーとして発売) も別ブランドによってアダルト要素や恋愛要素などを加えられ、それぞれ 「アークスX」(2008年1月ノベルゲーに変更)、「魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補」(2008年3月) として販売されることとなりました。

「魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補」 公式サイト (WAFFLE)
「魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補」
公式サイト (WAFFLE)

 ちなみに初代 「シルキーリップ」 はギャルゲーという言葉の元になった作品のひとつとも云われ、また実際にプレイした人以外にも OP曲 (リラルル ラリルル リラルル リップ…) が魔法少女アニメを強く意識した名曲として おたく の一部で高い人気を得ていました。

 というより 筆者 の友人がかなりのファンで当時 布教 などもしていたため、エロゲとなった 「魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補」 の大人編 (少女編と エロ い大人編の二部構成) の凌辱や 触手 は辛かったそうです。

 いや、だったら買うなよって話もありますが、少女編は未販売に終わった幻の PCエンジン版を元に再構成され内容がほぼ同じだったのです…。 ファンなら買うしかないよねそりゃ。 まあこの辺は、未発表だった PCエンジン版を世に出すための苦渋の選択だったのかもしれませんし、状況が状況だけに部外者のあたしが誰かを責める気はしませんが。 そういやメガCD版発売からしばらくの頃、遠征同人イベント参加 するため、関東から サークル の仲間と車に相乗りして名古屋方面に向かいながらシルキーリップのテーマソングを聴いたり合唱したことを思い出しました…。

プレステ用恋愛アドベンチャーをリメイク 「久遠の絆−THE ORIGIN−」

「久遠の絆−THE ORIGIN−」 公式サイト (XUSE)
「久遠の絆−THE ORIGIN−」 公式サイト (XUSE)

 この他ネットなどで話題になったものとしては、プレステ用恋愛ノベル・アドベンチャーゲームとしてフォグから発売された 「久遠の絆」(くおんのきずな) の例があります。

 1998年12月に初代が発売されると、輪廻転生をテーマに様々な時代を横断する独特で雄大な世界観などもあり話題に。 2000年5月には初代の誤字などを修正しシナリオを追加した 「久遠の絆 再臨詔」 がドリキャス版として発売し、その後もプレステ2版など微調整をした様々なバージョンが発売されました。

 2011年7月にアダルト版として 「久遠の絆 THE ORIGIN」 がリメイク・フルボイス化の形でリリースされます。 この際はシナリオこそ全面的に改められたものの、イラストなどは前作と同じものも多く、完全リメイクと云うわけではありませんでしたが、初代開発時にボツとなり公開もしないとされていた幻の平安編シナリオが含まれ、歓迎するファンもいました。 性的描写はその他のエロゲ堕ちに比べると穏やかなものだと思いますが、重厚なストーリーから思い入れの強いファンも多く、否定的な意見もある作品でした。

18禁ゲームとのコラボで 「あすか120%」 が話題に

「エデンズリッターグレンツェ × あすか120%」 コラボガチャ画面 (EXNOA)
「エデンズリッターグレンツェ × あすか120%」
コラボガチャ画面 (EXNOA)

 2022年5月には、1994年にパソコン用対戦型格闘ゲームとしてファミリーソフトから発売された 「あすか120%」 が、2021年1月から稼働中のオンラインアダルトダークファンタジーRPG 「エデンズリッターグレンツェ」(デンズリ/ EXNOA) との コラボ を開催。

 コラボ先のゲーム内容から4月23日の 告知 段階で話題になっていましたが、イベント が開催されるやいきなり本田飛鳥の と云うか謎の液体だらけで アヘ顔バナー画像 などがネットに流れ騒動となりました (ただし過去の例のようにエロいシーンをサンプル CG として公式が発表することはなく、ゲーム自体も ゾーニング された中でのものです)。

 このゲームもPCエンジンやプレステなどに移植や続編リリースがされ、コミカライズやノベライズをはじめ マルチメディア (メディアミックス) で展開されたマニア向けの一般格ゲーでした。 2000年代以降はサウンドトラックなどがわずかに販売されただけで、新作を計画中との話もでていたものの、おおむね往年の人気作品といった位置づけでした。 それが久しぶりにゲームの世界で名前を聞いたと思ったらエロコラボだったということで、思わぬ ダメージ を受けたファンも少なくなかったようです。

 筆者は 「あすか120%」 のファンという訳ではないものの、格ゲーオタが周りにいるせいで当時プレイしたことがあります。 キャラが魅力的だったという点もあってなぜか印象がかなり強く残っていたため、ツイッター で情報が流れトレンド入りまでしたのはかなりびっくりしました。 あくまでコラボであり、それはそれとして昔を懐かしむファンなどもいるようですが、あまりに唐突な話だったため、しばらく騒動が続くこととなりました。

同人のエロと公式のエロは同じエロでも…

 同人 の世界では、健全作品をエロにする 二次創作 はありふれた存在です。 ただしこれはあくまで 「無関係な人が勝手に描いたもの」 であり、そうした作品を受け付けない人は 「ただの落書きだ」 と無視することができます。 しかし公式の続編やリメイクの場合、文字通りその作品タイトルに 正史ナンバリングタイトル として刻まれるものとなります。 いわゆる 原作レイプ (出来の悪い実写化などのこと) や 人質 と同様、熱心なファンほど無視しづらく、また炎上を面白がるファン以外の人たちの 煽り なども加わり、騒動は大きくなりがちです。

 実在する現実の芸能人でも、かつて清純派として人気を得ていたアイドルがヌード写真集を出したり映画で裸体になる役を演じたり、極端な例では AV に出演するなどして話題となることがあります。 ファンにとっては相手が 三次元 であれ 二次元 であれ、「そっちの世界に行った」 というのは複雑に感じるものなのでしょう。 とくに女性キャラが同性の女性キャラや 人外 の触手あたりならともかく、どこぞの男性キャラや モブ と公式に 絡む のは、自分の 推し で想像するとかなり辛いだろうなという気がします。

「夢幻戦士ヴァリス」 発売35周年で復活?

「夢幻戦士ヴァリス」発売35周年!ヴァリス復活応援プロジェクト!」(エディア)
「夢幻戦士ヴァリス」発売35周年!
ヴァリス復活応援プロジェクト!」(エディア)

 物議を醸した 「夢幻戦士ヴァリス」 ですが、2019年12月になりエディアがその他タイトルとともに権利を取得すると、ファンらの強い応援もあり、より オリジナル に忠実な一般向け作品としての再始動が始まります。

 翌年に海外向け Nintendo Switch 用として 「スーパーヴァリス 赤き月の乙女」 を配信するとともに、「ヴァリス復活プロジェクト」 も開始。 あわせて出資者へのゲーム内での名前掲載権やグッズ類の返礼品を用意したクラウドファンディングを Makuake で行うと、希望額 (ストレッチゴール) の3倍以上となる 1,500万円もの出資が 1,038人のサポーターによって行われました。

 かつて絶大な人気を誇った 主人公 麻生優子 の復活が始まったといって良いでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2012年10月4日)
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